76.ドラゴンゾンビアンデッド⑮
まずは久遠さんが先行して、再びドラゴンゾンビアンデッドへと向かっていく。
その後ろに執行さんも続いた。
二人の接近に、ドラゴンゾンビアンデッドも気づいたらしい。
執行さんが頭を切断したっていうのに、こちらの動きが見えているみたいだ。見えているっていうか、感じ取っているって言ったほうがいいかもしれないけど。
とにかく、このボロボロの姿で相変わらず動いているのは、冷静に考えると不気味なものだった。
鞭のようにしなったドラゴンゾンビアンデッドの尻尾攻撃が、真っすぐ久遠さんに向かってくる。
久遠さんはその攻撃を冷静に躱した。
その後も、幾度となく繰り出されるドラゴンゾンビアンデッドの尻尾による攻撃を久遠さんは躱し続ける。
例えとして合っているか分からないけど、その様子は大縄跳びに入るタイミングを伺っているようにも見えた。
……どうやって受け止めるんだろう?
任せておけって言っていたけど、やっぱり心配だ。
尻尾を直接受け止めるんじゃなくて、胴体の方を攻撃した方がいいんじゃないだろうか? 胴体を攻撃して隙を作って、その間に執行さんが尻尾を斬ったほうが危険も少ない気がする。
そう提言しようかと考えていた、その時だった。
真上から叩きつけられた尻尾を久遠さんは当たらないギリギリの距離で回避した。
そして、地面に衝突したドラゴンゾンビアンデッドの尻尾に対して、一歩踏み込んで肉薄すると、
「喰らえッ!」
剣を振り下ろした。
振り下ろす直前にキラリと光って見えた一撃は、ドラゴンゾンビアンデッドの巨大な身体を何度か吹っ飛ばしたあの攻撃と同じに見える。
威力十分の攻撃で、ドラゴンゾンビアンデッドの尻尾は大きく弾かれた。
だけど。
これでも切断や千切るには至らない。
樹齢何千年という樹木のように太く大きな尻尾は、未だドラゴンゾンビアンデッドの身体に健在だった。
逆に、その弾かれた勢いを利用してドラゴンゾンビアンデッドが尻尾をしならせてきた。
これまでで一番の勢い、威力の尻尾攻撃が真横から久遠さんに迫ってくる。
真横から攻撃されたら、尻尾の大きさ的にジャンプしても躱せないし、屈んだとしても当たってしまうだろう。今から尻尾が届かない距離に逃げることも間に合わない。
チャンスのはずが一気にピンチになっていた。
久遠さんは、どうするつもりだろう。
速度も上がって威力も上がっているから、この攻撃をまともに喰らったらひとたまりもないはずだ。
でも、当の本人である久遠さんに焦った様子はなかった。
横から迫りくる尻尾をじっと見据えて、剣を構える。そして、久遠さんの剣が黄金色のオーラのようなものに包まれた。
「【勇者の剣:ブレイブ・ソード】!!!」
久遠さんが振るった剣と、ドラゴンゾンビアンデッドの尻尾攻撃が衝突する。
爆発が起こったような激しい衝撃音がして、衝突で生じた強い風が吹き抜けた。
思わず、風と砂煙を避けるために顔を逸らしてしまう。慌てて視線を前方に戻すと。
…………!
久遠さんが剣で受け止めるような形になって、尻尾の動きが止まっていた。
「執行ちゃん! 今だ!」
久遠さんの合図で執行さんが動き出す。
執行さんは尻尾の付け根付近に移動すると、鋭く刀を振るった。
美しい所作で一閃されたドラゴンゾンビアンデッドの尻尾は、まるで野菜が輪切りをされたみたいにスパッと切断される。大きな音を立てて地面に落下した。
それに目をくれることなく、執行さんは続けて後ろ足にも斬撃を加える。
バランスを崩したドラゴンゾンビアンデッドが地面に倒れ込んだ。
「佐々貴さん、お願いします!」
「うん!」
ここからは私の仕事だ。
私が治癒魔法を使いやすい状況になるよう、準備を整えてくれた二人に応えるためにも必ず一回でトドメを刺さないと。
気合を入れて、ドラゴンゾンビアンデッドへ駆け出す。
と、そのとき。
視界の端で、何やら異変を感じた。
視線を左へ向ける。そこにあるのは、執行さんが少し前に斬り落としたドラゴンゾンビアンデッドの頭。
小刻みに震えて、なんだか膨張しているように見えた。
「――っ!」
すぐに思い当たる。
一番最初に破壊した、背中にあった毒の制御器官が破裂をしたときと同じだった。




