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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第8章 女将軍

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8-18.戦時体制

 消極的なイレイナに、アンリはどう声をかければいいかわからなかった。


「あ……」


 窓の外にヨナたちの姿が見える。街の見回りをした帰りだ。


 なんか大変だったらしく、疲れている様子。でも楽しそうに話していた。

 普段なら、わたしもあの中にいたのに。


「アンリさん……」


 いつの間にか隣にイレイナが来て、服の袖をぎゅっと握った。


「わたしの英雄さん。そばにいてください」

「え、ええ。わかっているわ。あなたを守ると決めたもの」


 この城の中で、何から守ると言うのだろう。ヨナと一緒に街の治安維持に努めた方が、ずっとイレイナのためになるのに。


「ねえイレイナ。城主さんとお話しましょう。街のこれからについての話し合い、わたしたちも参加すべきよ」

「え……」

「あなたは王族よ。知っておいた方がいいに決まってるわ。ね?」


 イレイナはあまり気乗りしない様子だけど、アンリはなんとか説き伏せた。



――――



 公爵を始めとした貴族の皆さんは、今日も真剣に話し合いをしていたらしい。

 夜も会議を開くし、そこには僕も同席を求められた。街の様子を見てきて、改善するべき所を教えてほしいと。

 民の暮らしぶりの向上のためではなく、戦争に勝つためだ。


 会議にはイレイナも出席するし、隣にはアンリもいる。


 テーブルの下で、イレイナに手を握られ続けているらしいアンリはやりにくそうな顔だけど、僕を見れば笑顔で手を振った。握られてない左手で。

 イレイナは国の暫定当主という立場で出ているわけで、発言はあまり求められない。アンリも同様。


 僕らは、街を見回った感想を求められた。


「難民たちが集まってひどいことになっているわ。彼らの待遇を改善すべきです。特に医療体制がひどい。医師も薬も足りていないわ」


 僕よりもゾーラの方がこういうのは得意だから、公爵へのお願いは任せた。

 彼は深く頷いた。


「わかった。できる限りのことはしよう。しかし現状、女子供の世話には手が回らないのが現実だ」

「男性は別ということですか?」

「義勇兵として雇えば、給金を出せる。街で犯罪が多発するのは、金が無いからだ。それを少しは改善できる」

「なるほど」


 給金が出れば、難民キャンプに住む彼らの妻子にもお金が回る。それで暮らしぶりは良くなるだろう。病気なら薬も買ってやれる。

 しかし、昼間の子には父がいない。それも、首都で勇敢に戦ったからだ。その結果があの仕打ちとは。


「戦時中だ。祖国のために戦ってくれるなら待遇は良くしたいが、何もしない者を優遇するほど国庫に余裕は無い」

「だったら、仕事を与えれば良いのでは?」


 ティナが手を上げて口を開いた。


「敵の侵攻を防ぐために、堀を作ったり土塁を積んだり。罠を仕掛けるのは有効だと思います。それらは戦場よりも後方で行われることです。それに、義勇兵が集まり数が増えた兵隊の食事手配するのにも人手が必要でしょう。これらの仕事は、女性や子供にもできます」

「ああ。その通りだ。力仕事もあるから効率的とは言えないが、雇用が出来れば街の治安は改善するな」


 ただ金と食料を配るだけでは、街の持ってる資産を食い潰すだけ。仕事という形で市民に貢献させることが重要だ。


「早急に雇用体制を整える。難民キャンプにも人をやって、待遇改善に努めよう。ヨナ様。あなた方は引き続き、街の治安を守ってもらいたい」

「わかりました。明日から、治安は徐々に良くなると思っていいですか?」

「そうなるでしょう。となれば、次に取り締まって欲しい対象がいます」


 ゾーラやティナではなく、公爵は僕を見ながら言う。

 つまり、僕にこの仕事をやるかどうかの決断をして欲しいってこと。


「なんでしょうか」

「国内に潜む敵対勢力、そして市民団体です。奴らに扇動された市民も対象にすべきかもしれません」


 穏やかではないな。

 戦時中だし、穏やかな事など無いのだけれど。


「敵対勢力とは?」

「疑問に思われませんでしたか? 我が国の軍も決して脆弱ではない。帝国の兵力には及ばずとも、地の利はこちらにある。山道は細く険しい。大軍を進ませるのは困難だし、移動も遅くなる。それまでにこちらは迎撃体制を整えて、然るべき位置で迎撃すれば、勝てたはずです」


 もちろん首都はその性質上、比較的交通の便がある立地。道も整備されている。それでも山の中なのは変わらない。

 勝てる戦争のはずだったのは、彼らにとって自信を持って言えることらしい。


「現に首都以北では、我らは帝国の進軍を食い止めています。もちろん、首都周辺よりもさらに険しい山道に助けられていますし、帝国軍は首都の統治に人手を割かれている。とはいえ、こちらも軍の主力を失った中で持ちこたえている」


 現在の戦況はその言葉の通りだ。このボンドルへ続く山道のあちこちで、ラロシエリ軍は帝国の進撃を抑えている。

 首都があっけなく陥落したことを考えると、驚異的な粘りだ。


 理由は、追い込まれた兵士たちが全力を出した、だけじゃないだろう。



 そこに市民団体なるものが出てくる。


「戦争よりも平和を。軍備よりもパンを。そう主張する団体が数年前から首都に出てきました。戦争は何も生まず、命を奪うだけの愚かな行為だと主張しました。子供を戦争に行かせない国にしようとも」


 気持ちはわからなくもない。戦争なんか無い方がいい。平和が一番だ。

 その考えが行き過ぎるのが問題で。


「団体は年々勢力を伸ばしました。市民の賛同者が増えたのです。彼らは開戦後も同じ態度でした。武力に武力で応じるのは愚かだと叫び、反撃の準備をする城に大挙して押しかけたり、城門前に集まって兵士の出入りを邪魔しました。無理に押し通ろうとすれば、軍の横暴だと被害者ぶって騒ぎ立てる。軍が他国よりも自国民に剣を向けたと」


 そんなことをすれば、軍は首都から出られない。有利な場所で反撃する前に敵に接近される。


 有効な反撃ができなかったのは、そのためか。

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