↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おとぎ話の試練を全部クリアしたら無自覚最強の美少女になっていました。~明日仕事なのに、独占欲の強い後輩女子に帰れない異世界へ連れて行かれました~  作者: ごまだんご
第五章 新しい日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/63

第48話 噂

クラリスから、王都の伯爵家の領地までの護衛依頼を紹介されたすずなと紬は、これを引き受けた。王都までの道中、宿場町での一泊を経て、二人は無事に王都へと到着した。

 王都の伯爵邸に到着すると、依頼主の伯爵が家族とともに、出迎えてくれた。


「よく来てくれた。クラリス嬢からの紹介とあらば、安心して任せられる」

「よろしくお願いいたします」


 伯爵の隣には、二人の令嬢が並んで立っていた。


「娘たちだ。姉のセレスと、妹のリナだ」

「初めまして、セレスです」

「リナです、よろしくお願いします」


 二人は、それぞれ丁寧に頭を下げた。それでも、その視線はどこかすずなに釘付けになっていた。


「あの、失礼ですが」


 セレスが、少し頬を染めながら口を開いた。


「もしかして、お姉様と呼ばれている、すずな様でいらっしゃいますか」

「え、私の事、ご存知なんですか」


 すずなは、驚いた様子でそう尋ねた。


「はい。クラリス様から、少しお話を伺っておりまして」

「そうだったんですね」


 すずなが、そう答えると姉妹は顔を見合わせて、少し嬉しそうに微笑んだ。


 準備を整え、翌朝一行はいよいよ領地へ向けて、馬車の旅を始めることになった。伯爵家からは、専属の護衛も、同行することになった。セレスとリナには、それぞれ一人ずつ専属の女性護衛が付き、伯爵家全体の護衛も四人。すずなと紬を合わせると一行は合計で八人の護衛団となっていた。


「よろしくお願いします」

「こちらこそ。腕利きのお二人と一緒とは心強い」


 護衛隊長らしき男が、そう言って握手を求めてきた。すずなは丁寧にその手を握り返した。

 道中、セレスとリナは少しずつ、すずなや紬と、打ち解けていった。


「すずな様は、剣も魔法も両方使えるんですね」


 セレスが感心した様子で言った。


「はい、最近、少しずつ魔法の方も練習してます」

「わたくしも、剣の稽古しているんです。今度、見ていただけますか」


 リナが、目を輝かせながらそう頼んだ。


「はい、もちろんです」


 道中三日目、街道を外れた区間で、一行は狼の魔物の群れに襲われた。


「魔獣です!」


 護衛隊長の声が響き渡る。すずなと紬はすぐに、馬車の周りへと展開した。


「紬さん、令嬢たちを」

「はい、お任せください」


 すずなが前衛で狼を斬り伏せていく。伯爵家の護衛たちも、それぞれの持ち場で応戦していた。


「先輩、こっちも片付きました」


 紬の声に、すずなは頷いた。数分ほどの激しい戦闘の後、狼の群れは全て退けられた。


「見事な腕前だ」


 護衛隊長が感心したように、そう言った。


 基本的には、街を経由しながら宿を取る旅程だったが、一日だけ街のない区間を通るため、野営をすることとなった。

 夜、焚き火を囲みながら、すずなは鞄から、日本のお菓子を取り出した。


「皆さん良かったら」


 すずなが護衛たちに細長い個包装のお菓子を、一本ずつ配った。ショートブレッドだった。


「これは……」


 護衛隊長が、一口かじると目を見開いた。


「美味いな、これは。ドライフルーツが入っているのか」

「はい。栄養もしっかり摂れるので。旅の携行食に良いんです」

「異国の食べ物とは、思えないほど洗練されているな」


 他の護衛たちも、次々とそのお菓子を頬張り、感心した様子を見せていた。セレスとリナだけでなく伯爵も興味深そうにそれを口にしていた。


「本当ですね、美味しいです」

「先輩、こういうの、いつも持ち歩いてるんですか」


 紬がそう尋ねると、すずなは少し照れくさそうに頷いた。


「非常食として便利なので」


 焚き火を囲んだ夜は、そうして和やかな雰囲気のまま更けていった。


 さらに数日経った頃、一行は、ようやく伯爵の領地に到着した。王都とはまた違った、のどかな雰囲気の街だった。


「ここが私たちの領地だ。長期間に渡る護衛、ご苦労だった」


 伯爵がそう労いの言葉をかけた。


 すずなと紬は、伯爵一家を屋敷まで送り届け、依頼の完了を領地のギルドへと報告しに向かった。

 ギルドの受付で依頼完了の手続きを済ませていると、受付嬢が、ふと思い出したように口を開いた。


「そういえば、お二人は王都近くの冒険者ですよね」

「はい、王都から1日くらいの距離ですね」

「実は、少し前にも似たような雰囲気の方が、いらっしゃったんです」


 その言葉に、すずなは少し興味を引かれた。


「似たような、雰囲気ですか」

「はい。言葉に少し独特の訛りがあって。もしかしたら、お二人と同じように異世界の方だったのかもしれません」

「異世界の方が他にも……」


 すずなと紬は、思わず顔を見合わせた。


「その方、今もこの街にいらっしゃるんでしょうか」


 紬が、身を乗り出して尋ねた。


「いえ、もう随分前に旅立たれたようです。詳しい事までは分からないんですが」


 受付嬢は、そう言いながら少し記憶を辿るように、首を傾げた。


「確か、お名前は……同じパーティーの方からは中村さん、と呼ばれていた気がします」

「中村……」


 すずなは、その名前口の中で繰り返した。


「知り合いの方、ですか」


 紬がそう尋ねると、すずなは首を横に振った。


「いえ、聞いたことのない名前です。でも間違いなく日本人ですよね」

「そう、みたいですね」


 すずなは、その話を聞きながら心のどこかに、小さいが確かな気配を感じていた。自分たち以外にも、この世界に迷い込んだ異世界の方がいる。それ誰なのか今はまだ分からない。それでも、いつかまた、その存在に出会う日が来るような、そんな予感がしていた。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけたら、ブックマークや評価という"応援魔法"を、ぜひ授けてください。


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。