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アンデットだらけの2周目ダンジョンには治癒魔法が欠かせません!?~とある迷宮保安官と用心棒少女のダンジョン再攻略~  作者: 春街はる
東村山ダンジョン

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55.侵入者の配信者①

 岩壁の角からそっと様子を覗き込むと、ドローンとスマホを手にした男性が怒りで荒れ狂ってい姿を確認することができた。

 配信サイトや迷宮保安庁に対して罵詈雑言を口にしている。

 

 ……あなたが悪いんでしょうが。


 そう言いたくなるけど、そんな話が通じる相手ではないだろう。

 話が通じる人だったら、そもそも立ち入り禁止のダンジョンに侵入なんてしない。


 あの怒っている様子からして、間違いなく動画配信は強制的に停止させられたのだろう。

 津守さんはすぐに動いてくれたらしい。

 ということで、私はダンジョンから帰るように注意しに行かないといけないわけだけど……。


 正直、気が重い。


 いや、行きますとも。

 命令だし、アンデッドが出るかもしれない場所で放置するわけにはいかない。

 しかも東村山ダンジョンはDⅠダンジョン。並みの探索者や配信者では歯が立たない。あの人たちが違反者で、私が嫌いな配信者――特に嫌いな迷惑をかけるタイプの配信者だったとしても、迷宮保安官として命だけは守ってあげないと。

 

 覚悟を決めて岩陰から出る……前に、傍でじっとしている執行さんに声を掛ける。


「執行さん、クラスの子に会いたくないならここで待ってる?」

「……いえ、私も行きます」

「いいの? 大丈夫?」

「はい」


 執行さんは手首にはめているバングルをそっと触りながら、小さく頷いた。


「相手、4人もいますから。佐々貴さん一人にはさせられません」

「大丈夫だよ。別に喧嘩をしに行くわけじゃないんだしさ」

「そうかもしれませんが……。でも、もしものときは私が守ります」


 思わずドキッとしてしまいそうだった。

 しかも、真っすぐに見つめながら「私が守る」なんて言われたものだから、ちょっと照れる。


「ありがと。でも、人を傷つけちゃダメだよ?」

「佐々貴さんのためでしたら、場合によってはやぶさかではありません」

「だ、ダメだって……」


 執行さんが腰に携えている刀の柄に手を掛けたので、私はそっとその手に自分の手を重ねた。執行さんの手を柄から離させる。


 ……執行さんが言うと洒落にならない。

 ていうか、色々と吹っ切れすぎてない!?

 ともかくとして、執行さんに暴力を振るわせるわけにはいかない。


 話し合いで穏便に解決させなくては。

 するかなぁ?

 しない気がする。

 

 ……不安だ。色々な意味で。


 だけど、ここでずっと油を売っているわけにもいかない。

 私たちの目的は最深部にいるアンデッド――おそらく、ドラゴンゾンビアンデッド――を倒すこと。

 さっさと注意をして帰ってもらって、本来の目的を達成しないと。


 執行さんにアイコンタクトを送ってから、私は岩陰から出た。

 相手を驚かせないように優しく、そして怒らせないように下手に話しかける。


「あの、すみません」

「あぁ!?」


 めちゃくちゃ不機嫌そうな顔で、怒気を含んだ口調で男性が振り向く。

 あ、もう無理かも。話、通じないかも。


 男性の周りにいる執行さんのクラスメイト達は、私……じゃなくて、私の隣にいる執行さんの登場に驚いているみたいだった。

 そりゃそうか。こんなところで出会うなんて思うはずがない。


 一方の男性は、相変わらず怒った表情で私を睨んでいた。


「んだ、てめぇら! ここは立ち入り禁止だろうが!」


 誰が言うとんねん!

 と関西人じゃないのにツッコミそうになってしまった。

 危ない危ない。なんとか我慢した。


「それは私のセリフです。本日は東村山ダンジョンは探索者の方の立ち入りは禁止です。早々にお帰りください」

「お前も同じだろうが偉そうに言うな!」

「私は迷宮保安庁から調査で来ました。ですから、無断で侵入したあなたたちとは違います」


 女の子たちの表情が「迷宮保安庁」という言葉を聞いて青ざめたのが分かった。

 たぶん、悪いことをしている自覚があるのだろう。


 だけど彼女たちの中心にいる配信者の男性に変化はない。

 むしろ、ますますエキサイトした様子を見せた。


「迷宮保安庁だぁ? お前か! 俺の配信を止めたボケは!」

「停止するまでに何度か警告を送っているはずです。ですから、あなたの配信が止まったのはあなた自身のせいかと思いますが」

「うるせぇ! つーかよ。ダンジョン内は配信が義務だろうが! それを止めるってことはお前ら法律違反じゃねぇのか? 保安庁さんよぉ」


 め、面倒くさい……。

 早くダンジョンから出て行ってほしいだけなのに、なんでこんなに言葉が矢継ぎ早に出てくるのか。配信者で普段から一人喋りをしているから、口だけは一丁前なのかもしれない。


「止めたのは配信だけで、撮影自体は続いていたはずです。ですから、もし今、撮影がされていないのだとすれば、それはあなたが自分の意志で撮影を停止させたということになり、違反を重ねたことになります」

「なッ!?」


 男性は驚いたような表情になると、左手に握っていたスマホを操作し始めた。


 あ、もしかして本当に撮影自体も止めてたの?

 配信と撮影が別っていうのは、少し考えたら分かると思うけど……。

 きっと配信が強制的に停止させられて頭に血が上って、撮影ごと停止させてしまったのだろう。


 しかも、今さら撮影を再開しても遅い。

 私の背後にあるドローンが一部始終を撮影しているので違反を逃れることは不可能。

 立ち入り禁止のダンジョンに侵入する人だから大胆不敵なのかと思っていたけど、慌てた様子で撮影を再開させる様子は小物めいていた。


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