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アンデットだらけの2周目ダンジョンには治癒魔法が欠かせません!?~とある迷宮保安官と用心棒少女のダンジョン再攻略~  作者: 春街はる
アンデッドについて

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83.これから①

 ……え? 執行さん?


 津守さんと諸君の女性の会話を聞いて、私は少し驚く。

 執行さんが迷宮保安庁に来てるってこと?


 別に執行さんが保安庁を訪れるのはおかしなことではない。

 アンデッドの調査を手伝ってもらっているわけだから、これまでだって何度か来てもらったことはある。

 でも、今日はダンジョンの調査も、武器や連携の練習をする予定もない。

 そもそも私は執行さんが来るってことを知らなかった。


 てことは、津守さんとの用事かな。

 二者面談とか、そんなものかもしれない。


 執行さんとは東村山ダンジョンの一件以来会っていないから、会いたい気持ちもあるけど、二人のお話の邪魔になってはいけない。

 早いところお暇しておこう。


「で、では津守二等迷宮保安監殿、私はこれで」

「ん? いやいや、佐々貴君もまだ終わっていないよ」

「え? そうなんですか?」


 眉をひそめていると、ゆっくりとドアが開いた。


「失礼します」


 と緊張した面持ちの執行さんが入室してくる。

 いつも落ち着いていて大人びて見える執行さんも、流石に迷宮保安庁――それも二等迷宮保安監の執務室に入るとなると緊張するようだった。

 

 まぁ、当然か。

 私だって、津守さんの執務室に入るのは緊張する。

 部屋に入るのが緊張するというよりは、呼び出されたこと自体に緊張するわけだけど……。


 と、それは兎も角として。

 執行さんはダンジョンに入る時のジャケットにパンツといった格好をしていた。

 あれ? 今日ってやっぱりダンジョンに行く予定なんだろうか?

 

 じっと見ていたからか、執行さんも部屋に私もいることに気づいたらしい。

 視線が重なる。


「あ、佐々貴さん」

「こんにちは執行さん」

「はい、こんにちは」


 小さく会釈をしてくれた執行さん。

 入口の近くに立つ執行さんに対して、津守さんが声を掛ける。


「わざわざ来てくれて申し訳ないね、執行君」

「……いえ、全然構いません」

「ありがとう。では、佐々貴君の隣にかけてくれるかな?」

「はい」


 執行さんが私の隣に腰を下ろす。

 その執行さんがダンジョンへ赴く恰好をしていることについて、津守さんに尋ねてみる。


「あの、津守さん」

「ん?」

「今日って、ダンジョンに行く予定ってありましたっけ?」

「今のところはないね」


 ないんだ……。

 じゃあ、どうして?

 と思っていると、私の質問で察してくれたのか執行さんが説明をしてくれた。


「あ、これはその……制服以外だとどんな格好で来ればいいのか分からなかったので……」


 なるほど、そういうことね。

 実際のところは決まりはないので、別にTシャツにジーパンとかでもいいんだけど、流石に私服で来るわけにもいかなかったのだろう。

 大人だったらスーツとかフォーマルな感じにすればいいけど、執行さんは学生さん。

 でも今日は学校がお休みの日だから、制服を着るのもどうかと思って、悩んだ結果、ダンジョン用の服装にしたってことらしい。


 私のせいで執行さんは不安そうな表情を浮かべていた。


「変だったでしょうか……?」

「ううん、そんなことないよ。探索者の人たちはダンジョン用の服で来る人が多いから」

「そう、ですか」

「うん」


 私が頷くと、執行さんはほっとしたような顔になる。

 

 執行さんがどうしてダンジョン用の服装なのか、という疑問が解決したところで改めて津守さんに視線を戻す。

 津守さんは柔らかく微笑んだまま、口を開いた。


「今日は佐々貴君と執行君、二人の今後について話が合ってね」

「今後、ですか」

「あぁ」


 短く首肯して、津守さんが話し始める。


「まずは先日の東村山迷宮の調査とドラゴンゾンビアンデッドの討伐、それからこれまでの迷宮の調査も含めて、二人とも本当に苦労をかけたね。改めて、迷宮保安庁を代表して感謝する。ありがとう」

「いえいえ! 私は仕事の範疇ですし、それに執行さんがいてくれたからできたことですので」

「私も何も……。全部、佐々貴さんのおかげですから」

「いやいや、それはないって執行さん。執行さんがいなかったら、私ヤバかったから……」


 何度、執行さんに助けてもらったことか。

 それに一緒にいた相手が執行さんだったからこそ、できた作戦だってあるのだ。

 執行さん以外の人が一緒だったら、きっとこんなに上手く事態は進展していなかっただろう。


 私と執行さんのやり取りに、津守さんがふっと相好を崩す。

 

「私は二人のおかげだと思っているけどね」

「あ、そうですね」


 ちら、と執行さんを見遣る。

 執行さんも小さく頷いてくれた。

 譲り合っていても仕方ないし、これが一番いい。


「では、話を続けるけど」

「はい」

「これまではアンデッドに関して、迷宮保安庁のみで対応にあたる必要があったから佐々貴君と執行君に任せて来たわけだが……。今回、色々と研究が進んだこともあって、これからはある程度の依頼は探索者や事務所に任せることになった」

「そうなんですか」


 アンデッドの存在は公表すると言っていたから、その流れになるのは自然かもしれない。

 これまでも迷宮保安庁は討伐や調査などを探索者や探索者事務所に頼むことはあったから、それらと同じ感じになるのだろう。


「……え、ですが。そうなると私たちはどうなるのでしょうか」

「今日はそれを聞こうと思ってね」


 そう言って、津守さんは私と執行さんを順々に見た。

 改めて口を開く。


「先日の東村山迷宮での一件で、アンデッドの調査や討伐は一区切りがついたと言っていい。だから、今後もアンデッドの調査を続けるかどうか、佐々貴君と執行君、それぞれが決めてほしい」


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