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アンデットだらけの2周目ダンジョンには治癒魔法が欠かせません!?~とある迷宮保安官と用心棒少女のダンジョン再攻略~  作者: 春街はる
東村山ダンジョン

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75.ドラゴンゾンビアンデッド⑭

「さて、どうしたもんか……」


 目の前で上下左右、縦横無尽に暴れまわっているドラゴンゾンビアンデッドの尻尾を見て、久遠さんは思案をしている様子だった。

 その隣に、頭を切断した執行さんが戻ってくる。

 二人の後ろに、私もようやく合流した。


「二人とも、大丈夫ですか?」

「佐々貴さん」


 振り返った執行さんは、前方で大暴れしているドラゴンゾンビアンデッドの尻尾を一瞥してから私に言う。


「それが尻尾がこのありさまでして」

「……みたいだね」


 近くで見るとすごい迫力だ。

 当たるとか当たらないとか関係なく、大立ち回りをしていた。

 ドシンドシン、バシンバシンと鞭のように振り回されている。地面がすごく揺れているし、ダンジョンそのものが破壊されかねない。


 ……え、壊れないよね?

 ダンジョンの強度なんて考えたことがない。

 いや、きっと大丈夫。もっと大きな魔物が大暴れをしているダンジョンだってあるわけだし、ダンジョン内でのみ私たちが魔法を使えるようになる通り、ダンジョンには不思議な力が満ちている。


 兎にも角にも、これでは簡単に近づけない。

 遠距離魔法を使える人――例えば永遠子さんがいたら良かったんだけど、この場にはいないのだから考えても仕方ない。


 どうしようか、と考える。

 すると久遠さんが眉を寄せながら尋ねてきた。


「なぁ、佐々貴ちゃん」

「はい」

「執行ちゃんが首を刎ねたのに、なんでこのドラゴンゾンビはまだ動いてんだ?」


 久遠さんも疑問は最もだった。

 普通の動物と比較すると魔物は随分と特殊な生態をしている。

 とはいえ、そんな魔物だとしても首を刎ねられて動ける魔物なんて、ほとんどいない。

 久遠さんはたくさんの魔物を相手にしてきただろうから、よく分かっているはずだ。だからこその強い疑問なんだろう。

 

 じゃあ、どうして目の前のドラゴンゾンビアンデッドが動いているか。

 それは、そもそも生きていないからだ。

 既に死んでいるから首を刎ねられようが両前足を切断されようが、どれだけ壁に叩きつけられようが関係ない。アンデッドに関しては、身体の中央にある真っ黒い核を壊さない限りは何度でも復活して動き出す。


 ――と伝えれば説明は簡単なんだけど。

 これは現在、迷宮保安庁でしか知りえない情報だ。

 どうやって説明をしたものか……。


「頭は飾り……って言えばいいんでしょうか」

「飾り?」

「厳密に言えば違うと思うんですが本体じゃないというか、本質じゃないんです」

「治癒魔法じゃねぇと倒せないって言ってたな?」

「はい」

「それがこういうこと……っつー認識でいいか?」

「その認識で大丈夫です」

「分かった。いや、正直言うと全然分かってねぇが、実際に動き続けてるんだから、そういうことなんだろうな」


 苦笑しながら久遠さんが言う。

 迷宮保安庁の方針で、今のところは言えることと言えないことがあると、さっき言ったから、そのあたりも察してくれたのかもしれない。


「ちなみに治癒魔法の射程は?」

「……1メートルくらいです」

「つーことは、近づかねぇとどうしようもないってこったな?」

「そうなります」

「しゃあねぇーな」


 ふぁさ……と久遠さんがいつものように前髪をかき上げる。


「執行ちゃん。俺が尻尾を受け止めるから、その隙に斬ってくれ」

「分かりました」

「ちょ、ちょっと待って!?」


 二人の会話に慌てて割って入る。

 久遠さんが普通に提案をして、執行さんは普通に頷いていたけど、尻尾攻撃を受け止めるって言ったよ!?


「だ、大丈夫なんですか!?」

「佐々貴ちゃん、心配してくれんの?」

「そりゃあ、だって」

「さんきゅ。ま、大丈夫だろ。俺は勇者だしな」


 えぇ……?

 それはなんの保証にもならないような……。

 

「この中で俺が一番防御力が高いし、それに何も真正面から受け止めるわけじゃねぇよ。上手いこと受けて、執行ちゃんが斬る隙を作るぜって話だ」


 それによ、と久遠さんは言葉を続ける。


「佐々貴ちゃんが治癒魔法を使おうにも、尻尾が邪魔で近づけねぇだろ? だったら、こうするしかねぇよ」

「すみません……お願いします」

「謝んなって。任せな」


 にかっと笑みを浮かべて、久遠さんは執行さんに言う。


「それじゃあ、行くぜ執行ちゃん?」

「はい」


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