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噂をすればやってくる

 

 季節は夏。夏休みまで一カ月を切った。

 期末テストの結果は赤点ギリギリだったが、文化祭を題材にした記事や短編小説のおかげで補習は免れた。補習になると夏休み期間が短くなるからな。


 特進クラスともなれば赤点になるやつはそうそういない。

 あのシリウスでさえ剣術と武術の成績だけで補習を回避したのだから。


「で、シリウスにすら負ける勇者ってどうなの?」


「オレは編入してきただけだからな!覚えていろ、夏休み明けにはアッと驚く強さをみせてやる」


 選ばれし赤点の主人公。残念ながらゲーム開始最初の夏休みに補習は確定ルートなんだよ。

 その補習中に覚醒イベントあるから頑張れ。


「みんなは夏休みに何するつもりなんだ?」


「わたくしは両親と一緒に避暑地でバカンスですわね」


「僕は実家に戻ってゆっくり休むつもりだ」


「俺様は山籠りだな。修行に最適な場所を教官に教わった」


 それぞれに個性が出てるな。シリウスは夏休みを修行だけで終わらせるつもりかよ……流石脳筋。


「私は学園でゆっくり過ごすつもりよ。行くあてもないし、帰る場所もないから」


「うん。サテラについてはわかってた。ごめんね、重い話させて」


 遠い目をする銀髪ハーフエルフ。

 エルフの里はあるけど帰れないもんね。


「アッシュはどうするつもりなんだい?去年は学園に残っていたみたいだけど」


 そう。去年はサテラを探したり、ゲームとの齟齬がないか調べたりするので忙しくて帰省しなかった。


「今回は事前に帰ってこいって手紙が来たし、俺が帰らないと地元の知り合いが乗り込んできそうで怖いんだよ」


「地元の知り合い?君がたまに話していた子かい?」


「私、その話聞いてないわ。アッシュくんのお友達なの?」


「あー、サテラには話してなかったか。友達というか幼馴染みの女子だな。許嫁がどうの〜って話があった相手」


「い、許嫁っ⁉︎それってアッシュくんの彼女なの?」


「いいや。ただの幼馴染みだって。向こうも俺のこと嫌いみたいだし」


「……こいつにすら許嫁だって?オレには彼女すらいないっていうのに」


 何やら暗い雰囲気を発する主人公。

 別にそういうのじゃないのに。ただ、この世界に転生した時に同じ村で家が近かったからよく遊んでただけの仲だ。

 サテラは俺に幼馴染みがいたってだけで驚き過ぎでしょ。そんなにモテなさそうですか俺?


「帰ってこいっていう手紙も親じゃなくてその幼馴染みが書いたんだよ。学園のお土産とか欲しいから持って帰ってこいって」


「……へぇ。そういうことですのね」


「何よミランダ。こっちを見て笑わないでよ」


「あら失礼」


 しかし、俺としてはこの学園を離れるのはあまり好ましくない。

 そろそろ主人公を中心としたイベントが立て続けに起こる。夏休み明けの戦いを乗り越えられるかが心配だ。

 嫌々だが、主人公の鍛錬に付き合うか?ユーリがいないんじゃユリ×サテの進行は出来ないし、俺がいない間にサテラに近づく不埒者が現れてもおかしくない。


「やっぱり帰るのやm」


「おーい、ダストンはいるか?客人が来てるぞ」


 教室に先生がやってきて呼ばれた。俺に客?

 そして、先生の後ろから顔を覗かせてきたのは、


「アタシが来てあげたわよ」


「ちょっと具合悪くなったんで保健室行ってきます」


 この間、僅か一秒。

 ガシッ!と逃げようとする俺の腕を掴む客人。くっ、動けん。


「な・ん・で、逃げようするのかなぁ?」


「いきなり幼馴染みが押しかけてくるとか悪夢でしかないわ!何しに来やがったハナコ!!」


「アタシはフローラだって言ってんでしょうが!馬鹿アッシュ!」


「いたたたたたたたたたっ!?」


 腕を逆方向に捻られて凄まじい痛みが俺を襲う。その関節はそっちには曲がらないんだよ!


「えーと、アッシュ。そちらの彼女は?」


「わっ、凄いイケメン。アタシはこの馬鹿の幼馴染みでフローラっていいます!」


 出会って数分で幼馴染みは関節技をかけながら自己紹介をするのだった。






 ♦︎






「元気な子だったね」


 アッシュくんがいなくなった教室で、ユーリくんが苦笑いをしていた。

 突然やってきたフローラさんは話があるからとアッシュくんを引きずって行ってしまったのだけれど、大丈夫なのかな?


「そうでしょうか?わたくしにはただの田舎娘にしか見えませんでしたわ」


「嘘だ……あんな可愛い子が幼馴染みなんて!!」


 ミランダは相変わらずの嫌味を言っているし、ヤマトくんは……どうして机に突っ伏しているのかしら。


「アッシュ・ダストンの地元はそれなりに遠い場所だったんだろう?そこから遠路はるばるやってくるなんて押しかけ女房みたいだな。ガハハハ!」


 押しかけ女房。確か本か何かで読んだことがある。好意を持った男の人のところにやってきて同居してそのまま結婚してしまうやつ。


「いえ、偶々近くに用事があってついでに様子を見にきただけじゃありませんの?彼、実家と頻繁にやりとりしている感じでもないですし」


 そうよね。まだ彼女がアッシュくんとそういう仲だって決まったわけじゃないし。アッシュくんは嫌そうな顔……嫌そうなだったのかな?


「どうかしたのかいサテラさん?」


「ユーリくんはフローラさんのこと知ってた?」


「まぁ、たまにアッシュの話に出てくる人物だったのは覚えている。実際に会ったのは初めてだったが、彼の話していたイメージ通りの子だったね」


「そう」


 私は聞くのすら初めてだった。アッシュくんが話すときは彼の作った物語や学園のこと、ユーリくんの特技やユーリくんの活躍、ユーリくんの家族やとりまく状況……あれ?もしかして私はアッシュくんの過去の事をよく知らない?なんでだろう、ユーリくんについての方がよく知ってる気がする。

 お友達だと思ってきたけど、実は私が一方的にそう思っていただけとか?


「随分と難しそうな顔をしてますのね」


「もしもだけど、彼女がアッシュくんの好きな人だったらどうする?」


「どうもしませんわよ。他人の色恋沙汰なんて私には関係ありませんもの。最も、ユーリ様については別ですけどね」


「ミランダ嬢、その話は」


「わかっていますわ。気が向いたらでよろしくってよ。それでサテラ?アッシュ・ダストンが誰とくっつこうがわたくしには関係ありませんけど、貴女はどうですの?」


「わ、私は……」


 自分でもよく分からないけど、私は私自身について上手く説明が出来なかった。








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