第92話 難易度の話
「エルフィさん、報告があります」
すずながそう言いながらエルフィの家を訪ねた。
「Midnight Bell、クリアしました」
「そうか」
エルフィはそう頷いた後、少し考えるような表情を見せた。
「でも、ここまで強くなっているお前なら拍子抜けしただろう」
「はい、正直、あっという間で」
すずながそう答えると、エルフィは小さく息を吐いた。
「それにボルクのような奴を同行者に指名するなんて、レインの奴も大概だな」
「あの……? どういうことですか」
すずながそう尋ねた。
エルフィは珍しく、じっくりと語り始めた。
「今のお前なら、一人でも余裕で乗り越えられただろう。試練にもそれぞれある程度の難易度がある。Midnight Bellは本来なら最初か、二番目に乗り越えるべき試練だ。序盤で乗り越えるべき、比較的軽めの壁だったはずだ」
「軽めの壁……」
「そこに、お前はもう十分な力をつけている。加えてボルクのような戦闘特化の男を連れていけば、簡単すぎるのは当然だ。あいつは単純な力比べにおいては、この国でも指折りの実力者だ」
「そう、だったんですか」
すずなはその説明に、思わず息を呑んだ。
「じゃあ、もっと苦戦する予定だったんですか」
紬がそう尋ねた。
「本来ならな。だが結果として拍子抜けした。それだけ、すずなが強くなっているという証でもある」
エルフィはそう言いながら、静かにすずなを見つめた。
「悪い話ではない」
「先輩そんなに強くなってたんですね」
紬が少し誇らしげにそう言った。
「私はあまり実感がないんですけど」
すずながそう苦笑しながら答えた。
「実感がなくても周りから見れば分かる。試練の判定がそれを証明している」
エルフィがそう言った。
「先輩の隣にいると、時々忘れそうになりますけど。本当に凄い人なんですよね」
紬がそう言いながら、すずなの腕に軽く寄り添った。
「そう言われるとなんだか恥ずかしいです」
すずなが少し照れくさそうにそう答えた。
「でも、残り二つの試練はもっと大変ということですよね」
すずなが少し表情を引き締めてそう言った。
「Thorn bound Fateは、規模が桁違いだ。マスターランクが数名手伝っても、足りるかどうか怪しい」
「マスターランクの方にお手伝いいただいても、ですか……」
紬がその言葉に思わず息を呑んだ。
「今回のように簡単に済むとは思わない方がいい」
エルフィはそう言いながら、静かに紅茶を一口飲んだ。
「気を引き締めます」
すずなが答えた。
「先輩が挑む時は、私も絶対に一緒にいますから」
紬がそう言いながら、すずなの手をしっかりと握った。
「はい。よろしくお願いします」
すずなもその手を握り返した。
「まあ、慌てる必要はない。試練はいつ来るか分からないものだ。今のうちにしっかり力をつけておけ」
エルフィはそう言いながら、いつもの淡々とした調子に戻っていった。
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