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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第8章 女将軍

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8-36.対エルマ

 それよりも戦闘だ。味方の兵士が帝国兵になだれ込んで混戦が始まった。

 どちらも戦意は上々。けれど練度で言うなら帝国兵の方が上に見えた。

 精鋭を集めたのか。こんな狭い道を通るために。何を考えているのだろう。


 とにかく、このままでは負ける。僕も戦わないと。


「ヨナこれ!」


 木の上からキアが細長い枝を投げ渡した。うん、これくらいが扱いやすい。木槌は大きすぎた。


「ありがとう! キア、女の指揮官を狙える?」

「上から跳び降りて喉を切り裂けってか? やってみるけど、難しいぜ! 横の奴が弓で狙ってくる!」


 キアが木上から狙っているのを向こうも感知しているのか。だから近づけば、指揮官の護衛がすかさず矢を放つ。だから指揮官を狙って飛びかかる隙がない。


「わかった。護衛たちの動きを乱して、跳びかかる隙を作る」

「結局やらなきゃいけないんだな。わかった頼むぜ!」


 木の枝を拾って乱戦の中へ入る。王国兵と鍔迫り合いをしていた帝国兵の胴を両断して、蹴飛ばして斜面に落とす。別の敵が剣を振るのを見て、そちらに踏み込んで剣ごと腕を切り裂いた。悲鳴を上げた彼だけど、直後に木の枝が喉に刺さって声が止まる。そのまま首の半分が切断されて彼は死んだ。


 大柄な敵が槍を構えて油断なくこちらを睨んでいる。


「異能持ちか」

「そうだよ。あなたに勝つ見込みはない」

「それはどうかな。お前の攻撃を避けて突き刺せばいいだけ。簡単……なんだこれは!?」


 シュルシュルと音を立てながら、地面から生えた闇の蔓が男の手足に巻き付いて動きを止める。戸惑う男へ肉薄して、一撃で心臓を突き刺し殺した。

 彼が自分で言うだけの技量があったのかは、ついぞわからない。


「なんだ、あの子供は……」


 女の声がした。騎乗した指揮官が、僕を見て困惑した顔を向けている。

 その隣にいるのも女だ。副官かな。その周囲に弓を持った兵士が数人いる。


「構え!」


 副官の女が号令を出すと、弓兵が一斉に僕へと矢を向ける。さすがに複数の弓で狙われたら逃げるしかない。

 が。


「よっしゃ今だ!」


 近くの木からキアが跳び降りて指揮官に抱きついた。勢いのまま彼女を落馬させて地面に叩きつける。突然のことでバランスを崩した馬も悲鳴を上げて転倒。その際に足でも折ったのか痛みで暴れまわっている。

 僕を狙っていた弓兵たちも、さすがに指揮官がピンチに陥ればそれどころじゃなくなった。


「みんな! 帝国の指揮官が落馬した! 仕留めるチャンスだ!」


 声を上げれば、戦場の全ての視線が女に向く。そして王国兵はそちらへ駆けていった。もちろん僕もだ。敵の只中に飛び込んで弓兵に肉薄したキアが危険だから。

 弓兵の排除が最優先。一体の弓兵の体に闇の蔓が巻き付いて狙いを逸している。それとは別の弓兵を背後から斬り捨てつつ、別のひとりの前に立つ。僕に向けられた矢を掴んでぐいっと上に向けて狙いを逸らす。敵は弓を手放して腰の剣を掴もうとしたが、背後に迫る影に気づかなかった。


 ティナが振り下ろした剣が弓兵の命を奪った。


「ヨナ様、敵は」

「こいつが指揮官だ」


 落馬したままキアと取っ組み合いをしている女。キアが常に体を密着させる動きをしていたから、女は武器を取ることもできずに振り払うのに必死だ。しかし女の方も負けてはいない。キアが持っていたナイフははたき落とされたか、離れた所に転がっていた。代わりに首を締めて仕留めようとしたキアをなんとか押し返して。


「こいつ! ガルアン人か!? 属州の分際でわたしに楯突くか!?」

「なんだそれ!? 意味わかんねえんだよ!」

「離れろ!」

「がはっ!?」


 女の膝蹴りがキアに当たった。体が離れて、その隙に女は立ち上がって剣を抜く。キアも転がるように距離をとってナイフを拾い上げた。

 キアと睨み合っている女に僕は駆け出した。


「エルマ後ろ!」


 馬に乗った副官らしい女が呼びかけた。指揮官はエルマというのか。はっとして振り返った彼女だけど、遅い。木の枝が彼女の胸を貫くはず。


 なのに、急に体が重くなった。走る速度が急激に落ちる。全力疾走中にそんなことが起こったのだから、僕はバランスを崩して地面に倒れ込んだ。枝も離してしまう。


 起き上がろうとしても体が動かない。押さえつけられていると言うよりは、体が地面に引っ張られる感覚だ。

 重力が強くなっているのか?


 顔を上げれば、エルマが剣を構えていた。僕が子供と見て一瞬躊躇った顔を見せたが、彼女は指揮官だ。敵である僕を仕留めるべく振り下ろした。

 があんと音がして、エルマの剣が受け止められる。ティナが僕の前に立ち塞がって剣を構えていた。


「ヨナ様!? お体は!?」

「怪我はしてない! でも妙に体が重くて!」

「あの女です! おそらく異能!」


 動かない体で振り返れば、副官が馬の上から僕に手のひらを向けていた。

 異能者か。指揮官のピンチを見て的確に力を使う。優秀なんだろうな。


「この少年は危険だ! 優先的に殺せ!」


 副官が周囲に指示を出す。王国兵と比べて全体的に強い帝国兵たちがこちらを向く。


 まずい。

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