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アンデットだらけの2周目ダンジョンには治癒魔法が欠かせません!?~とある迷宮保安官と用心棒少女のダンジョン再攻略~  作者: 春街はる
アンデッドについて

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82/86

82.アンデッドについて②

「――アンデッドの正体と出現する理由が分かった」

「っ!」


 津守さんの言葉に私は目を大きくさせた。

 姉の治療に加えて、アンデッドの根本に関することまで研究は進展していたなんて。


 ……ん?

 でも、どうしてそれが悪い知らせになるんだろう?

 そりゃあ、アンデッドというか魔物が出現すること自体が、私たちにとっては良い話ではない。だけど、今まで全くと言っていいほど分からなかったことが分かったのなら、それは良いことではないのだろうか?


 首をかしげる私に、津守さんが説明をしてくれる。

 

「結論から言えば、アンデッドはそのダンジョンに存在していた元魔物だ」

「元、魔物……?」

「ダンジョン内で倒された魔物が『黒い核』を手に入れて蘇った姿。それがアンデッドの正体であると研究所は判断した」

「ちょ、ちょっと待ってください」


 津守さんはすらすらと話していくけど、私の頭の中はこんがらがっていた。

 

「探索者たちに一度倒された魔物がどうやって『黒い核』を手に入れるんですか?」

「手に入れるという言い方は語弊があったね。より正確に言うなら、彼らが元から持っている核が変化した、と言うべきかもしれない」

「ですが、倒された魔物に核は残らないのでは」

「魔物を倒すことと核を破壊すること。この2つは絶対の条件ではないだろう?」

「っ!」


 津守さんに指摘されて、はっとする。

 その通りだった。

 私はアンデッドの相手ばかりをしていたから、倒すためには絶対に核を消滅させなければいけなかった。

 でも、普通の魔物は違う。

 首を刎ねれば死ぬし、血を大量に失っても死ぬ。普通の生き物と変わらない。核を破壊しなくても倒すことはできるのだった。


「倒された魔物の中に僅かにでも残っていた核、これに迷宮が何らかのエネルギーを注ぎ込むことで『黒い核』に変化してアンデッドが誕生する……というわけだね」


 魔物は核を破壊すれば、その姿は灰のようになって霧散して消える。

 でも、それ以外の死因で倒した場合はダンジョン内に身体は残る。そして、その身体には多少なりとも核も残っている。

 それがアンデッドの元になったということらしい。


 ……ということは、だ。

 核を壊さずに倒した魔物がアンデッドになったということは、だ。


「あの、津守さん」

「うん?」

「それって、つまりは探索者たちがきちんと魔物にトドメを刺していなかったから、アンデッドが生まれたということでしょうか?」

「……否定ではできないね」


 そうは言ったものの、津守さんは「だけど」と言葉を続ける。


「彼らを責めるわけにはいかない。当時は核を壊さなければ将来的にアンデッドになるなんて、探索者も私たち迷宮保安庁も、誰も分からなかったんだから」

「それは、そうですね……」


 ダンジョンが出現したばかりの頃は、兎に角、攻略と調査が急がれていた時代だ。

 魔物を倒すとき、核を壊せば一撃で消滅させられることは当時でも分かっていたはず。でも、わざわざ核を狙わなくても倒せるのであれば頭や首を狙う探索者の方が多かったはずだ。そのほうが効率がいいのだから当然だ。

 そして、迷宮保安庁もそれを良しとしていた。

 

 迷宮保安庁が「核を壊してください」と言っていたのならまだしも、何も言っていなかったのだから、探索者を責めることはできなかった。

 どちらかというと、ダンジョンを管轄する立場にありながら把握できていなかった迷宮保安庁のほうが責められるかもしれない。もちろん、アンデッドについては今になってようやく分かったことなので、こちらも責められないけど……。


「だが、これからは違う。探索者登録をしている全ての探索者をはじめ、登録施設や探究者及び配信者事務所、各迷宮の管理事務所に対して、魔物を倒す際はきちんと核を破壊するよう伝えるつもりだ」

「アンデッドのことは探索者には」

「近いうちに公表する予定だよ」

「あ、するんですね」

「ただし、『治癒魔法でしか倒せない新種の魔物が出た』という言い方になるみたいだけどね」

「経緯は説明しないってことですか?」

 

 新種の魔物であることも間違いではないと思う。

 でも、新しく出現したというよりは過去のミスが原因で出現したのがアンデッドだ。

 その言い方だと微妙にニュアンスが違うような気がする。


「アンデッド出現の経緯については、折を見て発表するそうだ」

「折を見て……」

「過去の探索者たちが自分を責めないように、それから誹謗中傷に合わないようにするためだろうね。それにようやく分かってきたとはいってもアンデッドについては不明な点も多い。もう少し研究や分析が進んでから、という判断だろう」

「なるほど……」

 

 たしかに、それはそうかもしれない。

 迷宮保安庁も色々と考えているんだなぁ、と思っていると。

 こんこん、とドアがノックされた。

 津守さんの返事で顔を見せたのは職員の女性。


「――津守二等迷宮保安監殿。執行さんがお越しです」

「そうか。通してくれ」

「はい」


 ……え? 執行さん?


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