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【完結保証】おとぎ話の試練を全部クリアしたら無自覚最強の美女になっていました。~明日仕事なのに、独占欲の強い後輩女子に帰れない異世界へ連れて行かれました~  作者: ごまだんご
第八章 鐘の音が鳴る前に

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第98話  南に……

 しばらくその場に留まり様子を窺う。けれど、それ以上の変化は起こらなかった。地面の光も、一定の強さを保ったまま、静かに明滅を続けているだけだった。


 一度、ガレットたちの元へ戻り、状況を説明する。


「どうだった」

「発光する地面がありました。あとは、魔獣が近づかないことくらいで」


 心春の報告を受け、ガレットたちも表情を引き締めた。


「もう一度、全員で向かってみよう」


 再び現地に戻ると、様子は先ほどと変わらなかった。地面の光もそのままの状態を保っている。

 ただ一つ、違っていたことがあった。

 先ほどまで周囲をうろついていたはずの魔獣たちの姿が、綺麗に消えていた。


「あれ?」


 思わず声が漏れる。


「さっきまで、魔獣が周りにいたんですが」


 周囲を見回しても、気配すら感じられない。まるで、何かに追い払われたかのようだった。

 その事実がますます違和感を深くしていく。何かが起きている。ただ、その正体が掴めない。もどかしさが、じわじわと胸に積もっていった。何かに怯えるというよりも、見えない相手と対峙しているような、落ち着かない気持ち悪さだった。長年培ってきた勘が、これは一人で抱え込んでいい話ではないと告げている。


 結局、しばらく監視を続けたものの、それ以上の変化は見られなかったため日が傾き始めた頃、一行はギルドへと引き上げることにした。


「今日のところは、ここまでにしよう」

「はい」


 報告を終えガレットたちに向き直る。


「また何か異変を感じたら、すぐに呼んでください」

「分かった。世話になったな」


 その夜、心春はギルドの通信室を訪れた。魔力を用いて遠方のギルドと連絡が取れる、簡易的な設備が置かれている。


「すみません、スクエアランクの心春です。こちらの街に住む、すずなさん宛てに連絡をお願いできますか」


 受付の職員が、心得たように頷いた。水晶を通して、短い文面が向こうのギルドへと送られていく。

 翌朝、すずなが迎えに来る。


「大丈夫でしたか」


 その声に、心春は思っていたよりも肩の力が抜けるのを感じた。一人で抱えていた違和感が、誰かと共有できるというだけで、少しだけ軽くなった気がした。


「わざわざ来ていただき、申し訳ありません。特に何もなかったんですけど。ちょっと気になることがあって」


 心春はそう言いながら、昨日の出来事を手短に説明した。


「発光する地面、ですか」

「はい。それに魔獣が急にいなくなったのも、気になって」


 すずなは真剣な表情で話を聞いていた。


「念のため、エルフィさんに相談してみましょうか」


 その提案に心春は頷いた。


 すぐに移動し、二人はエルフィの家を訪ねた。事情を説明し始めると、エルフィの顔色が、みるみる変わっていった。


「なんだと」


 いつもの落ち着いた様子が、嘘のように消えている。視線が一瞬、宙をさまよい、何かを思い出そうとするように細められた。それから、記憶の糸を手繰るように、ゆっくりと目を伏せる。


 しばらくの沈黙があった。


「エルフィさん?」


 心春が恐る恐る声をかける。エルフィは答えない。ただ、その指先が、無意識に自分の腕をきつく握りしめていた。


「南に……」


 その一言を最後に、エルフィは言葉を失っていた。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。


すずなたちの物語を、少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。皆さんに読んでいただけることが、この物語を書き続ける力になっています。

もしよろしければ、ブックマークや評価もいただけると嬉しいです。

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