黄金世代の最上級生
「〜というわけでミランダ、よろしく頼む」
「貴方が動く気になってよかったですわ。こちらはもうとっくに突き止めていましたから」
ハナコに改めて話を聞いた翌日、上級者の貴族に会いたいと相談すると、ミランダはどういう情報網を使ったのか既に相手を割り出していた。
ハナコ本人とは会ってないのにどこから調べたのか。魔法はそこまで万能じゃないからミランダの持つ貴族繋がりのネットワーク怖い。
ハナコには目的を教えることはなく、ただの世間話風に聞き出した。その代償として行きつけの喫茶店で一番高いデザートを奢ることになったが、必要経費として支払った。
「で、疑問なんだけど招集する前からサテラやユーリがいるのはなんで?」
「僕はミランダ嬢と君がコソコソしているのが気になってついてきただけだよ」
「わ、私も何してるのかなーって気になっただけなの」
楽しそうですね。俺は今後の展開を考えて胃が痛くなりそうだ。
ユーリは余裕そうだけど、サテラがなんかテンパってる。目の下にうっすらクマがあるけど徹夜でもしたのかな?
「こいつは野次馬根性あるからいいとして、みんな覚悟しといてくれよ」
こいつと呼ばれた主人公が反応する。
「覚悟?オレ達は今から三年生に会いに行くだけだろう。何を覚悟する必要がある?」
「私もわからないわ。先輩って言っても年が一つ上なだけなのよね?」
今年から編入してきたのと、普段からクラスメイト以外と関わりが薄い二人がハテナマークを浮かべた。
「理由はついたらわかるよ」
五人でまとまって上級者のいる校舎へと向かう。一、二年生は特進クラスも含めて同じ建物内だが、最上級生である三年生は別の場所になっている。
そして、その校舎は今年度からリフォームされて設備や待遇が格段に上昇している。
本来ならここまで学年が違うだけで格差は広まらないのだが、今代だけは特別だった。
「あれがこのVIP待遇の理由だ」
三年生のほぼ全員が一箇所に群がっていた。
アイドルの出待ちみたいな光景だけど強ち間違いではない。
彼らの集団の真ん中にいる四人の上級生。
黒髪長髪の背が高い男子。スキンヘッドで目つきが怖い男子。白髪で色素の薄いアルビノの男子。紅一点、桃色髪のスタイルのいい女子。
その他大勢とは違う、オーラのようなものを放つこの四人こそがこの学園の代表。黄金世代と呼ばれる伝説。
「順番に説明するぞ」
俺が知っている知識と学園内での評判を照らし合わせながら、何も知らない二人に話す。
黒髪の男はムサシ・コジロウ。戦に愛され、死に嫌われた不死身の戦闘狂。戦闘力だけならこの学園のナンバーワン。
スキンヘッド頭はディク・オリオン。ユーリの実の兄にして学園ナンバーワンの成績を残している。能力的にはユーリの完全上位互換。近衛騎士団からのスカウトを蹴って実家の家督を継ぐ予定。
一人飛ばして桃髪の女はリーファ・ロザリオ。学園が籍を置いているこの国の第一王女にして女神教から聖女認定をされている。数多くの貴族がいる学園最大派閥を率いる。
アルビノの男は他国の次期皇帝。生徒会長を務めていて、生徒からの指示も高い。他の三人をまとめて……いや、従えている実質学園のトップだ。
「ヤマトくんが編入してきた時は四人共、学園外に留学していたからね。文化祭後に帰国したようだよ」
「わたくし達の喫茶店が表彰台に上がれたのもあの方達が不在だったおかげですわ。仮に参加されていたらどうあがいても二位止まりでしたわ」
それほどまでに圧倒的な存在。
まぁ、今回ようがあるのはアイツらじゃないし、関わるとロクな目に遭わないから放置して、
「問題なのはハナコの婚約者が王女様の取り巻きの中にいることなんだよ」
話しかけたり近寄ろうとする生徒を押しのけて四人を守護する一部の集団。その中に情報にあった男爵家の
次男坊がいた。
「これは騒ぎが治まるのを待つしかないようだね」
「そうだな」
少し離れた位置で騒ぎを観察していると、桃色髪の聖女が何かに気づいたのかこちらを見て指差した。
そしてそのままグングンと近づいてきた。
「あら、下級生がこんな所に何の用かしら?」
近くに来ると甘い、香水の匂いが鼻にツンときた。好き嫌いが分かれる匂いだ。ミランダも香水はつけているが、ここまでキツくはない。
「ディクの弟くんは兎も角、ミランダちゃんは私に近づかないって約束したわよね?」
「いいえ。善処しますとは言いましたが、確約はしていませんわリーファ王女様」
扇子で口元を隠しながら笑みを浮かべるミランダ。斜め後ろに立っていると若干、頬が引きつっているのがわかる。
高飛車でワガママ。権力を使って派閥を率いる女………同族か?
ただ、相手は王族。権力の強さだと聖女の方が上だし、魔法についても圧倒的に差がある。
「ねぇ、アッシュくん。この人……」
相手の魔力を肌で感じ取れるサテラは聖女の持つ力に気づいたのか、一歩身を引いた。
「あら、ハーフエルフなんて連れているのね。珍しいわ、誰の物なの?」
物って。この国は奴隷制度とか廃止されていたはずだよな?王族だから特別とかなかったよな。
「制服を着ているってことはここの生徒なの?学園も必死ね。混ざり物を入学させるなんて」
「っ⁉︎」
こいつ、普通に蔑称を使いやがった。最初の頃のミランダでさえ直接は言ったことなかったのに。
「おい、いくら王女様でも言っていいことと悪いことが!」
誰よりも早く食って掛かったのは主人公だった。サテラを庇うように前に立つ。
「なんや?喧嘩か?喧嘩ならワイが買うたるで」
同じく、聖女の前に立つ単騎戦力最強の男。武器は持っていないが素手で熊くらいなら軽く殺せる力を持っている。
その気迫に負けたのか、主人公の踏み込んでいた足が後ろに退がる。
「なんの騒ぎだ二人共………チッ」
続いてやってきたスキンヘッド。案の定と言うべきか、ユーリを見て舌打ちをした。
「お久しぶりです兄上」
「愚弟が。厄介ごとを持ち込むな」
ユーリと同じだが、険しい琥珀色の瞳が不機嫌だと訴えかける。仲が悪いことで有名な兄弟だから仕方ない。
ミランダが聖女と。
主人公が戦闘狂と。
ユーリが実の兄と。
互いをじっと見ていると、残る一人も近づいてきた。
「ふむふむ。田舎から来た幼馴染みの婚約者がどんな奴なのか会いにきたと」
アルビノの男の目が一瞬、赤く染まった。
しまった!一番警戒していた奴に力を使わせてしまった。
「カリム・ベクターくん。君にお客様だ」
ハナコの婚約者をアルビノの男、マーリン・オベイロンが呼んだ。
ゲームのボスをやっているだけはあるじゃねぇか。
三年生と関わるのに覚悟がいる理由。それはこの生徒会長率いる原作ゲームのボス達と関わらなくちゃいけないことだった。
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