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なぜかFランクの運び屋魔導士 ~大切なものをオッサンが届けます!~  作者: さとうはるか


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3/8

3 依頼の背景


 夕食が終わると、ルーファは感心したように口にした。


「ロジさんて……生活力高いですねえ。結婚はされてるんですか?」

「いいや。俺みたいなオッサンには、ちょっと縁のない話かな」

「え! ロジさん、おっさんて感じじゃないですよぉ。それに……凄く…いいと思います」


 ルーファはちょっと恥ずかしそうに言った。


「そう? 嬉しいね、お世辞でもさ。――じゃあ、俺はちょっと野営用の仕掛けを点検してくるから、ゆっくりしてて」

「はい……」


 俺は外に出た。すっかり夜になっていて、星が瞬いている。


「ようフレア、隣の彼はどうだい?」


 俺は馬小屋のフレアに声をかけた。

 フレアが顔を寄せてくるので、撫でてやる。


「そうか。馬も飼い主に似て、いい奴か。よかったな。……あの子の荷物、確実に届けてやろうな」

「フルルル――」


 俺はハウスに仕掛けた防御装置をチェックして、ハウスに戻る。

 と、ルーファはクッションにもたれるように、うつらうつらしていた。


「おっと、ルーファ、お疲れだったんだろうな。気も張ってただろうし――ルーファ、ちょっとだけ起きてくれ」

「あ! わたし――寝てました…よね?」


 ルーファが恥ずかしそうに、うつむく。


「何にしろ明日は早いから、もう寝よう。ルーファはそっちのベッドを使って」

「……いいんですか?」

「一応、そのためのベッドだからね。あ、安心して。俺は依頼人に手出したりしない主義なんで。それじゃあ、おやすみ」


 俺はそう言うと、もう一つのベッドに入りこむ。

 既にベッドに潜りこんだルーファから、声がした。


「ロジさん、おやすみなさい」


 そう言った後に、すぐに寝息が聞こえてきた。

 やっぱり、疲れてたんだな……。ゆっくり、おやすみ。


 そして翌朝、俺たちは早めに出立した。

 このペースなら、予定通り今日中にミカナ村に到着できる。

 そう思いながら馬を進めていた俺たちに、突然、巨大な火炎球が降ってきた。


「――ルーファ、危ない!」


 俺は降ってきた火炎球に掌を向ける。


「圧縮!」


 火炎球が圧縮されて1㎤のキューブに変換される。キューブは自然に俺の元へと飛んでくる。

 だが、火炎球はまだ次々と降りかかってきていた。


「圧縮、圧縮、圧縮、圧縮――」


 俺はそれを片っ端から、圧縮しまくる。何処かに魔導士が潜んでいる。

 飛んでくる火炎球の弾道を逆算すると――あの辺りの茂みか。


 俺は空間銃を抜いて、特殊ホルスターを装着して一発撃った。


「火炎弾!」


 その茂みに当たる直前、弾丸は巨大な5m×5mの火炎弾へと変化する。


 茂みに着弾し、火炎球が爆散する。

 これで――どうだ? と思ってると、俺の後方から気配を感じた。


「圧縮!」


 振り返って、気配を圧縮する。それは飛来して来た矢だった。

 それは斜め後ろの崖の上から射られたものだと思った。


「こっちにもいたのか」


 そっちにも火炎弾をお見舞いしてやる。

 崖の上で炎が立ちのぼったが、どうやらそれで敵は退散したらしい。


「どうやら攻撃は止んだようだな――」

「ロジさん……ありがとうございます!」


 ルーファが頭を下げる。しかし俺は渋い顔をして言った。


「依頼の時は、対人間の危険がある、なんて話はしてなかったと思うが?」

「本当に申し訳ありません! ……けど、まさか――ここまでするなんて……」


 ルーファも恐怖と当惑の色を隠しきれてない。


「……ま、しょうがない。とりあえず村はあと少しだ。荷物を運んでしまおう」

