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【完結保証】おとぎ話の試練を全部クリアしたら無自覚最強の美女になっていました。~明日仕事なのに、独占欲の強い後輩女子に帰れない異世界へ連れて行かれました~  作者: ごまだんご
第八章 鐘の音が鳴る前に

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第103話 猶予

 報告を終えると、エルフィたちはすぐにまた席を立った。


「今から封印の強化に向かう」


 そう言い残し、三人は戻ってきたのも束の間、すぐに現地へ引き返していった。すずなたちは部屋に残され、ただ帰りを待つしかない。作業が終わったのは、日付が変わろうかという頃だった。

 扉が開き、三人が戻ってくる。その顔には隠しきれない疲労が刻まれていた。装束のあちこちが汚れ、髪も乱れている。それでも先ほどまでの張り詰めた様子は、いくらか和らいで見えた。


「これで当面は持つはずだ」


 エルフィがそう告げると、部屋の空気がわずかに軽くなる。すずなは思わず詰めていた息を吐き出した。


「封印は強化できたんですか」


 すずなは安堵しながらも、念を押すように尋ねた。


「三人で術式を上書きした。即座に崩壊する危険はひとまず遠のいた」


 その説明を聞き、紬が肩の力を抜いた。心春も隣で胸を撫で下ろす。長く張り詰めていたものが、ようやく解けたような表情だった。


 けれどその安堵も、長くは続かなかった。


「ただし」


 その一言だけで、場が引き締まる。エルフィの表情には、拭いきれない不安が残っていた。


「あくまで時間を稼いだだけだ。根本的な解決にはなっていない」

「じゃあ、また同じことが起きるかもしれないってことですか」


 すずなの声に緊張が戻ってくる。


「その可能性は、ある。封印はいずれ限界を迎える。それがいつになるかは、私にもまだ読み切れない。南のギルドには、ある程度強力なパーティーをしばらく留まらせておく必要がある」


 万が一の時に即座に対応できるように。その言葉を聞きながら、すずなは今夜一晩で片付く話ではないのだと悟った。


「こちらでも常駐する部隊を編成しておきます」


 メイルが深く頷きながらそう答えた。もう頭の中で人選を巡らせているような、真剣な表情だった。


「それと」


 エルフィがすずなたちの方を向く。その顔に、今度は別の真剣さが浮かんでいた。


「お前たちには、もっと強くなってもらう必要がある」

「強く、ですか」


 すずなが戸惑いながら聞き返す。


「今の実力でも十分すぎるほどだ。だが、これから向き合う相手は、それでも足りないかもしれない」


 部屋の空気がまた重くなる。今日一日で、何度この重さを味わっただろう。すずなはそんなことをぼんやりと考えていた。


「すずな、お前はまずレインから時の理を学べ」

「時の理ですか」

「Fable Unboundの力だけでは、いずれ限界が来る。時空の理を理解しておくことは無駄にはならない」


 レインが片眼鏡を軽く押し上げる。疲れているはずなのにその目には、既に授業の内容を考え始めているような生き生きとした光が宿っていた。


「基礎から教えよう。少々長くなるかもしれないが」


 その言葉にすずなは苦笑いを浮かべる。その説明の長さは、これまで何度も体験してきた。今からそれが本格的な授業として続くのかと思うと、気が遠くなる思いもある。


「それが終わったら、私が各属性の魔法を教える」


 エルフィがそう続けた。


「加護だけでは足りない。各属性の魔法も最低限使えるようになってもらう」


 すずなは黙ってその言葉を受け止めた。これまで加護頼みだった自分の戦い方を、根本から見直す必要があるのかもしれない。


「紬」


 エルフィの視線が次に紬へと向く。


「はい」

「お前には、クレアを呼ぶ」

「クレアさん、ですか」


 聞き慣れない名前に紬が首を傾げる。


「遠距離狙撃の達人だ。二つ名は、闇影の射手」

「射手……」

「お前のLunar Sightとの相性は、悪くないはずだ」


 紬の目にかすかな期待が灯る。夜目というこれまでどこか地味に感じていた加護が、これから本格的に鍛えられていく。そう思うと、鼓動が少し速くなった。


 最後にエルフィの視線が、心春へと向いた。


「心春」

「はい」

「お前は、シェイラに学べ」

「シェイラさんに、ですか」


 心春が少し驚いたように聞き返した。


「精霊魔法を、最低限使えるようになってもらう」


 エルフィの言葉を継ぐように、シェイラが口を開いた。緑がかった長い髪が、ランプの灯りにかすかに揺れている。


「私ほどは使えないでしょう。ですが、中級精霊ほどの加護は得られるはずです」

「私にそんなことが……」


 心春の声に戸惑いが滲む。精霊契約者は、後天的に習得できないと聞いていたはずだった。


「あなたなら……」


 シェイラはそこで一度言葉を止めた。探るように、心春の顔をじっと見つめる。


 その視線の奥に、特別な意味が込められているような気がして、心春は思わず息を呑んだ。部屋の中の誰も、その間の意味には気づいていないようだった。


「……できるはずです」


 結局シェイラは、それ以上何も語らなかった。それでもあの間に潜んでいた何かが、心春の胸に小さな引っかかりを残していた。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。


すずなたちの物語を、少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。皆さんに読んでいただけることが、この物語を書き続ける力になっています。

もしよろしければ、ブックマークや評価もいただけると嬉しいです。

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