第88話 お礼の品
「エルフィさんのお祝いも終わったので、わざわざご尽力いただいたレインさんとシェイラさんに、ちゃんとお礼をしないといけませんね。あの時は簡単に挨拶だけで終わらせてしまったので」
すずながそう切り出した。
「食べ物以外の贈り物が良さそうですよね」
紬もそう頷いた。
「あの二人が喜びそうなもの何かありますかね」
心春がそう考え込むように呟いた。
翌日、三人は日本へと転移し都心へ向かうことにした。
「せっかくなので、ちゃんとしたお店を回りましょう」
すずながそう提案した。
電車を乗り継ぎ、賑やかな街並みを歩いていると、途中で雑貨屋の店先が目に留まった。紬がふと足を止め、店頭のワゴンを覗き込む。
「あ、これ見てください」
紬が手に取ったのは、持ち手を握ると先端が伸びて物を掴める、伸縮式のマジックハンドだった。試しに引き金を引くと、するすると腕が伸びていく。
「これ、レインさんにどうですか?」
「マジックハンドですか」
すずなが少し戸惑ったようにそう聞き返した。
「ほら、時空魔法で距離感とか操ってるじゃないですか。なんか通じるものがある気がして」
「それは多分、方向性が違うと思います」
心春が笑いを堪えながらそう突っ込んだ。
「そうですかね」
紬は少し名残惜しそうにマジックハンドを棚に戻した。伸びた腕がゆっくりと元の長さに戻っていく。
三人はまず時計の専門店が並ぶ通りへと向かった。
「レインさんには時計が似合いそうですね」
紬がそう言った。
「時空魔法使いですし、懐中時計とか雰囲気に合いそうです」
心春もそう同意した。
「さっきのマジックハンドより、よっぽど似合うと思います」
「それは否定しません」
紬は素直にそう認めた。
老舗の時計店に入るとガラスケースの中に、様々な懐中時計が並んでいた。
「どれも素敵ですね」
すずながそう言いながら一つ一つ見比べていく。
しばらく悩んだ末、選んだのは落ち着いた意匠の懐中時計だった。文字盤には繊細な歯車の模様が刻まれている。
「これ良いと思います」
「レインさんの、あの語り口にも合いそうですね」
紬が笑いながらそう言った。
懐中時計を購入した後、三人は次にガラス工芸専門店へと向かった。落ち着いた店内には繊細な作りのガラス細工が静かに並んでいる。
「シェイラさんにはこういう雰囲気が合いそうですね」
心春がそう言いながら店内を見回した。
「植物や自然を感じさせるものが良さそうです」
すずなもそう頷いた。
しばらく見て回るうち、紬がふと足を止めた。
「これ素敵じゃないですか」
紬が指差したのは、小さな花や葉が閉じ込められた透明なガラスのペーパーウェイトだった。光にかざすと、内部の植物が幻想的に浮かび上がる。
「本当ですね」
すずなもその繊細な作りに目を奪われた。
「資料室で本を読んでいる姿にも似合いそうです」
心春がそう言いながら小さく微笑んだ。
「これにしましょう」
紬がそう決めた。
二つの品を無事に選び終え、三人は満足げに店を後にした。
「あとは渡すタイミングですね」
紬がそう言った。
「今度、また本部に伺ってみましょうか」
すずなが切り出すと、心春もそれに頷いた。
「きっと喜んでいただけますよね」
「あの二人には本当にお世話になりましたから」
言葉を交わしながら、次の予定を頭に描き始めていた。
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