「は、はい」


 やがて俺たちはミカナ村へと到着した。

 適当な処で荷馬車を戻し、馬で引いてきた体にする。


 ルーファが村に入ると、村人たちが駆け寄ってきた。


「ルーファ、おかえり! 荷物を――薬を持って帰れたんだね!?」

「うん。この中に積んでます。みんなで手分けして、患者の人たちに運んでください」

「わかった」


 村人たちはそう言うと木箱を取り出し、まず薬を持って各家へ走り出した。

 ルーファも薬を持って、一軒の家に入る。


「ベンゾさん、薬を持ってきましたよ」


 ルーファが声をかけながら入ると、その家の女が駆けてきた。


「あんた、ルーファが薬を持ってきてくれたよ。これで――死ななくて済むよ!」


 ルーファの差し出した薬を受け取ると、女は奥の部屋に寝かされている男にそれを飲ます。


「……やはり瘴気毒病かい?」


 俺は顔色や息の感じを見て、ルーファにそう言った。ルーファが頷く。


「はい。村の山奥に魔晶石鉱山があるんですが……魔晶石の鉱脈傍にはかなりの率で瘴石鉱脈もあるらしく、大勢の村人が瘴気毒にかかってしまうんです」

「しかし……マスクなんかの予防策と、早めの対策で重篤化することはないはずだが?」


 俺がそう疑問を口にした時、寝かされていた父親が、身体を起こした。

 母親が持ってきたたらいに、大量の血を吐く。


「うむ……けど、すっきりしたぞ。多分、これで大丈夫だ」

「あんた、一応、もう一本」


 もう一本薬を飲むが、もう血は吐かない。どうやら完治したようだった。


「ルーファ、ありがとう。お前さんは、村の救世主だよ」

「そんな――。ここにいるロジさんが、運んでくれなかったら、村まで薬を運ぶことはできませんでした」

「ありがとうございます、ロジさん」


 俺は軽く笑って言った。


「俺は頼まれた仕事をしただけだよ」


 その晩は、村をあげての騒ぎになった。

 集会所に村人が集まり、薬を持って帰ったルーファと俺を、盛大に称えよう――というパーティーらしい。


 村で獲れたという野菜や肉で出てきた料理は、どれも美味かった。酒もなかなかだ。病魔の危機が去り、村人の顔に明るい笑顔が輝いていた。


 ――こういう顔を見ると、この仕事も悪くない……そう思う。

 だが、俺にはどうにも気に入らないことがあった。


「ルーファ、道中で狙って来た連中は何者だ? あたりはついてるんだろう?」

「それは……」


 ルーファは言いよどんでいる。俺は別の言い方に質問を変えた。


「そもそもだが、街へ行くのに、危険な荒野を使わずとも、中間都市のチュゲンを抜ければよかったんじゃないのか? どうしてわざわざ危険な道を?」

「――それは、儂からお話ししましょう」


 そう言って口を開いたのは、この村の村長、ガレッドだった。


「実はその街道を通るとすると、高額な通行料を請求されるのです」

「通行料? そんなこと国はやってないだろ?」

「はい、請求してくるのは、あの辺一帯を根城にしてるギャング、ゴリス一家です」


 まあ、ある程度、予想はしていたが。


「で、そのゴリス一家の眼を盗んで、街に薬の買い付けにルーファ一人を向かわせたのかい?」

「村長を責めないでください。わたしから言い出したことなんです! わたし一人だけだったら、最悪、身体強化魔法で逃げ切れるので……」


 なるほど。


「実は通行料というのも、嫌がらせの一つにすぎません。奴らの狙いは魔晶石鉱山なんです」

「鉱山を自分たちのものにしたがってる、と。それを拒否したら、通行料を取るという嫌がらせを始めた」

「実は……確証のないことではありますが、村に瘴気毒病の患者が増えたのも、それ以降です」


 ……なんだって? 

 村長の言葉に、俺の中に静かな怒りがたぎってきた。


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