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【完結保証】おとぎ話の試練を全部クリアしたら無自覚最強の美女になっていました。~明日仕事なのに、独占欲の強い後輩女子に帰れない異世界へ連れて行かれました~  作者: ごまだんご
第六章 もう一人の異世界人

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第68話 あなたたちは……

 石碑の光が収まると、すずなと紬は魔物のいない広間に立っていた。四方に扉があるが、心春の姿はどこにも見当たらない。残り時間が刻一刻と減る中、疲労困憊の体を引きずりながら二人は一つずつ扉を確認していくが、いずれも空振りに終わる。


 焦りが募る中、紬のLunar Sightがいつの間にか進化し、床にうっすらと残る心春の足跡らしき光の残滓を捉える。最後の力を振り絞り、その光を頼りに四つ目の扉へ向かう二人。曲がり角の先に見えた小さな扉に、二人は最後の希望を託して手をかけた。

 扉の先、そこには壁にもたれ座り込んだ一人の女性の姿があった。


「あ……」


 その女性がこちらに気づき掠れた声を漏らした。


「あなたたちは……」


 黒髪の日本人らしい面差し。もう体力の限界が近いのか、その表情には隠しきれない疲労が浮かんでいた。


「心春さんですよね」


 すずなが確認すると、心春は驚いた様子で目を見開いた。すずな自身も、視界がぐらりと揺れるのを堪えながら声を絞り出していた。


「なんで、私の名前……」

「詳しい話は後でします。今はとにかく、ここから出ましょう」


 すずなはそう言いながら心春に駆け寄った。膝が笑い、あと少しで崩れ落ちそうになるのを、気力だけで押しとどめる。紬も息を切らしながら反対側から心春の体を支えた。二人とも、もう指先にまともな力が入らなかった。


「掴まってください」


 すずなは震える両手で、二人の手をしっかりと握った。もう説明している時間はない。意識を集中させる。頭の芯が鈍く痛んだ。それでも足元に黒い霧が静かに渦を巻き始めた。


「え、何これ……」


 心春が戸惑う声を上げた次の瞬間、視界が切り替わった。


 気づくと、そこは遺跡の外だった。木々に囲まれた開けた場所に、ギルドから派遣された支援部隊の手によって簡易的な救護キャンプが張られていた。すでに別れたルートを進んでいたダインたちも、三人のパーティーメンバーを発見し、その場で手当てを受けていた。


「おい、あれは……!」


 ダインがこちらに気づき、大きな声を上げた。


「二人が戻ってきた。それに、もう一人……」

「心春さん、無事保護しました」


 すずなはそう告げるので精一杯だった。声を出した瞬間、張り詰めていた何かがどっと緩み、その場に膝から崩れそうになる。紬が慌ててその体を支えた。


「先輩、大丈夫ですか」

「はい……ちょっと、気が抜けただけです」


 周囲から安堵の声が上がった。


「三人とも無事だ。良かった……」


 心春も周りの仲間たちの姿を見て涙ぐんだ。


「みんな……無事、だったんだ」


 救護キャンプにいたソレイルのパーティーメンバーたちも、心春の姿を見て駆け寄ってきた。


「ミハル! 良かった本当に……!」


 一人がそう言いながら心春を力強く抱きしめた。


「心配かけて、ごめん……」

「無事ならそれでいい。お前がいなくなって、みんな生きた心地しなかったんだぞ」


 別のメンバーも涙を拭いながらそう言った。


 ダインもすずなと紬の方をあらためて見た。二人の姿——土埃にまみれ、息も絶え絶えの様子に、その表情が一瞬痛ましげに歪む。


「あんたたちのおかげだ。本当に助かった。……それにしても随分と無理をしたな」

「いえ、無事で良かったです」


 すずなはそう答えるだけで、声を保つのがやっとだった。ダインは深く頭を下げた。


「この恩は絶対忘れない」


 周囲の冒険者たちからも次々と感謝の言葉が寄せられた。すずなはその温かい輪の中で、体の芯からせり上がってくる疲労と、この救出劇の重みを同時に噛みしめていた。


 すずなは心春をそっと地面に座らせた。自分自身も、その場に座り込んでしまいたい衝動を必死に堪える。ようやく、この長い救出劇に一区切りがついた。それでも、まだWithering Roseの試練が完全に終わったわけではない。すずなは震える指先で、自分の手の甲をそっと確認した。


 心春を座らせたあと、二人の手の甲の紋章が再び疼いた。


「あ……」


 すずなと紬は思わず顔を見合わせた。それぞれ自分の手の甲を確認する。残り一枚だった薔薇の花びらが、ふわりと輝きを増した。


 一枚、また一枚と光の粒子が宿るように、花びらが蘇っていく。あっという間に薔薇は元の十二枚の姿を取り戻し、淡く光を放った直後、その光は花びらが散るように静かに消えていった。


 **Withering Rose(ウィザリング・ローズ)を達成しました**


「これって……」


 すずなが震える声でそう呟いた。全身から力が抜けていくのが、その声だけで分かった。


 すずなはその表示をじっと見つめた。薔薇が消える前に一度、満開に戻る。まるでこの試練が最後に称えてくれているような、そんな光景だった。


「終わったんですね」

「はい……本当に」


 すずなは深く息を吐いた。緊張が体から抜けていくのが分かった。同時に、これまで気力だけで押し殺してきた疲労が、堰を切ったように全身へ広がっていく。立っているのがやっとだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。すずなたちなら、こんな時きっと「支えてくれる人がいるから頑張れる」と言うはず。


この物語も、読んでくださる皆さんに支えられています。「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけたら、ブックマークや評価という"応援魔法"を、ぜひ授けてください。


よろしくお願いいたします。

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