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【完結保証】おとぎ話の試練を全部クリアしたら無自覚最強の美女になっていました。~明日仕事なのに、独占欲の強い後輩女子に帰れない異世界へ連れて行かれました~  作者: ごまだんご
第八章 鐘の音が鳴る前に

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第90話 鐘の試練

 その日、すずなたちは本部ギルドの図書室に呼び出されていた。


「時空の残滓に、新しい波形を感知した」


 顔を合わせるなり、レインが切り出した。前置きも世間話もない、レインらしい単刀直入さだ。


「新しい波形……?」


 すずなは身構えながら聞き返した。


「すずな、お前に関連する試練の気配だ。まだ発動はしていないが、近いうちに動き出す可能性が高い」

「試練……ですか」

「Midnight(ミッドナイト) Bell(ベル)。塔にまつわる試練だ」


 レインは資料の一部を広げた。羊皮紙には、見慣れない記号がびっしりと書き込まれている。


「今までの試練と何が違うんですか」


 紬が尋ねた。


「まず試練が開始される条件が特殊だ。試練の主体はすずな一人。ただし異性一人のみ、同伴が可能な仕組みになっている」

「異性一人……?」


 紬が反応した。声のトーンがわずかに落ちる。


「同性は協力できないということだ」

「じゃあ私は」

「入れない」


 レインの答えに、紬は目に見えて肩を落とした。


「そもそも、なんで同性だとダメなんですか」


 紬が不満げに尋ねる。


「そちらの世界には、ガラスの靴だかそういう物語があるだろう」

「シンデレラですか」


 すずなが答えると、レインは頷いた。


「その物語がモチーフになっている以上、恐らく物語の構造そのものに縛られているのだろう。舞踏会、王子、そういった要素が条件として反映されている可能性が高い」

「仕組みは分かってるんですか」

「正直に言えば、分からん」


 レインはあっさりと言い切った。


「仕組みは分からんが、同性ではダメなのだ。試練は開始されるが中に入れず、結局失敗となる。理屈が分からないまま従わざるを得ない条件というのも、この世界には案外多い」

「なんか腑に落ちないですね」


 紬が呟いた。腕を組んだまま、納得のいかない顔を隠そうともしない。


「私が同行しても良いんだが」


 レインが切り出した。


「レインさんが?」


 すずなは意外そうに言った。


「私の時空魔法を使えば、塔の内部を一気に飛び越えることも可能だ。だが、それには一つ問題がある」

「問題ですか」

「試練というものは、多くの場合、過程そのものに意味を持たせている。塔の頂上へ力業で瞬間移動してしまった場合、システム側がそれを『正規の攻略』と認識しない可能性が高い。つまり魔石を装着する行為自体は成立しても、試練クリアの判定が下りず無効化される恐れがある。過去の記録を辿っても、こうした過程を無視した攻略に関しては成功例と失敗例が半々程度に分かれていて、確実性という点ではあまり信頼できるデータとは言えない」

「つまり」


 紬が遮った。


「レインさんが行くと失敗するかもしれない、ってことですか」

「端的に言えば、そうだ」


 レインはあっさりと頷いた。


「そのため私は不適任だ。誰か別の適任者が必要になる」

「適任者……」


 すずなが呟く。


「それに単純な話だが、Midnight Bellは短時間で高い戦闘力を要求される可能性がある。私は戦闘向きの魔法使いではない」

「じゃあ誰が」


 紬が尋ねると、レインは扉の外へ視線を向けた。


「一人、心当たりがある。呼んでこよう」


 レインは部屋を出ていき、しばらくして、ボルクを連れて戻ってきた。


「なんだ呼び出しって」


 ボルクが訝しげに言った。


「お前に頼みたいことがある」

「頼みたいこと?」


 ボルクは腕を組んで聞き返す。


「すずなの新しい加護取得のための試練に挑むことになる。場所までは特定できているが、参加条件が特殊で、同性は参加できない」

「特殊?」

「異性一人だけが同行を許される。私ではシステム上の判定に不安がある。お前なら戦闘力も十分だ」

「つまり俺にすずなの護衛をしろってことか」

「単純に言えば、そうだ」


 ボルクはしばらく考える素振りを見せた後、にやりと笑った。


「面白そうじゃねえか」

「引き受けてくれるんですか」


 すずなが驚いたように聞く。


「俺が行ってやるよ」


 ボルクは胸を叩いた。


「すずなの規格外の力、前々から気になってたんだ。近くで見られる機会なんて、そうそうない」

「本当に、助かります」


 すずなは頭を下げた。


「気にすんな。困った時はお互い様だろ」


 ボルクは豪快に笑った。


「あとは発動を待つだけですね」


 紬は複雑そうな表情を浮かべている。


「紬さんも心配ですよね」


 心春がそっと声をかけた。


「はい……先輩を一人で行かせるみたいで」

「一人じゃないですよ。ボルクさんが一緒ですから」


 すずなが紬の肩に手を置く。


「分かってます。でも」


 紬は黙ったまま、袖口をきゅっと握りしめた。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。


すずなたちの物語を、少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。皆さんに読んでいただけることが、この物語を書き続ける力になっています。

もしよろしければ、ブックマークや評価もいただけると嬉しいです。

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