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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第8章 女将軍

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8-21.帝国の苦戦

 数日後、エルマに出陣が命じられた。目標は首都の北にあるボンドル。

 イレイナ王女がその街に逃げたという情報もある。追っ手を斬り捨てて逃亡したとのことだ。途中で、国民に出会って助けられたのだろうか。


 いずれにせよ、この国の領地をすべて支配下に置けば問題ない。


 エルマの指揮で進軍。しかしロプロース攻略以前と比べて、遥かに困難な戦いだった。


「守りが堅いな」

「地形もあるでしょう。敵陣まで駆け上がるだけでも、兵はかなり消耗します」

「こちらへ誘い込めないか?」

「難しいかと」

「敵は愚かではないか」


 山の一角に布陣した敵の様子を、エルマ自ら偵察する。


 敵は地形を知り尽くしている。常に有利な地形に陣を敷いて、防御機構も構築して万全の構えを作っていた。今も、斜面の中にある微かに平坦な場所に敵は陣地を作っていて、防護柵や盛り土を作って防備を固めていた。

 そして、ここから動く気配はない。挑発をしようが関係ない。返事は、頭上から降ってくる矢だけ。


 一方こちらは登山で疲弊した兵ばかり。敵陣に攻め込むのにまた斜面を登らせれば、戦う前に疲れ果てる。


 そもそも急いで山を登らせても、坂道に打ち込まれた乱杭のが邪魔して速度は出ない。そこに矢が降り注ぐわけだ。

 勝敗は目に見えている。


 今は森の木々が盾になって攻撃が来ないだけ。向こうもこちらの位置を把握している。兵を動かせばすぐに矢が飛んでくる。迅速に動かさねば。

 だから兵を休ませて、今も随時到着し続けている増援と合流し、戦力を揃えて一気に攻め落とすしかない。


 しかし、それには数日待たなければならない。そしてまた夜が来る。向こうが作った陣地を捨てて夜襲をかけてくるとも思えないが、夜はまた別の問題が出てくる。


 敵が森に潜んで、声を上げるのだ。人だけではない。飼いならした犬に遠吠えをさせる。しかも、森のあちこちから。

 周囲を取り囲む木々のどこかに敵が潜んでいて、しかしどこにいるかわからない。今にも猟犬が飛びかかってこないかと、兵たちは震え上がった。


 そんなことはない。こけ脅しだ。エルマが兵のひとりひとりに声をかけて、なんとか落ち着かせる。彼らが士気を保っているのは、エルマの人柄あってのこと。

 それでも兵士は眠れぬ夜を過ごして、精神を摩耗させていった。


 敵は、時には本当に襲いかかることもあった。


「申し上げます。後方で進軍中の部隊が奇襲を受けて被害が出たとのことです」

「そうか。一旦戻るぞ」

「はっ。敵はどうやって我らの側面に回ったのでしょう」

「地元の人間しか知らない道があるのだろう」


 伝令に頷いて、ヒンナと共に陣地へ戻る。


 敵陣を攻めあぐねている間に、敵は容赦なく奇襲をかけてくる。森から突然姿を現し、矢をいかけて槍を刺し、深追いすることなく森に姿を消す。

 逃げた敵を追いかけてこちらが森に入れば、それこそ慣れない山の中で襲われて殺されるか、迷子になって餓死するしかない。だからこちらは手出しができず、一方的に被害を負う。


 はじめは、奇襲はあまりなかった。しかし山の中での野営と、落ち着けない夜が数日続いてこちらの疲労が溜まってきた頃合いに、一気に増えた。

 敵との睨み合いを続けていれば、被害は増える一方。しかし向こうの陣を攻め落とすには兵が足りない。


 今も細い山道を歩いて、こちらに向かっている兵士の到着を待たないと。それには、あと何日かかる? 山の戦は兵の移動にこうも時間がかかるものなのか。


 楽な戦争とは思っていなかったが、予想以上だ。


 そんな中で数日経てば、ロプロースから遣いが来た。

 今後の方針を話し合いたいから、エルマは戻るように、と。


 仕方なしに軍はヒンナに任せてロプロースへ向かった。エルマ無しに攻勢はかけられない。なんの用事で呼び出したのかは知らないが、この間に敵はさらに防御を整えるだろう。

 山道に罠を仕掛けたり新たな杭を打ち込んだり道を荒らして進みにくくしている。

 攻め込めば、どれだけ被害が出るだろうか。その予想される数は日々増えている。



 首都には、ヴィルドーゾとヴィルレイン、コンランド将軍、そして皇帝からの遣いがいた。


 告げられたのは驚くべき知らせ。

 ボンドルにライディアル王国第六王子、ヨナウスがいるから、攻撃は慎重をきすようにとの、ライディオン王家からの要請があったそうな。


 彼は死んだのではないのか? しかし民の間で噂になっているし、ヨナウスの生存はライディオン王国の、教会の中では公式見解とのこと。王家は公式には立場を表明していないが、帝国には配慮を求めているということは、生存を認めたようなものだ。


 同盟国の要請には従わなければいけない。特に戦争中は、他国と関係を悪化させてはいけない。


「エルマよ。敵は残らず殺せ。イレイナ王女もだ。だがヨナウスは生け捕りにしろ。ボンドルの街にいるという噂だが、どこにいるかは不明だ。街の中での略奪はするなよ」


 ヴィルドーゾが尊大に命じた。

 どの口が。


 コンランドに略奪を許可したのはお前じゃないか。それに、わたしはやらない。


 山道を進軍して途中に陣を敷くラロシエリ軍を撃破するのがエルマの仕事。ボンドルを包囲して攻め込むのも、エルマが主導するだろう。

 そして占領したボンドルを管理するのがコンランドの軍の仕事だ。楽な仕事ばかりして。ふざけるな。


 エルマの仕事のどこにも、略奪をする機会などない。そのつもりもない。


 こんなこと、伝令を出して指示すればいいのに。


「承知しました」


 それでも、相手は皇子。名目上はこの軍の総司令。文句の一つも言いたくなるのを堪えて、頭を下げた。


「では、わたしは戦場に戻ります」

「ああ。頼んだぞ。……女の兵を見つけたら、できるだけ生け捕りにしろよ」

「……努力します」


 こいつの病的な女好きにも困ったものだ。

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