67.ドラゴンゾンビアンデッド⑥
熱線を放ったばかりのドラゴンゾンビアンデッドに違和感を覚えて、私は首をかしげた。
熱線を放つために口が大きくなったり、反動を支えるために身体が大きくなったりなど、身体的な変化はない。
パッと見て気づいたのは、熱線を放った後だからか口から煙が立ち上っていること。
その他に変化した部分は……。
じっとドラゴンゾンビアンデッドを見ていると、その違和感――変化したを突き止めた。
さっきまでは怪しく光っていた頭の2本の角。その角の紫色の光が弱くなっていた。今も禍々しく毒々しい紫色なのは変わりないけど、光はほとんど放っていない。
「執行さん。アンデッドの角、光が弱くなった気がしない?」
「言われてみれば……」
「もしかしたら、連発はできないのかも」
あれだけの威力の攻撃だ。
流石にアンデッドの身体とはいえ、何度も連射することはできないのだろう。
エネルギーを溜めたり、毒を溜めたりする時間が必要なのかもしれない。
逆に言えば。
角が紫色に光って見えるときは、エネルギーや毒が十分にチャージできているってこと。
角を見ていれば、あの毒を纏った高エネルギー熱線を使える状態にあるのかが分かるってことか。
どのタイミングで撃って来るかはドラゴンゾンビアンデッド次第。
だけど、こちらとしては「熱線が来るかもしれない」と心の準備ができるだけで、かなり戦い方は変わってくる。放つ前には予備動作もあったし、分かっていればもう一度使われても躱せると思う。
……っていうか。
なんか、ドラゴンゾンビアンデッドが全然動かないような……?
眉をひそめて、ドラゴンゾンビアンデッドを見る。
ドラゴンゾンビアンデッドは、今も相変わらず私たちと対峙している。距離は少し離れているけど、真正面に立っていて、ぎょろっとした瞳で私たちを見下ろしていた。
だけど、熱線を放ってからというものの、ピクリとも動いていない。
……いや。
動いてないっていうより、動けないのかも?
エネルギーや毒を溜める時間だけじゃなくて、負荷のかかったであろう身体を休める時間も必要なのかもしれない。
だったら!
「執行さん、角を壊そう。背中みたいにサポートお願いできる?」
「はい。任せてください」
「よろしくね」
こくり、と小さく頷いて、執行さんはドラゴンゾンビアンデッドへ駆け出した。
先行した執行さんについていく。
執行さんが近づいていくと、ドラゴンゾンビアンデッドがようやく動き出した。
流石に接近されたら、休みたくても動かざるを得ないのかもしれない。
大木のように太い右前脚を持ち上げた。鋭利な爪を執行さんに振り下ろしてくる。
右前脚による攻撃を執行さんは冷静に躱して、逆に反撃して斬り付ける。そして続けざまに反対の左前脚へ2度斬撃を喰らわせると、そのままドラゴンゾンビアンデッドの前足を足場にして駆け上がった。
そして、執行さんはドラゴンゾンビアンデッドの頭上へと飛び上がると。
落下の重力や速度を利用して、ドラゴンゾンビアンデッドの頭に刀を突き立てた。
いつも以上の威力を発揮した攻撃に、ドラゴンゾンビアンデッドの地面に叩きつけられる。
砂煙が立ち上り、思わず立ち止まりそうになった。
けど。
「佐々貴さん、こちらへ!」
「う、うん!」
執行さんに呼ばれて、砂煙の中を真っすぐに突っ切る。
ドラゴンゾンビアンデッドの頭に刀を突き立てている執行さんが、私に手を伸ばしてくれた。
「佐々貴さん、手を」
「うん。ありがとう」
執行さんに引っ張り上げてもらって、ドラゴンゾンビアンデッドの頭の上に登る。
ここまで来ると、紫色の角は目と鼻の先だった。
遠くから見ていると小さく感じていたけど、目の前で見ると案外大きい。ドラム缶……いや、それ以上の大きさはある。
「執行さん、角を壊すから離れて?」
「……やはり私もここに残ったほうが」
「約束したでしょ?」
「それは、そうですが」
「ね?」
「…………分かりました」
不承不承、という感じ満載だったけど、執行さんは刀を引き抜いてドラゴンゾンビアンデッドの頭から飛び降りた。
執行さんが遠ざかるのを見届けてから、私は金属バットを構える。
正直、足場はかなり悪い。けど、そんなことは言っていられない。ドラゴンゾンビアンデッドがまた動き出す前に角だけでも破壊しておかないと。
バランスが取れるところを探して、金属バットを構える。
グリップを握る両手に力を入れて、治癒魔法を注ぎ込む。そして、バットをフルスイングした。
「おりゃあ!」
治癒魔法の白い光に包まれたバットがドラゴンゾンビアンデッドの紫色の角に直撃する。
さっき、背中の制御器官を破壊したときよりも魔力の出力を高めたこともあってか、バットが直撃した瞬間に角は光に包み込まれた。
……けど、足りない。
治癒魔法の光には包まれたけど、紫色の角は健在だ。
もう一度バッドを構えなおして、気合を入れて角をぶっ叩く。
「おりゃああああっ!」
二度目の直撃をした刹那。
角の根元付近にヒビが入って、ポッキリと折れた。
「よしっ!」
次は反対側の角を壊す! と思ったのも束の間。
折れた角の付け根から、毒の霧が吹き出してきたのだった。




