↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結保証】おとぎ話の試練を全部クリアしたら無自覚最強の美女になっていました。~明日仕事なのに、独占欲の強い後輩女子に帰れない異世界へ連れて行かれました~  作者: ごまだんご
第六章 もう一人の異世界人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/254

第63話 心春

 一体、どれくらいの時間が経ったのだろう。


 遺跡調査の依頼を受け、調査は順調に進んでいた。……はずだった。


 今回はギルドから依頼を受け、遺跡調査のためのパーティーの応援要員として参加している。かなり奥深い位置まで行くことになったため時間はかかったが、依頼された全ての調査を無事に終えることができた。あとは戻るだけだった。スカウトとして安全なルートを確保しながら慎重に進む。


 私がスカウトとして先行し、少し離れた後ろを三人のメンバーが歩いてくる。最後の登り階段まであと少しという所で、メンバーの一人がその安堵感と疲労から段差に躓き、壁に手を触れてしまった。


 途端に周囲の壁全体が紫色の光を放ち、視界が紫色に染まる。息を吸い込む間もなく、体が浮くような感覚に襲われた。


 気がつくと私は広間のような大きな部屋の隅に、一人で立っていた。


「他のメンバーは……?」


 慌てて見渡すが、部屋には誰の存在も感じることはなかった。声を上げても壁に反響するだけで、返ってくるのは自分の声だけだ。


 三人がどうなったのか今は分からない。別の場所に転移させられたのか、離れた場所にいた私だけが飛ばされたのか。手のひらにじわりと汗が滲む。


 広間を慎重に調べるが、何の反応もなかった。部屋の四方にはそれぞれ扉がある。探ってみても、扉を出てすぐの場所には何もいないようだが、少し離れた先には魔物らしき動きを感じ取った。


 幸い、スカウトの能力のおかげで魔物たちを躱しながら迷宮を進むが、しばらくすると扉に突き当たる。慎重に扉をくぐると、最初の部屋と全く同じ景色が現れた。


「同じ……部屋?」


 背筋を冷たいものが這い上がった。私は日本にいた時に少し遊んだことのある、ロールプレイングゲームのことを思い出した。


「これってつまり、正解のルートを探さないと出られないってこと……」


 思わず声が漏れた。絶望が広がる。四つの扉の先にはまた四つの扉が続く。その先にもまた四つの扉。数えることさえ馬鹿らしくなるほどの分岐が、延々と先に続いていた。


 更に廊下には時々魔物が現れる。スカウトの能力で敵を避けながら進むが、分岐の繰り返しで疲労は極限まで溜まっていく。息を切らしながら壁に印をつけ、その後も石を置きながらルートを確認する。どうやら四階層くらいの構造になっているようだ。


 すでに百回以上は最初の部屋に戻されている。もう限界に近い。視界の端がちらつき、足元がおぼつかなくなってきていた。


「誰か……」


 声を出す気力すら、もうあまり残っていなかった。日本を離れて二年。異世界で一人生きてきた。それでも今回だけは流石に無理かもしれない。壁にもたれ、ずるずると座り込む。手の平を見つめると、指先が細かく震えていた。水も食料も、そろそろ底をつく。


「……お父さん」


 不意に頭に浮かんだのは、遠い日本にいる父の顔だった。連絡もせず二年も放っておいてしまった。あの日交わした最後の言葉すら、今はもう正確に思い出せない。もしこのまま、ここで力尽きたら。父は私がどこでどうなったのかも知らないまま、一人取り残されることになる。


「そんなの、駄目」


 喉の奥から絞り出すように、その言葉だけがこぼれた。私は力の入らない足に何とか力を込め、もう一度立ち上がった。膝が笑い、壁に手をついてようやく体を支える。それでも視線だけは、まだ前を向いていた。


「まだ、諦めない」


 その時だった。


 遠くの通路の方から、複数の足音が聞こえてきた。


 私は息を止め、その音に全神経を集中させた。魔物か、それとも――。柄を握る手のひらに力がこもる。闇の奥をじっと見つめた。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


すずなたちの物語を、少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。皆さんに読んでいただけることが、この物語を書き続ける力になっています。

もしよろしければ、ブックマークや評価もいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。