なんで怒られてるの?
「信じられませんわ!」
ぶりぶりと怒るミランダ。どうしてこうなった。
「ここまでとは見損なった貴様!」
そして何故か主人公まで。
現在、三人で俺のアパートにいる。公爵令嬢のミランダには相応しくないと思ったけど、それよりもお怒りの方が優っていたようだ。
「えっと、二人は何に怒っているんだ?」
「先程の彼女の件ですわ」
彼女ってハナコのことか?なんでそれでこいつらが起こってるんだ?
「前々から思っていましたが、貴方は鈍感を通り越して痛覚がないんじゃありませんの?」
「無神経で図太いとは思っていたがここまでくると呆れるな」
「だーかーら、なんでキレてんの?」
「おい、普通に考えてみろ。同郷の幼馴染みがおめかししてまで会いに来たんだぞ?それはもうアレしかないだろう。悔しいが、そういうありきたりなことは実際にあるだろう!」
「わたくしやサテラを訝しんだあの目、そして人目につかないところまで貴方を連れ行った行動。そう、つまり彼女は貴方に恋心を抱いているのですわ!」
この二人ってこんな波長が合うキャラだったっけ?最初の頃に肉食獣みたいな目をして主人公を追い詰めていたあの悪役令嬢はどこ行ったよ?
「いや、誤解だよ。ハナコは今度三年の先輩と婚約するんだよ。今日はその挨拶に来たんだと。俺に会いに来たのはそのついでだったんだよ。わかった?」
俺の説明に納得してないのか、コソコソと耳打ちし合うミランダと主人公。
「どう思う?」
「その線もありますが、わたくしの直感はそうじゃないと訴えていますわ。これは調査せねば」
聞こえてるからなおい。
「コホン。アッシュ、貴方は彼女のことをどう思っていますの?」
「ハナコは幼馴染みで、世話焼きで、俺の数少ない友達だったぞ?毎年、村の祭りは二人で行ってたし、学園に俺が来てからはよく手紙を送ってくれたり、去年の冬はマフラーと手袋を送ってきただろ?あとは……前にハナコが森で迷子になった時に助けてやったりとかはしてたけど、よくある仲のいい幼馴染みだぞ?」
「彼女が婚約すると聞いた時、貴方は何を思いましたの?」
「兄妹みたいなハナコがもうそんな時期か、おめでたいなぁ、精一杯祝ってやろうかなぁって」
別に殺したいほど憎いとか、嫌いだ!とかない。ことあるごとに殴ったり関節技かけられたり、普通の人にされたらブチ切れるが、ハナコとのやりとりは子供のじゃれあいみたいなもんだし。
中身の年齢で言ったら倍以上も違うんだ。そういう対象じゃないんだよ。
「ミランダさん、これはもうダメな奴じゃないか?」
「そうみたいですわね。こっちを焚きつけて盛り上がればあの子も素直になるかもとは思いましたが、肝心の相手がこの調子では……そもそも貴方、愛欲ってものはお有りですか?」
「それくらい俺にもあるわ!モテないだけで、誰かを好きになったり何かを愛でたりするぞ?今だって自分の好きな者を愛するために生きてるわけだし」
ユーリとサテラをくっつけ、ユリ×サテを実現させて眺めるのが我が使命。この世界に転生してきた意味なのだから!!
「その顔は嘘を言っていませんわね。となれば話は終わりですわ。ヤマト様、今度は彼女の方へ行きますわよ」
「おう」
何か納得したような顔で二人は出て行った。
残された俺は一人、何が何だかわからないまま三人分のティーカップを洗うのだった。
♦︎
「それで、僕に相談というのはなんだろうか?」
皆んなと別れた後、自主訓練を終わらせた僕を待っていたのはサテラさんだった。
いつもの太陽のような微笑みはなく、珍しく眉間に皺を寄せていた。
「大したことじゃないのだけれど、ユーリくんに話を聞きたくって」
「僕にかい?」
「そう。私の友達………がアッシュくんのことを知りたいって言っててね、私達の中で一番親交が深くて長いのはユーリくんでしょ?それでね」
ふむ。確かに特進クラスの中では僕が一番付き合いが長いだろう。そもそも、アッシュと同郷の子がいなかったからね。
彼から話しかけてきたとはいえ、僕らは絆の深い友達だと言って間違いないだろう。でも、それもたったの二年だ。アッシュの全てを知っているわけではない。
「アッシュ本人には聞けないのかい?」
「だ、だめよ。本人にアナタのことがよく知りたいから教えて下さいなんて恥ずかしくて聞けないわ」
「サテラさんの友達の話なのだろう?なら、サテラさんが恥ずかしがる必要はないと思うのだが」
「そ、そうなんだけど。私も改まって聞くのはちょっと、ちょっとね……」
顔を赤くして口ごもるサテラさん。アッシュの言っていた警戒心を解いた素の表情は可愛いというのは本当だった。
恐らく、彼女の友達がアッシュのことを知りたいというのは建前で、サテラさん自身がアッシュのことを知りたいのだろう。そこは気軽に話せる同性と異性の違いだ。あえて指摘するまい。
「わかったよ。このまま立ったまま話すのも疲れるだろうし、どこか落ち着いた場所で話をしようか」
「そ、そうね。それなら……私のお家でどうかしら?」
「……サテラくんの家といえば庭園の中にある元管理人用の家だったかな?」
「うん。あそこなら私の張った認識阻害や防音、対魔術用の結界があるから大丈夫よ!」
僕はアッシュの話をするだけでどうしてそこまで厳重な警備機能のある場所にいかなければならないのだろう。
「話すだけなら近くの喫茶店でも」
「駄目なの。私がアッシュくんの話を聞いていたっていうのを誰にも知られたくないの。だから、ね?」
両手を合わせて頭を下げるサテラさん。
やれやれ、アッシュ。君は自分のことを影の薄い人間だと決めつけて僕らをサポートしているつもりかもしれないが、君は自分で思っている以上に周囲を巻き込むトラブルメーカーの素質があるようだ。
「仕方ないね。それじゃあ、お邪魔しようか」
「よかったわ!ありがとうユーリくん」
まぁ、たまにこうやって可憐な美少女と二人きりというのも悪くはないのかもしれないか。
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