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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第8章 女将軍

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8-14.ガリエルの策

 咄嗟に立ち上がる。今すぐにでも祖国へ帰り、なにか出来ることを探さないと。


「待たれよ。気持ちはわかるが、あなたひとりが動いても戦況は変わらない」

「ですが」

「私も帝国の横暴は許せない。単に戦争を厭っているわけではない。ラロシエリを飲み込んだ帝国は、いずれ同盟を破棄してこの国に攻め込むでしょう。婚姻で築いた同盟だが、あの皇帝が重視するとは思えない。皇后となったフィネチア様もだ」


 政略結婚のことは、ジェスターにはよくわからないが、ガリエルの懸念は理解できた。

 帝国は拡大を目指し続ける。だからそれを挫くために、この戦争に苦戦するか負けてもらいたいと。


 しかし首都を落とされているのに、ここから勝てるだろうか。


「ヨナ様は事件に巻き込まれがちな性質を持っている。本人の意思によらず」

「そうですが、戦争に彼がなんの関係が」

「この際、ヨナ様が本当に巻き込まれていたかは、どうでもいいのです。そういうことにすれば、王家は帝国に侵攻の手を緩めさせざるを得ない。その間にラロシエリは反撃の準備に入れる」

「なるほど……」

「王都では、ヨナウス殿下の生存を皆が信じている。病による死から奇跡の復活をした聖人と、教会が広めている。王都をドラゴンから守り、漆黒の森では兄と共に魔物の脅威を消し去ったと、誰もが噂している。真実なのですが。漆黒の森に沿ってラロシエリに入ったという話にも、真実味が出る。……真実なのだがな」

「だからヨナは戦争に巻き込まれたと、堂々と言い張れる」

「帝国の今回の戦争に大義など無い。ラロシエリは一方的な被害者だ。ヨナウス殿下は民からすれば、非道な戦争に立ち向かう英雄に見えるだろう」

「英雄、か……」


 彼は本当にそうなってしまうのだろうか。望んではいないだろうに。

 だが、それで祖国が救われるならジェスターにとっても利がある。


「公爵家から人を出して、ラロシエリでヨナウス殿下が戦っていると民の間で噂を流す。そして王家に、帝国に停戦を願い出るよう差し向ける。ジェスター殿。あなたもそれに協力してほしい。ペガサスはラロシエリに生息する動物。そして目立つ。あなたの話を、王都の人々は聞き、広めるだろう」

「……はい。わかりました。祖国のために、出来ることをします」

「ありがとう。ヨナ様と、世界の平和のために共に励もう。ですが、今日はこの城で休みなさい。長旅で疲れているだろうし、噂を広めるためにもう少し話し合いをしたい」

「わかりました。何からなにまで、ありがとうございます。ヨナは、あなたのことを尊敬しているようでした。その理由がよくわかります」


 それを聞いたガリエルは、柔らかな笑みを見せた。



――――



 ジェスターの訪問を受けた師匠は今頃、僕を使って帝国の足を引っ張る策を考えていることだろう。

 仮に僕がラロシエリにいなくても関係ない。いるという噂を使えば、師匠の思惑通りにいく。


 ラロシエリのためというより、将来のライディアル王国、そして自分の領地の安寧のためだ。彼も本気で動くはず。


 僕はとっくに巻き込まれている。そして師匠の願いも叶えたい。


「僕はこの戦争、参加するしかない」

「わかりました。では、わたしも全力でお守りします」

「もし危ないって思ったら、みんなは逃げていいけれど」

「まさか。どこまでもヨナ様のそばにいます」

「おう。今更寂しいこと言うなよ」

「まさか戦争に巻き込まれるとは思わなかったけどね。でも、ヨナくんと別れるなんてありえないわ」


 僕は周りに恵まれたな。

 特にティナは、いつも僕を守ろうとしてくれる。


 素直に嬉しい気持ちと、そんな彼女を僕の方からも守らないとと思った。


「そういうことなので公爵。僕の名前、好きに使ってください。あと、これでも腕に覚えはあるので、戦闘も少しならできます」

「あの。ヨナ様。戦場に立つのはお勧めしません」

「……近衛兵がこう言っているので、あまり派手な活躍は期待しないでください」

「かしこまりました。戦場に出ずともあなたの腕が役に立つことはありますよ」

「どんな形で?」

「街の治安維持です」



 というわけで、翌日。


「ヨナ! そっち行ったぞ!」

「わかった! でも追いつけるか不安だな!」

「頑張れ!」

「キアに先回りして欲しいって意味なんだけど!?」

「アタシはあっちに逃げたのを追う」

「あー! わかった! じゃあティナとゾーラは追いかけて! 僕は先回りしてはさみこもう!」

「了解です!」

「ま、待って。あたしは無理。ちょっと休ませて!」

「ゾーラさんしっかりしてください! 泥棒が逃げちゃいますよ!」

「無理よ! この街走りにくいの! 坂と階段ばっかりで!」


 山の中にあるからね。


 薬屋に泥棒が入って逃走したとのことで、僕たちが追いかけることになった。


 これが治安維持の仕事。本来街を見守り事件が起これば駆けつける兵士たちは、今は街の防備に回されていて、手が足りない。

 だから冒険者が治安維持の仕事を担うわけだ。街の冒険者に、協力を要請する依頼がギルド経由で回っているはず。


 僕みたいな、街の為政者にとって扱いの難しい立場の人員にさせる仕事としても適切というわけだ。

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