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第4話 貢献度とお節介な受付嬢

 ギルドでの登録は、思ったより呆気なく終わった。


「初めまして、ようこそ冒険者ギルドへ」


 受付嬢がにこやかにすずなを出迎えた。すずなは丁寧に頭を下げる。


「楠すずなと申します。よろしくお願いします」

「ご丁寧にどうも。それでは制度のご説明をしますね」


 受付嬢はカウンター越しに手を伸ばし、すずなの手を両手でそっと包み込むように握った。


「登録していただく冒険者にはランクというものが存在します。ランクが上がるほど高難度の依頼を受けられるようになるとともに、1回の依頼における貢献度と報酬額もあがっていきます」

「初めての方は、一番下のサークルランクからのスタートとなります。その後、ダブルサークル、トライアングルと上がっていきます。サークルの方は五回クリアすると、ダブルサークルに昇格します」

「五回ですか」

「はい。それから少しずつ昇格の条件が厳しくなっていくんですが……トライアングルランクになると、ようやく一人前の冒険者として認められます。一人前と呼ばれるには、個人のレベルというものがあり、両方が揃って初めて――」


 受付嬢はすずなの手を握ったまま丁寧にゆっくりと説明を続けた。すずなはその手の温かさに少し戸惑いながらも真剣に耳を傾けていた。


「はい、なるほど。ありがとうございます。」

「いえいえ、何かあればいつでも聞いてくださいね」


 隣でその一部始終を見ていた紬が、目を見開いていた。


「え、私にはそんな説明なかったですよね」

「あら。貴女には書類をお渡ししましたよ」

「書類だけって適当すぎませんか?」


 紬はカウンターに身を乗り出した。


「あと、手!先輩の手、勝手に触らないでください!」


 紬が受付嬢の手からすずなの手を奪い返すように引き寄せた。すずなは突然のことに目を丸くする。


「紬さんあの説明の途中で……」

「いいんです。続きは私が説明します」


 受付嬢は慌てる様子もなく、むしろ面白そうに二人のやり取りを眺めていた。


「あらあら。仲がよろしいんですね」

「よくないです!違います!」


 紬の抗議はまったく説得力を持たなかった。すずなはまだ状況が飲み込めず、紬に握られたままの手を見下ろしている。


「先輩」

「はい」

「先輩、もしかして魅了とか、そういう能力あるんじゃないですか」

「魅了……ですか?」

「受付嬢にまで手握られるとか、なんかそういうのあります絶対」

「そんな能力、聞いたことないですけど……」


 すずなは心底不思議そうに首を傾げた。それがまた紬の胸をざわつかせる。


「そこがもう怪しいんですよ」


 ギルドの喧騒の中、二人のやり取りはしばらく続いた。受付嬢はその様子を微笑ましそうに見守っていた。

 登録を終えた後、二人はステータスを確認できる水晶の魔道具の前に移動した。紬が慣れた手つきですずなの手をその水晶かざす。


楠すずな レベル1

体力:F

腕力:F

魔力:E

俊敏:E

器用:F


「レベル1……ですよね、私」

「はい。まあ普通です」


紬はそう言いながら隣の水晶に触れ、自分のステータスも表示した。


雨宮紬 レベル3

体力:E

腕力:D

魔力:E

俊敏:D

器用:E


「私はちょっとだけ、先輩してます」


 ギルドの食堂で串焼きを食べていたエルフィが、興味深そうにやってきた。すずなのステータスを覗き込んでいたエルフィが光る文字をじっと見つめるが、表情はいつも通り動かない。それでも何かに気づいたような沈黙だった。


「お前」

「はい」

「面白いやつだな」


 その言葉に、すずなは首を傾げた。何が面白いのか見当もつかない。


「あの、何か変なところが」

「いや。何でもない」


 エルフィはそれ以上語らなかった。ただ視線だけは、しばらくすずなのステータスから離れなかった。

 それを隣で見ていた紬が、慌てて表示されている自分のステータスをエルフィに見てもらうように言った。


「え、私は?私のはどうですか?」

「お前は」

「はい!」

「まぁ、頑張れ」

「それだけですか!?」


 紬が思わず声を上げる。エルフィは動じることなく続けた。


「努力すれば報われる。体力と素早さは人並み以上」

「人並み以上って、褒めてます?けなしてます?」

「褒めてる」


 紬は大きくため息をついた。


「先輩は面白いやつで、私は頑張れって、なんなんですかー!」


 その声がギルドの中に響いて、通りすがりの冒険者たちが何事かとこちらを見た。すずなは恐縮したように小さく頭を下げる。


「あの紬さん、声、少し」

「先輩まで、敵に回らないでください!」


 エルフィはそんな二人のやり取りを眺めながら、食堂のテーブルに置いたままの串焼きに視線を戻していた。


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