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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第8章 女将軍

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8-7.ヴィルレイン

 ヴィルドーゾはこの戦争でハーレムの拡大を目論んでいる。コンランドに命じて、略奪の中でいい女を見つければ確保していた。奴隷にするつもりか。

 特に、ラロシエリに女の軍人や兵士がいれば、積極的に捕虜にする方針になっているらしい。当然抵抗されるだろうが、それを屈服させ服従させるのがヴィルドーゾには気持ちがいい。


「悪趣味だ。こんなことのために、わたしは戦争をしているのではない。祖国の発展のために……」

「エルマは真面目ね」

「ヒンナ……」


 部下ではなく友人として声をかけ、笑みを見せるヒンナ。


「たしかにわたしも、この戦争に乗り気じゃない。でも、わたしたちで少しでも人道的に正しい方向に動かせる。そうは思わない?」

「それは……ああ。ヒンナの言う通りだな」

「でしょ? だから頑張りましょう。嫌な戦争ならさっさと終わらせて、あのボンクラ第二皇子を国に戻して、マシな統治者が派遣されるのを祈りましょう」

「そうだな。ヒンナが早く戦争を終わらせたいのは、結婚を急ぎたいからだろうが」

「バレてたかー」


 悪びれずもせず笑うヒンナ。彼女は国に将来の夫を待たせている。彼は軍人ではなく城で働く文官。しかし見ていて恥ずかしいほどに仲睦まじい。

 恋人のいないエルマは羨ましくて仕方がない。


 ふたりは、戦争が終わったら結婚しようと約束を交わしていた。


 だからこんな戦争は、さっさと片付けるべきだ。



「将軍。兵士が城内に突入できたようだぞ」


 隣に馬がきて、それに乗った少年が声をかけた。


 帝国の第三皇子、ヴィルレインだ。


 兄で総大将であるヴィルドーゾの補佐として従軍している。皇帝が命じたことだ。


 まだ十二の少年なのに戦場を見せるとは。皇帝の考えはわからないが、覇権主義を唱える彼は息子にも英才教育を施したいと考えているのだろう。


 帝国は今後も戦争を続ける。ヴィルレインも将来は指揮を取るのだから、今から戦争を知るべき、と。

 次期皇帝の第一皇子は結婚直後で、子作りに励んでもらわねばならないために留守番だが、本来なら皇帝は彼にも出陣して欲しかったのだろう。


 そして残念ながらヴィルレインも、戦争には乗り気ではなかった。暴虐の限りを尽くすヴィルドーゾも厭い、こうしてエルマの近くにいる。


 優しい子だ。こういう子こそ将来の皇帝に相応しい。


 容姿もそうだ。彼の美しい、あるいは年相応の可愛らしい風貌は周囲から愛されている。もっともそれは、跡目争いに参加しないであろうと目されているが故の見くびりもあるだろうけれど。

 けれどこういう美しい者こそ、民に愛される理想の皇帝になると、エルマは日頃から考えていた。


 いや、それよりも戦況だ。戦場で物思いに囚われすぎた。


「そのようですね。我々も中に向かいます。ヴィルレイン殿下は危険なので、後ろへ下がってください」

「いいや。俺もついていく。将軍の近くが一番安全だ。それに俺は兄とは違う。戦場の後ろでテントの中に引きこもり、手柄だけ自分のものにするような兄とは」


 周囲から低く見られていることをヴィルレイン自身も感じて気にしており、彼はこういう大人ぶった話し方をする。

 そんな彼の意思を蔑ろにはできず。


「承知しました。ヒンナ。なんとしても殿下をお守りしろ」

「は!」


 友人の顔から副官の顔へ一瞬で変えたヒンナは、ヴィルレインの隣に自分の馬を動かす。


 そして一斉に駆け出した。ヴィルレインは小さな体で馬を巧みに操り、全力で駆けるエルマと彼女の軍についていく。敵兵からの攻撃に怯みもしない。

 馬で城内に踏み込んだエルマたちは、王の姿を探す。包囲された城の中で、王と王妃は逃げずに兵を指揮しているという情報が入っている。最後まで首都や国民と共にあろうとする心意気は、敵ながら称賛すべきだ。


「非戦闘員は傷つけるな! 反撃する者だけ殺せ! 王はどこだ!?」

「報告します! 謁見の間で、敵兵が守りを固めていると」


 伝令の報告。王はそこにいるな。あくまで抵抗して、王としての誇りを見せるつもりか。


 ヒンナとヴィルレインを従えて謁見の間へ走る。豪奢な扉の前で兵士たちが盾を構えて徹底抗戦の姿勢を見せていた。その数、数十。

 こちらの軍勢の方が圧倒的に多い。他のラロシエリ兵は、既に戦で斃れたわけだ。


 彼らはこちらを睨みつけ、一歩も引く気がないらしい。


 前衛の兵士たちをかき分けて前に出たエルマは、馬の上から彼らを見る。城内を馬で闊歩して床を汚していること自体、彼らには腹立たしいことだろう。

 申し訳なさはある。それでも戦わねばならない。


「君主を守るために死すら恐れない彼らの雄姿を決して忘れるな! そして敬意と共に撃破せよ! 狙うは王座ただひとつ! かかれっ!」


 号令と共に帝国兵が殺到する。もちろんエルマ自身も先陣を切る。こちらに突きつけられる槍を剣で払いのけ、馬の前足で槍の持ち主を蹴る。

 鼻に直撃した。衝撃で敵兵は勢いよくのけぞり、鼻から出た血が弧を描いた。エルマは無防備に晒された彼の首に剣を振った。研ぎ澄まされた刃が皮膚と肉と血管と気道を切り裂き、骨までは断ち切れずに首の半ばで止まる。


 剣ごと死体を引きずる形になった馬はしかし突進の勢いを緩めずに、後ろにいた敵兵に突っ込んだ。エルマも馬上で死体ごと剣を振り、敵兵にぶつける。仲間たちも次々に殺到。


 前と後ろからの圧は、わずかに後ろの方が勝った。全力で押してくる帝国兵に、数で劣る敵兵たちの体勢が崩れ、背後にある扉にもたれかかる。

 重厚そうに見えるのはただのデザイン。城門とは違って敵の侵入を防ぐための扉ではないそれは、鎧を着込んだ大勢の兵士の重みに耐え切れず壊れた。


 謁見の間に、兵士の一団が倒れ込む。敵味方混在していた彼らは、我先にと起き上がり敵勢力の誰かを殺しにかかる。


 それらを馬で踏みつけながら、エルマは王座へ接近した。剣に食い込んでいた死体は、さっきの衝撃で落ちていた。刃についた血を振り払って部屋の中を見る。

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