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あんなこというからぁ!

 

 一人で机の上の原稿用紙と向き合う。

 原稿用紙の脇にはかなり昔に書いたフェアリーロザリオの覚えているだけの情報を書き込んだノートと、物心ついた頃から日課にしている日記が置いてある。


「こっちに来てからもう十七年も経つのか……」


 日記は自宅から全部持ってきている。これだけで本棚が数段埋まるくらいだ。特に学園に来てからの日記は一日分がかなり長い。内容はユーリとこういう話をしただとか、サテラのこの表情が可愛いとかそんなのばっかりだった。


 ゲームの情報が書いてあるノートはこの世界ではある意味予言書めいた扱いになるので誰にも見せてない。この学園の友達に見られた時点で軽く死ねる。ユリ×サテの原稿用紙を見られたら相手を殺して俺も死ぬ。


「そういえば……村にいるときの俺って何してたっけ?」


 去年からの思い出が濃ゆ過ぎて、それまでの自分の生涯が薄い。どれくらい薄味かというと、日記の内容が数行しかない。


 ・天気は晴れ、暑い

 ・昼飯に食べたパンが硬かった。柔らかいのが食べたい

 ・兄貴達と喧嘩した。殴られた頬が痛い。明日になったら仕返ししてやる。


 こんな感じの内容がずっと続いていた。愚痴がよく書いてある。


「精神年齢まで子供に戻っているのね俺」


 作業する時に別のことをすると余計なことに時間を費やしてしまうタイプの俺は、原稿そっちのけで過去の日記を読み返してしまった。特に学園に来る前のものだ。

 最初の方は汚い字で前世の方が良かっただの、イケメンでもなければチートでもないって仕様なの?なんてことが書いてある。これは今でも思うよ。主人公なんてメキメキ強くなっているのに俺は牛歩だって。


 何年か経つと日記の内容は天気と飯の内容しかなかった。一行だけのも珍しくない。

 この頃はただ時間潰していただけだったもんな。前世の記憶持ちだから同年代の奴らに比べて頭が良くて大人びてることにあぐらをかいていた。現在は赤点にならないように必死に勉強してます。


 一冊一冊流し読みをする。ここ最近の分は読み返すだけで一苦労なんだけど、昔のは中身スカスカ過ぎて悲しくなってきた。前世の高校時代のアルバムって集合写真くらいしか写ってなかったんだよ……。


「ん?この辺から文量が増えてる」


 十年くらい前だろうか。親にワガママを言って中古の本を買ってもらっていた頃だ。

 そこには両親や兄貴達以外の名前が書いてある。ハナコ・フローラと。


「この頃から頑なにフローラ呼びをするように言われてたな」


 別にハナコって名前も悪くはないと思うんだけどな。本人はダサいって思ってるみたいだが。

 ハナコと出会ってから少しずつ日記に内容が出来ていく。二人で山の中で遭難したエピソードも出てきた。


「この時はハナコを心配させないために虚勢張ってたけど滅茶苦茶怖かったんだよな」


 日記の中の俺も死ぬかと思った!とか夜の山が寒すぎて死ぬ!なんて書いてある。

 その時にテンパって日本の話とかフェアリーロザリオの話もした。まぁ、信じてはくれなかったみたいだけど。今もゲームの話をしたら頭のおかしい奴扱いされる。


 旅の魔法使いのおかげで命拾いしてからはハナコがよく遊びにくるようになった。

 年に一回ある収穫祭の時はハナコの案内で色々回った。俺と違って運動神経良くてスタミナお化けだったから、連れ回された俺が倒れることも少なくなかった。

 肉体年齢と精神年齢のギャップもあって自分から遊びに誘うのが苦手だったからハナコが誘ってくれるのは都合が良かった。

 日記も次第に今の俺みたいにウザくなっている。田舎は田舎で楽しかったなぁ。


 思い出に浸っていると、さっきまで話ていたミランダと主人公の話が蘇る。

 別に俺だって気にならないわけじゃない。この世界で最初に仲良くなった異性はハナコだ。意識しなかったかと言われれば嘘になる。けど、俺はどうしても学園に来たかった。

 この世界の年号とゲームの原作開始時期を知った時は有頂天になったんだ。ユーリや主人公達と同学年になれる!って。


 ハナコが俺にどういう気持ちを持っているかはわからないけど、もしそういう感情が少しでもあったら、俺はそんなハナコを見捨てて村を出たことになるんじゃないのか?


「あーもう!アイツらが変なこと言うから!!」


 ずっとこのまま手紙のやり取りだけだったらこんな気持ちにはならなかったのに、実際に顔を合わせたせいでモヤモヤしてきた。

 変にしおらしかったのも見た。多分、婚約にも前向きじゃないと思う。

 伊達に幼馴染みやってきたわけじゃないんだ。


「三年だろ?俺一人じゃ貴族相手に話しかけるのも……そもそも三年には()()()()もいるから怖いんだよなぁ」


 原作ノートに書かれていたイベント。いくつかフラグをへし折って回避したのもあるけど、まだまだ重要な分岐ルートもある。今から俺がすることはゲームの進行速度を引き上げることに繋がるかもしれない。


「まぁ、いざとなったらユーリとサテラも巻き込んでごり押しするか」


 推測や憶測でものを考えるより行動する方を選ぼう。

 それならまずはハナコが泊まっている宿を探して相手の情報を集めないとな!








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