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幼馴染みの用件

 

「で、何しにきたんだよハナコ」


「だからアタシは、」


「ハナコ・フローラ。ハナコって名前がダサいから家名をあたかも名前のように紹介してる幼馴染み」


「ぐぬぬぬぬ」


 茶髪のポニーテールにシンプルなワンピース。らしくもない化粧をしてるけど、どこか芋臭さが抜けない女が地団駄を踏んだ。


「ここは学園だぞ?迷子になるには遠過ぎだろ」


「わざわざアンタに会いに来てやったのよ。どうせ今年も理由つけて村に帰ってくるつもりないんでしょ?」


「おぉ、よくわかったな。両親と兄貴達に手紙と土産用意してるから持って行ってくれよ」


「アタシは運び屋かっつーの!」


 鋭いチョップが額に差さる。痛い。


「お前、このご時世に暴力系ヒロインは流行らないっての」


「また《げぇむ》の話?アンタいつまでそんな頭のおかしな話してんの?生まれ変わりだとか原作だとか、そんなんだから村で同年代の友達がいないのよ」


 ぐさっときた。こいつ、言ってはならないことを。


「それによりにもよってあんな連中と一緒になんて。アンタ虐められてるでしょ?」


 虐め?誰が誰を?


「さっきの人達よ。あの紫髪のイケメンは言い寄ってくる女子を次々に手篭めにしそうな軟派男ね。横にいた大男は見るからにガキ大将って感じじゃない。黒髪の男はいやらしい目でアタシを見てたし」


 あー、そういう勘違いね。


「二人の女子もよ。派手な髪型の目つきの怖い子はきっと貴族の令嬢よ。しかも平民を下にみて痛ぶったりコケにして笑うタイプの悪役よ。それにエルフ!悪い事したらエルフに攫われちゃうっていうあのエルフよ!」


 いや、それはねーわ。


「ハナコ、それらは全部勘違いだ。お前いやらしい目を向けてくるわけないじゃないか。だってお前みたいな田舎娘に反応するほど女に飢えて……いる?」


「やっぱりそうじゃない」


 どうしよう。否定できないぞ?

 最初こそは勇者の生まれ変わりってことで話題になっていたけど、学園に馴染んで素が出てくるとその辺の男子と変わらないし、騎士志望でもない一般学生に負けるわ泥棒相手に苦戦するわ、女神教からは支援金減らされてバイトするか悩んでいる男だぞ。

 しかし、よりによってハナコとは………。


「ハナコ、あの黒髪は腐ってる勇者だ。嫁げば生活補助金を貰えるし、生命保険に入れとけば保険金で生活できるぞ」


「はぁ?アンタ、アタシに見ず知らずの男と結婚しろって言うの?」


「やめてください……首締まる……」


 少し持ち上がってないか俺?


「冗談です。とりあえずあいつらはこの学園で俺が一番仲良い連中だから心配すんなって。ちゃんと上手くやってるよ。その証拠に寮じゃなくてアパート借りてるわけだし、実家にも仕送りしてるだろ?」


「それもそうね。叔母さまも仕送りしてくれる息子なんて初めてだから喜んでたわ。手のかからない子だって」


 仕送りしただけでそこまで喜ばれるって、村には兄貴が二人もいるだろうが。そんなに生活苦しいのかよ。


「アッシュに友達……いくら払ったの?」


「友達料とかないから!普通に仲良くなってつるんでるだけだからな!!」


「成長したわねアンタも。よしよし」


「……子供じゃないんだから頭撫でるなよ」


 久々の感触でむず痒くなる。村にいた頃は俺の方がチビだからよくこうされてたっけ?

 今では身長は俺が少し高いけど、反射的に膝を曲げてしまう。これが幼馴染み力のなせる技か。


「髪、伸びたんじゃない?」


「これくらいが流行りなんだよ」


「ご飯はしっかり食べてるの?外食ばっかりじゃない?」


「なるべく自炊してる。毎日外食するほど裕福じゃないよ」


「アザとか傷跡あるけど大丈夫なの?」


「授業で出来たものだよ。骨折とか大きな怪我は回復魔法専門の先生がいるから大丈夫ってお前は過保護な母さんかよ」


 前世と今世の母親より世話焼きかもしれないなこいつ。村での俺唯一の友達だというのは間違いではないかもな。


「誰が母親よ……心配だったから最後に会いにきただけよ」


「最後?死ぬのかお前?」


「違うわよ。結婚するのアタシ」


「誰と?」


「隣町の男爵家の人。次男坊で実家は継げないけど王都の憲兵団に入る予定らしいわ」


「王都の憲兵団って田舎の騎士よりマシじゃん」


「そう。今はこの学校の最高学年にいるから、今日はその挨拶に」


「なるほど」


「だから、アンタに会いに来たのはそのついで。嫁いだらもう会う機会もないだろうから」


「相手はどんな奴だった?」


「今日初めてあって話しただけだから人となりまではわからないわよ」


「そっか…………」


「うん……………」


「まぁ、頑張れよ。卒業して会えに行けたら会いに来るわ。いや、結婚式するならご祝儀携えてしっかり祝ってやるよ」


「まぁ、あんまり期待しないで待ってるわ」


「じゃあ、俺は放課後のバイトとか締め切りがあるから。こっちにいる間に時間があったらウチに来いよ。色々と案内してやるから」


「そうね。村に戻るまで少し時間があるからお願いするわ」


「おう」


















 ちょっと気まずい雰囲気になってそのままその場を後にした俺を待っていたのは怒髪天の主人公とミランダだった。解せぬ。







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