文化祭は夏前に
「文化祭……ねぇ」
今日のホームルームで発表があった。
この学園では年に二回、大きなイベントがある。一つは学年末近くにある魔闘祭。体育祭のガチンコ版みたいなやつで一番盛り上がる危険なやつ。
そしてもう一つが来月に予定されている文化祭なんだが………。
「文化祭って何をするの?」
「なんだ、決闘がないではないか!」
「わたくしの魔術を見せつけるにはいささか注目度が低いですわね」
このように盛り上がってくれない。ここの生徒は武闘派が多過ぎる。俺みたいな一般の生徒用のイベントなのにさぁ。
「ユーリ、お前は文化祭についてどう思う?」
「見て回る分には楽しいが、出店をする側になるととても面倒な行事だね。僕も乗り気ではないかな」
我が友でさえこれだ。
前世なら文化祭だーっ!! ってくらい盛り上がっていたはずなのに。まぁ、魔闘祭と違って外部から大量の観客が来るわけでもないし、学園の生徒や近隣の住民くらいしか客がいないけど。
「ねぇねぇ。アッシュくん、文化祭って楽しいの?」
「勿論。食べ物の出店とか劇とか絵の展示とかでワイワイするお祭りだよ。サテラは知らない?」
「うん。私、人目を避けてきたからそういうのに参加したことないし、エルフの里にはなかったから」
去年の文化祭についてはまだ俺がサテラを発見する前だったから気にもしていなかったらしい。
「となると、サテラにとっては初参加になるわけか。それなら全力で頑張らないとな。な、ユーリ?」
「どうしてそこで僕に話を振るのかわからないが、サテラくんには色々と楽しんでほしい気持ちはある。今年は少し気合いを入れてみるのもいいかもね」
「あら。ユーリ様が頑張るのであればわたくしが全力をもってサポートいたしますわ。あなたも手伝うわよね野獣」
「細かい作業なんかは得意じゃないが……まぁ、祭は楽しければいいか!」
「よし。なら、今度の文化祭は張り切って行くぞー!」
「「「「おー!」」」」
♦︎
「とは言ったものの、何をすればいいんだ?」
ゲーム内ではキャラ達が文化祭を楽しそうにしてる静止画が数枚しかなかった。
そもそもみんなが文化祭を楽しみにしてないのは原作ゲームのせいでは? 逆に魔闘祭には力入れすぎでしょ。文化祭が週刊マンガの一話分なのに魔闘祭は単行本数冊くらいのボリューム差がある。
「喫茶店とかお化け屋敷とか? 無難なところだとそんなもんだけど……」
「どうしてそれをオレに言うんだ」
「別にいーじゃん。暇そうな奴がお前くらいしかいなかったんだから」
放課後の教室。ユーリはシリウスと特訓。サテラとミランダは魔法についての資料集めで図書館へ。
誰かと相談をしたかったんだけど、悲しいかな他のクラスメイトから距離を取られてしまっている俺にはもう最終手段しか残っていなかったんだ。
「オレも暇ではないんだか? もっと訓練をして強くならくちゃ」
「無理無理。お前って何かしらの危機的イベントとかに巻き込まれでもしない限り大きく成長しないから。日頃の特訓とか誤差の範囲だから」
「バカにするな! オレは勇者だぞ! お前のような一般人とは違うんだ。大体、文化祭なんて時間の無駄じゃないか。そんなものについてあれこれ考えるだけ無意味だ」
「はいはい。勇者っていうか勇者の生まれ変わりね。聖剣すら使いこなせないのに威張らない。知ってるか? 最近、お前に話しかけてるの俺くらいしかいないって」
「……別にオレは一人でも問題ない」
「いいチャンスだと思うぞ? 文化祭で大活躍すればクラス内での評価も上がるだろうし……女子からの人気もでるかも」
「考えてやらないでもない。オレは何をすればいい?」
チョロい。チョロいわ〜こいつ。
主人公のことなんて放ったらかしにしとけばいいと思うだろうけど、よく考えたらゲームはこいつ目線で話が進むからイベントに絡ませておかないと先が読めなくなる可能性大なのよ。
あとはあれ、最近の元気のなさが気になっただけ。
「とりあえず文化祭の実行委員になれ。サポートはしてやるからお前がクラスを仕切れ」
「ふっ。オレのカリスマ性が覚醒する時が来たか。いいだろう! このオレが実行委員になるからには大成功間違いなしだ!」
「おーすごいすごい。頑張れふぁいとー」
やる気になってよかった。文化祭の実行委員なんて名前だけの雑用係みたいなもんだし、誰もやりたがらなかったから丁度いい。俺もクラスとは別件で忙しいし。
ここのところ剣術やら魔法やらで時間を取られたせいで本業の執筆が上手く進んでなかったからな。こっちは生活がかかっているから重要だった。サテラに楽しんでもらうのはもっと大事だけど。
数日後、俺たちのクラスは無難にメイド&執事喫茶になった。
ただし、男女逆で仕事をするという地獄に。




