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アンデットだらけの2周目ダンジョンには治癒魔法が欠かせません!?~とある迷宮保安官と用心棒少女のダンジョン再攻略~  作者: 春街はる
東村山ダンジョン

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56.侵入者の配信者②

「騙しやがって! クソ迷宮保安庁がよ!」


 大慌てで撮影を再開させた後。

 これで大人しくダンジョンから帰ってくれたらいいものを、配信者の男性はさらに怒った様子で食って掛かってきた。

 

 騙すも何も、全部あなたが勝手にやったことですが……。

 そもそも立ち入り禁止のダンジョンに入らなければ、こんなことにはなっていない。

 身から出た錆すぎる。

 何を言われても言いがかりにしか聞こえない。


 きっと、彼は頭に血が上っているみたいだから、気づいていないだろう。

 周りにいる女の子たちの表情がどんどん曇っていき、顔色が悪くなっているのを。

 自分たちが何をしてしまったのか。ようやく理解し始めたのかもしれない。


 けど、まだまだ理解していない人が一人。

 配信者の男性は、相も変わらず凄まじい剣幕で私に怒りをぶつけてくる。


「つかよ! お前ら何か隠してるだろ!」

「隠す?」

「おいおい、しらを切ろうってか? 悪ぃけど、俺は知ってんだぜぇい?」


 やれやれ、と男性が大袈裟に肩を竦めた。


「お前らがわざわざ攻略済みのダンジョンを立ち入り禁止にするってことは何かあんだろ? で、それを迷宮保安庁が独り占めしようって魂胆は丸わかりなんだよ! 俺はそれを暴きに来たんだからな!」

「…………」


 な、何を言っているんだこの人は?

 呆気に取られてしまって声が出なかった。


 まぁ、たしかに何かあるのは間違いない。この先にはアンデッドがいるから。

 独り占めって言うのも、あながち間違いではないかも。……アンデッドを、だけど。


 たぶん、この人はすごい勘違いをしている。

 誰に来た話なのか知らないけど、ダンジョンの奥に金銀財宝が眠っているとでも思っているみたいだ。そんなことないのに。

 実際にあるのは金銀財宝ではなく、アンデッドアンデッドアンデッドだ。

 ……最悪すぎる。


「何しに来たんだよ? 教えてくれよ」

「答える義務はありません。ただちに東村山ダンジョンからの退出を願います」

「はぐらかすってことは、やっぱり良いものがあるんだな?」

「……ただちにお帰りください」

「嫌だねぇぇ!」


 大きな声で言って、男性は私をおちょくるみたいにニヤニヤとした笑みを浮かべる。


「――って言ったらどうすんの?」

「どうもしません。帰っていただきます」

「けっ、話が通じねぇ野郎だぜ」


 それはどっちなんですかね……。

 心の中でつぶやく。

 いい加減にして早く帰ってほしい。こっちは仕事なのだ。


「やっぱさぁ、この奥に何か隠してんだろ? 教えてくれたら帰ってやってもいいぜ?」

「お答えできません」

「何があるのかって聞いてんだよ! 答えろや!」

「お答えできません、とお答えしております」

「ちっ」


 舌打ちをして、男性は大きく溜息を吐く。

 なんで私が物分かり悪いみたいになってんのよ……。溜息を吐きたいのは私なんだけど……。


 ガシガシと汚い金髪を掻きむしって、男性が再びこちらに視線を向けてきた。


「あー、そうかいそうい。だったら、力尽くで聞いてもいいんだぜぇ?」


 そう言って、男性は腰に携えていた剣を抜いた。

 右手と左手に一本ずつ握る。

 予備かと思っていたけど、どうやら二刀流の配信者らしい。

 にたり、と気味の悪い笑みを浮かべてくる。


「女二人くらい、俺一人で楽勝だからな。痛い目は見たくないだろ? 特にあんたの隣の美人な子は、さ☆」


 うっ、鳥肌が……。

 カッコいいとでも思っているのだろうか? たぶん思っているんだろう。まあ、だからこそ配信者がやれているのかもしれない。


 と。

 執行さんが私を男性から庇うように前に立った。

 右手は刀の柄にそっと触れている。


「……佐々貴さん、斬りますか?」

「だ、ダメだよ」

「そうですか」


 どれだけ腹が立ったとしても、手を出してはいけない。

 当然だけど、ダンジョン内でも法律は効力を持っている。ここで手を出すと私たちまで悪くなってしまう。


「あれあれぇ? びびってんの? 迷宮保安庁ビビってる! へいへいへーい!」


 私たちが何もしてこないと決めつけているのか、挑発するように男性が言ってくる。

 剣をぶんぶんと素振りしていて、空気を切る音が聞こえてきた。

 近くに女の子たちがいるけど、分かってるんだろうか。普通に危ない。


 ……そう、危ない。

 度重なる侮辱行為に危険行為。そして何よりも立ち入り禁止ダンジョンからの退出に応じない。アンデッドがこの場所にも現れるかもしれないのに。この人たちだって危険にさらされる可能性があるのだ。


 だったら、多少の実力行使は仕方ないか。

 配信者の人、そして執行さんのクラスメイト達の命を守るためだ。

 はぁ、と溜息を吐く。

 最悪、私が始末書を書くということで。


「執行さん」

「やはり斬りますか?」

「……あの人の剣を一本だけお願いできる?」

「! わかりました」


 小さく頷いて、執行さんはゆっくりと男性に近づいていく。

 刀の柄に手を掛けた。

 凛とした顔は、いつも以上に集中しているように見える。


「おやおやおやぁ? やる気になったの――」

「――ッ!」


 男性が剣を構えなおした瞬間。

 執行さんは抜刀すると目にも止まらなぬ速さで刀を振り抜いた。

 時間にして、たぶん1秒とか2秒。


 瞬きが完了する頃には、男性が右手に持っていた剣の刃が斬り刻まれ、バラバラと地面に落下したのだった。


「はあああああ!? 俺の剣がああああ!?」


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