文化祭前日。
待たせた!
そんなこんなで文化祭の前日になった。
「いいねぇ。似合ってるよ〜」
あれから俺と主人公の二人でてんやわんやになりつつも頑張った甲斐があった。
クラスの出し物は教室でやることになったんだが、
「どっから持ってきたんだこの調度品は」
元々あった机や椅子にテーブルクロスをかけて雰囲気を出そうとしてたんだが、教室には高価そうなテーブル、ソファ、花瓶にグランドピアノまで置いてある。
「おーほほほ。わたくしの権力を使えばこれくらい造作もないですわ」
犯人はお前か。
「ミランダさん。これはやり過ぎじゃない?一応、お金で差がつかないように予算内で準備するようにってルールだったと思うんだけど」
「心配ご無用ですわ。これらは全て、学園内にあるものを集めただけですわ。その証拠にほら、」
イスをひっくり返すと座面の裏に図書館の文字が書いてあった。
他のも応接室や校長室って書いてあって……校長室からも奪ってきたのか。グランドピアノはミランダの私物らしい。
「ルールを守っているのなら何をしてもいい。だってルールに載っていない方が悪いのですから」
いったい誰だよこの悪役令嬢に悪知恵与えた奴は。権力者でお金持ちが賢いとかチートだろ。
「ふむ。合理的ではあるな。僕の方も頼まれていたメイド服や執事服の方は準備してきたよ」
ユーリは実家から着れなくなったり使わなくなった衣装を用意してくれた。ミランダの家にもあるらしいんだが、基本的に使わない=ゴミで処分していて必要数は無かったんだ。
「これを着て作業するのは半分。残りの半分は裏で茶菓子やお茶の準備だから学生服の上からエプロンでいいよな」
一番重要だったのはここの選別だった。特進クラスは貴族や武人変人が集中しやすいせいでまともな料理スキル保持者が少なかったんだ。
結果、見た目は合格ラインなのに料理ができるからと調理班に回されたやつもチラホラ。
主人公を始めとしたメインキャラ全員はもちろん表で接客だ。見た目重要だからな。
「くっ。俺様がまさか裏方に下げられるとは」
「当たり前ですわ!誰が貴方みたいな筋肉ダルマのメイドなんて目に毒ですわ!!」
男女逆転ってのがなければ雄々しい執事のシリウスとして活躍できたのになぁ。女装だと一生夢に出てくるトラウマものだぞ。
「でも、以外だったわね。シリウスくんが料理もできたなんて」
「料理?火で焼けば食えないものなどない!!」
「サテラさん。シリウスは皿洗いだよ。流石の僕もシリウスの手料理は食べたくない。……一度だけ見たが、彼は豪快というか、いささかワイルドだからね」
男子だけで特訓した時、シリウスは釣った魚を丸焼きにしたのを料理だって言い張ったからな。味付けすらせずにだからな。
「おい、こっちの方も準備完了だ」
「使いっ走り一号くん、お使いご苦労様」
「いつかお前に土下座させてやる」
教室に帰ってきたのは明日の宣伝のためにメイド服でチラシを各エリアに貼りに行っていた主人公。
目が血走ってて怖い。
メイド服はユーリの実家のデザインだと地味だったのでスカート短くしたりレースを付け加えたりして、いわゆる秋葉原の萌えメイド風になっている。……男子用なのが勿体ない。
こちらの作業はサテラと俺、女子達で対応した。裁縫が得意な男子なんていなかったからな。俺は田舎で手伝わされたのもあるし、理想のメイド服にはこだわりがある。
「他人のメイド服姿にご満悦なのわよろしいですけど、そろそろ貴方達も着替えてくださいな。最終チェックしますので」
「なぁ、今からでも男女逆転やめない?サテラもそう思わない?」
「頑張ってアッシュくん!」
……神は死んだ。
数分後。
「ははは!似合わないなアッシュ・ダストン!」
黒髪ロングのメイドに爆笑された。
「うるせぇ、自分でもわかってるよ」
鏡に映るのはカツラで金髪ショートカットになった俺。化粧のおかげで多少はマシだが、どうにもオカマ感が隠しきれていない。脚線美?を見せるために足の毛を剃った。スカートがスースーして気持ち悪い。
「俺は裏方でよかったのに……」
「サテラさんとミランダ嬢の強い推薦だよ。あの二人が同じ意見とは随分と気に入られている証拠じゃないか」
そう言ったユーリは恐ろしい程に女装が似合っていた。
髪は元々長いので紫髪をそのまま。顔立ちがいいので化粧が映える。メイド側の代表なのであえてフリフリではなくシックな元々ユーリの実家にあるデザインに近いロングスカートタイプを採用した。
お人形さんというか、厳しいメイド長タイプの人にいるよねこういう人。
「なんか変なのに目覚めそう」
「やめてくれたまえ。女性にモテて大変なのに男性にまでモテるのは手に負えない」
そう言って笑うユーリ。
どうやらこの状況を楽しめる余裕はあるみたいだな。最近、肩に力入っていたからいい息抜きになればいいと思う。
「さて、次は女性陣の番だが」
「そこは抜かりありませんわユーリ様」
トップバッターはミランダ。
縦巻きロールの金髪をストレートにして化粧を落としただけで別人みたいに見える。
モノクルをかけて優雅に歩く様はまさに執事。お辞儀や所作に気品を感じるレベルだった。
「こういうのは毎日見ていますの。それに今回は実家にいる爺やからアドバイスを受けましたし、やるからには徹底的に致しますわ」
ガチだ。ここに表彰台狙いがいる。
「ミランダ、ちょっと待ってよ。厚底靴だから歩きにくくて……」
ミランダの執事姿に感嘆していたが、そんなもん次のインパクトに比べたら些細な問題だった。
「えへへ、どうかな?」
眩い銀髪を結んで、ちょっと恥ずかしげに登場したサテラ。
男性に見えるかと言われればノーだが、そこには男装したけど可愛らしさを隠せていない天使がいた。
「イイ!凄くイイと思う」
「ミランダみたいにカッコよくはなれなかったんだけど、一度はこういうの着てみたかったのよね」
「全く、サテラさんはどんな服や衣装も可愛く見えてしまうのが欠点ですわね。それに比べてどうでしょうかわたくしのこの姿」
「クロワッサン女は胸が元からないから男みたいだな!」
ドパンッ!!
「次にその口を開いたら風穴を開けますわよ」
容赦ない魔法がシリウスを襲った。
ミランダの胸が小盛りなのはゲーム時代からネタにされてるから触れるのはよそうな。
「とりあえずこれで全員出揃ったみたいだし、明日の打ち合わせしようか」
こうして、俺たちの二回目の文化祭が幕を迎える。
♦︎
「しかし、模擬戦用の剣を用意する必要はあったのか?」
「んー、文化祭は何があるかわからないからな。万が一に備えてだ」
「まぁ、オレにかかれば侵入者がいようが楽勝だろうがな」
んんっ。フラグ乙。




