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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第8章 女将軍

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8-29.戦況は

 街の中心部に戻り、また酒場で聞き込み。ただし今度は、探すのは工作員ではなくティナたち。

 僕たちが戦っている間も、ふたりは真面目に酒場巡りをしていた。ちなみに飲酒はせずに料理だけ頼んでいたらしい。


 そこで足取りを追えば、やがて追いついた。


「ティナ」

「ヨナ様! どうですか、成果は?」

「あったよ。落ち着いて話をしたいから、どこかに行こう」

「ではあのお店に」


 酒場というよりはカフェ。酒のメニューもそんなに豊富ではない。


「聞き込みの途中で色々食べちゃったから、あたしたちはいいわ」

「ええっと。僕はお腹空いてて」

「はい! たくさん食べてください!」

「じゃあアタシも酒を」

「それは駄目です」

「いつもアタシにだけ厳しいんだよな」

「いえ。これは当たり前の反応よ」


 優雅にお茶を飲むゾーラが呆れた目を向ける。


 僕はといえば、ひとりだけパンや揚げた芋を食べることに気後れしながら、それを打ち消すためにさっきの出来事を話した。


「そうだったのですね! さすがヨナ様です。ちゃんと敵を見つけていたんですね。あ、サラダも食べないと栄養が偏りますよ」

「敵のひとりを捕まえたなら、他の仲間もすぐに捕まるわね。少なくとも警戒して仕事がやりにくくなるでしょう。大手柄ね」

「うん。ありがとう」

「アタシも頑張ったんだけど?」

「話を聞くに、キアさんは酔っ払ってただけでは?」

「アタシも戦った!」

「キアが美人だから、あの男は釣られたんだよ」

「そうなんですか。確かに、この教育に悪い格好は男性を惹きつけますけど」

「なんだよ教育に悪いって。動きやすいからいいだろ」


 キアが不機嫌なのは、褒められないからか。単に酒が不足してるからかもしれないな。

 とにかく、この件は解決と見ていいだろう。


 城に戻れば、既に公爵の耳にも入っていたらしい。その夜も会議に出席したけど、貴族たちは上機嫌だった。


「さすがは王子様だ。初日で成果を上げるなんて」

「ありがとうございます。でも、工作員本人が言ってました。これは補助的な作戦で、この街は工作なんかしなくても簡単に落とせると」

「いいえ。それは強がりです。実際、こちらに攻めこもうとする敵を我々は押し返しています」

「そうですか。では、時間はどちらの味方ですか?」

「……」


 公爵は困った顔になった。嘘はつけないか。


 工作員を排除したのは、この街を侵食する悪意から守れたと言っていい。でもそれだけではこちらの有利にはならない。

 敵も同じことをしているはずだから。それも大規模に。首都を含めた敵地の同化政策だ。


「どこかで大規模な攻撃を仕掛けて、首都を奪還しなければならないと考えています」

「いつですか?」

「数日の内に。可能ならば、今陣を敷いている所まで敵が攻め込めば嬉しいのです。迎え討ち、壊滅させた上で勢いに乗って首都に攻め込む」

「敵が誘いに乗る様子は?」

「奇襲部隊を何度も送って挑発していますが、なんとも」


 敵も用心深いか。統率が取れているのは、よほど有能な指揮官がいるからか。


 人望に厚く、その人の言う事なら待つ選択が出来る。


「こちらも、これみよがしに陣の防備を高めて、そこに至るまでの道にも防御機構を作っています。向こうも焦っているはずです。実際、多くの兵を前線に集めている最中です」


 総攻撃を仕掛ける前兆とも取れる。単に、首都奪還を目指すラロシエリ軍への防衛軍かもしれないけれど。


 睨み合っていて、先に攻め込んだ方が不利な状況か。


「こちらとしては、地形を知っている有利から、森の中を自在に動く奇襲部隊で敵の数を減らし続けるしかないかと」

「一度の奇襲でどれだけ減らせますか?」

「十数人が限度です」

「少なくはない、けれど大した数でもないですね」


 大軍を動員したら気づかれて奇襲にならない。チマチマした攻撃で、敵の士気を落とし続けるしかない。

 けれど敵は、それを上回る数を首都から前線まで日々送り続けているのだろう。


「ヨナ様。明日から、前線付近まで行ってもらえないでしょうか」


 公爵のそんな提案に、横でティナがぴくりと動いた。たぶん険しい顔をしていたのだろう。公爵はすぐに続けた。


「もちろん、前線に行くわけではありません。安全は保証いたします。十分な兵士と、民間の作業者に同行してもらいます」

「仕事内容は?」

「道に杭を打ち、柵を立てる」

「防御機構作りですか」

「はい。険しい山道があり、帝国兵が使うかは微妙ですが、この街にアクセスできるルートです」

「そこを潰しておきたいと」

「はい。その他にも、敵が使うと思われるルートにも市民の労働者を向かわせて、防御機構の充実を図ります」

「……」


 敵が使うと思われるルートに市民を向かわせるのは、危険だ。向こうが攻め込めば巻き込まれる。今のところその兆候はないにしても、ラロシエリ軍は挑発を繰り返している。


 僕たちにあてがわれた山道は、敵が来る可能性が低いルート。街と小さな集落を結ぶ、細い道だ。


 王子への最大限の配慮なのだろう。


「わかりました。その仕事、受けます」

「ありがとうございます。お力、本当に頼りになります」


 やはりその後にいくつかの議題を経て、最後にイレイナ王女に意見が求められて。


「皆様の決定どおりにお願いします。と姫様は言っているわ」


 やはりアンリが代弁した。

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