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【完結保証】おとぎ話の試練を全部クリアしたら無自覚最強の美女になっていました。~明日仕事なのに、独占欲の強い後輩女子に帰れない異世界へ連れて行かれました~  作者: ごまだんご
第六章 もう一人の異世界人

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第73話 肉三昧の宿

 すずなは心春に、明日日本へ渡って父に会わないかと提案する。二年間押し殺してきた想いに涙をこぼしながら、心春は同行を決意した。翌朝、緊張と不安を抱えながらも、すずなたちに支えられて日本へ渡る。懐かしい街並みに心を震わせつつ中村さんの家へたどり着くと、震える手でインターホンを押した心春に、中村さんは涙で応えた。二年分の想いが溢れる再会を果たした後、中村さんはすずなたちに深々と頭を下げ、娘の命を救ってくれたことへの感謝を伝えた。

 しばらく和やかな時間が流れた後、すずなはそろそろと切り出した。


「そろそろ失礼しますね」

「え、もう行かれるんですか」


 中村さんが少し名残惜しそうにそう言った。


「はい。実はこれから温泉に行く予定で」

「温泉ですか」

「はい、エルフィさんのリクエストで」


 すずながそう言うと、エルフィがこくりと頷いた。目の奥にはすでに肉料理への期待がありありと浮かんでいる。


「肉が食べたい」

「肉三昧の宿を予約してあるので」


 紬がそう補足すると、中村さんは少し微笑んだ。


「それは楽しみですね」

「帰りに、また、寄らせていただきますね」


 すずながそう言うと、中村さんは嬉しそうに頷いた。


「はい、ぜひ」


 心春はその様子を少し離れた場所で静かに見守っていた。指先で自分の袖口をそっと握り、まだ慣れきらない父娘の距離をどう埋めればいいのか、確かめるような表情を浮かべている。


「心春さんは、お父様とゆっくり過ごしていてください。帰りに、またお会いしましょう」

「はい……ありがとうございます」


 心春はそう答えながら父の隣にそっと寄り添った。その頬にはわずかな照れと、それを上回る安堵の色が滲んでいた。


 三人は二人に見送られながら家を後にした。


「また来ますね」


 すずながそう言うと、中村さんは手を振りながら答えた。


「いつでも待ってます」


 その笑顔は以前会った時よりも、ずっと明るいものだった。かつて心春の行方も知れず不安に沈んでいた表情とは、まるで別人のようだった。


 家を出たところで、すずなは改めて今日の予定を確認した。


「今回の宿、初めて行く場所ですよね」

「はい。前と違う宿を予約しました。肉料理が有名なところで」


 紬がそう答えた。


「じゃあMoon Returnは使えませんね。一度行ったことのある場所じゃないと」

「そうなんです。なので今回はレンタカーを借りて向かいましょうか」

「はい、お願いします」


 近くのレンタカー営業所で車を借り受ける。運転席には紬が座った。


「エルフィさん、後ろ座ってください」

「ん」


 エルフィは少しそわそわとした様子で後部座席に乗り込んだ。シートベルトを何度も確かめるように引っ張り、居心地悪そうに座り直している。


「エルフィさん、車、久しぶりですか」


 すずながそう尋ねると、エルフィはこくりと頷いた。


「いつも、転移で直接来てたからな」

「そういえば、そうですね」


 車は高速道路を進んでいった。窓の外を流れる景色にエルフィは興味深そうな視線を向けていた。ガードレールの向こうを飛ぶように過ぎていく標識に、長命種らしからぬ子供っぽい好奇心が覗いている。


 宿に到着すると案内された部屋には、すでに豪華な肉料理の準備が整えられていた。湯気の立つ皿から漂う香ばしい匂いが、部屋いっぱいに満ちている。


「わぁ、すごい量ですね」


 紬が目を輝かせながらそう言った。テーブルには様々な部位の肉料理が所狭しと並んでいる。


「これは」


 エルフィも、その量に驚いた様子を見せた。普段は物事に動じないその表情が、珍しく大きく見開かれている。


「たくさん召し上がってください」


 すずながそう促すと、エルフィはさっそく一切れ口に運んだ。噛みしめた瞬間、肩から力が抜けたように表情が緩んだ。


「美味い」

「気に入っていただけて良かったです」


 エルフィはその後も次々と肉料理に手を伸ばしていった。牛肉、豚肉、鶏肉。様々な調理法の肉が次々とその口に運ばれていく。皿の減っていく速さに、給仕係が思わず二度見するほどだった。


「エルフィさん、本当に肉好きですね」


 紬が少し呆れたように、そう言った。


「何が悪い」

「悪くないですけど。海鮮の時と反応も全く同じですし、勢いもすごいので」

「美味いものは美味い」


 エルフィのその率直な言葉に、すずなと紬は思わず笑ってしまった。肩を寄せ合うように笑う二人を横目に、エルフィはまた次の一切れへと箸を伸ばしている。


 夜が更けるまで三人は、その豪華な食事を心ゆくまで楽しんだ。テーブルの上に積み重なっていく空の皿の数だけ、笑い声も重なっていった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。すずなたちなら、こんな時きっと「支えてくれる人がいるから頑張れる」と言うはず。


この物語も、読んでくださる皆さんに支えられています。「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけたら、ブックマークや評価という"応援魔法"を、ぜひ授けてください。


よろしくお願いいたします。

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