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【完結保証】おとぎ話の試練を全部クリアしたら無自覚最強の美女になっていました。~明日仕事なのに、独占欲の強い後輩女子に帰れない異世界へ連れて行かれました~  作者: ごまだんご
第八章 鐘の音が鳴る前に

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第94話 寄り添うもの

 エルフィの家を出た後も、すずなはしばらく口を開けなかった。夕暮れの街並みがいつもより色褪せて見える。隣を歩く紬は何も言わず、ただそっと肩を寄せて、すずなの横を歩き続けていた。


 家に着くと、すずなはソファに腰を下ろし、ぼんやりと窓の外を眺めた。乗り越えた者がいたという事実。それでも長くは持たなかったという結末。自分もいつか同じ道を辿るのだろうか。そんな考えが、頭の中で静かに渦を巻いていた。


「先輩」


 紬が隣にそっと腰を下ろし、何も言わずに手を重ねてきた。


「大丈夫ですか」

「うん、大丈夫。ちょっと考え込んじゃって」


 すずなはそう答えながらも、自分の声が少し硬いことに気づいていた。重なった紬の手の温もりだけが、その硬さをわずかに和らげてくれる。


 翌日、すずなは一人でエルフィの家を訪ねた。どうしてももう少しだけ知りたいことがあった。


「昨日のあの人のこと。もう少し教えてもらえますか」


 エルフィはしばらくすずなの顔を見つめた後、静かに口を開いた。


「名前はもう覚えていない。だが、真面目で責任感の強い男だった」


 その言葉にすずなは静かに耳を傾けた。


「試練に一人で挑み、一人で乗り越えた。誰にも頼ることをしなかった」


 エルフィの視線が、一瞬すずなから逸れて宙をさまよった。指先が、何かを探すように膝の上でわずかに動く。


「その人は寂しかったんでしょうか」


 すずながぽつりとそう尋ねる。

 エルフィはひと呼吸置いてから、答えた。


「フォローではないぞ」

「はい」

「奴は、孤独だった。寄り添うものがいなかったからだ」


 その言葉がすずなの胸に静かに沈んでいく。


「でも、お前は違う」


 エルフィはそう言いながら、すずなをまっすぐに見た。


「紬がいるだろう」


 すずなはその一言に、思わず息を呑んだ。当たり前のように隣にいてくれる紬の存在が、今、改めて重みを持って心に響いてくる。


「はい」


 すずなは静かにそう答えた。詰まっていた息が、ゆっくりと胸の奥からほどけていくのが分かった。


「そうか」


 すずなはその言葉を、自分の中でもう一度噛み締めるように呟いた。


「私には紬がいる」


 その一言が、胸の奥にすとんと落ちてきた気がした。


 家に戻ると紬が心配そうな顔で出迎えてくれた。


「先輩、エルフィさんの所、どうでした?」

「紬」


 呼び捨てにされた紬が、驚いたように目を丸くした。すずなは何も言わず、その体をそっと引き寄せて抱きしめた。


「先輩……?」

「紬が一緒にいてくれたら。私は大丈夫だと思う」


 腕の中で紬の体温を感じながら、すずなはもう一度、その言葉を確かめるように噛み締めた。紬は驚いたように一瞬体を強張らせたが、すぐに力を抜き、すずなの背中にそっと腕を回した。


「もちろんです。私、ずっと先輩のそばにいますから」


 その声は、いつもよりわずかに震えていた。すずなは腕の中の温もりを、もう少しだけ長く感じていたいと思った。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。


すずなたちの物語を、少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。皆さんに読んでいただけることが、この物語を書き続ける力になっています。

もしよろしければ、ブックマークや評価もいただけると嬉しいです。

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