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第39話 半年の積み重ね

 あれから様々な依頼をこなしながら、二人は現実と異世界、二つの生活を半年ほど続けていた。護衛任務、討伐任務、時には簡単な調査依頼。少しずつその積み重ねが確かな実績として形になっていた。

 その日も魔獣の討伐依頼を終え、二人はギルドへと戻ってきていた。


「今回も無事に終わりましたね」

「はい。もうこの辺りの魔獣なら危なげなく戦えるようになりました」


 受付カウンターで報告を済ませると、受付嬢が書類を確認しながら目を輝かせた。


「すずな様、貢献度が溜まりましたのでランクアップです」


 受付嬢はいつものように、すずなの両手をしっかりと握った。


「さすがすずな様ですね。今回の依頼達成でスクエアに昇格です」

「スクエア、ですか」

「はい素晴らしいですわ。よろしければ本日昇格記念にお食事会でもいかがでしょう」


 受付嬢はそう言いながら紬の方へちらりと勝ち誇ったような視線を送った。


「私は?」


 紬がすかさず身を乗り出した。


「私は昇格してないんですか」


 受付嬢は少し戸惑った様子で書類をめくった。


「あ……してるみたいです。ペンタゴンですね」

「なんなんですかー!」


 紬の声がギルドの中に響いた。すずなはその様子に思わず笑ってしまった。


「紬さんも、ちゃんと昇格してますよ」

「そういう問題じゃないんです。なんで、いつも私、後回しにされるんですか」

「気のせいだと思いますけど」

「絶対、気のせいじゃないです」


 その様子を受付嬢は素知らぬ顔で、次の書類を準備していた。


 半年前と比べると二人のバッジも、確かにその重みを増していた。スクエアの四角、ペンタゴンの五角形。それぞれの形が、これまで積み重ねてきた時間を静かに物語っている。


「先輩、私たち結構、来ましたね」

「はい。最初はサークルとダブルサークルだったのに」


 すずなは自分のバッジを指先でなぞった。あの頃はまさか、こんなに長くこの生活が続くとは思ってもいなかった。


「せっかくランクも上がったことですし。レベルとかステータスも見てみましょうか」

「そうですね。しばらく確認してませんでした」


 二人は水晶の魔道具の前に移動した。すずなが手をかざす。


 **楠すずな レベル20**

 体力:B-

 腕力:C+

 魔力:B

 俊敏:B

 器用:B+

 加護

 Fable(フェイブル) Unbound(アンバウンド)

 - Moon(ムーン) Return(リターン)


「レベル20……こんなに上がってたんですね」


 すずなはその数字をじっと見つめた。魔力の項目がBまで伸びている。あの試練の夜以来、少しずつ魔法の感覚も掴めてきていた。


「先輩、腕力より魔力の方が伸びてますね」

「はい。最近、剣より魔法の方が、しっくりくる気がしてました」


 続けて紬が自分のステータスをかざした。


 **雨宮紬 レベル21**

 体力:B-

 腕力:A-

 魔力:C

 俊敏:A-

 器用:B+

 加護

 Lunar Sightルナー・サイト


「私、レベル先輩より少し上ですね」


 紬が少し得意げに言った。


「腕力も俊敏も、Aマイナスまで来てます」

「本当ですね。すごいです紬さん」

「地道に頑張ってきましたから」


 紬は自分のステータスを満足そうに見つめた。半年前Dばかりだった項目が、今では見違えるほどの数字に変わっている。


「私たち本当に強くなりましたね」

「はい」


 すずなは改めて自分たちの積み重ねてきた時間の重さを実感していた。ランクだけでなくレベルも加護も確かな成長を示している。

 それでも心の奥には、まだ答えの出ていない問いが静かに残り続けていた。


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