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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第8章 女将軍

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8-4.帝国兵との戦闘

 その中で少女は必死に声を張り上げ助けを求めた。随分と切迫した様子で嘘には聞こえない。

 それに侵略者って? 帝国が?


「ああくそっ! みんな! 来てく!?」


 兵士が近くにいるらしい仲間に呼びかけようとしたが、その口を闇が塞ぐ。


 仲間が来られると面倒だからな。呼びかけ自体は止められなかったから、駆けつけるかもだけど。

 その兵士の頭に矢が突きつけられる。近づいた僕は、彼の恐怖に染まった顔を見た。


「あなたは敵ね! 死ね!」


 英雄アンリは至近距離から迷わず矢を放ち、兵士の目に刺した。そこから脳まで一気に貫いたらしく、彼は絶命。鎧が倒れてガチャンと音を出した。


「ちょっ!? なにやってんのよ!? 帝国を敵に回すことになったわよ!?」

「え、あ。な、なによ! 悪いことしてる相手は倒すしかないでしょう!?」

「そうかもしれないけど!」


 ゾーラも、こいつが帝国軍であることはわかっているらしい。


 他国の領内で少女を追い回すのは、明らかに非合法なことであることも。


 だからこの男は、悪と見なして良いのかもしれない。


 けれど、帝国は強大な国だ。安易に敵に回していいものじゃない。手遅れかもしれないけれど。


「あ、あの。ありがとうございます。でも、彼らはまだ追ってくるでしょう」


 少女がおずおずと話しかけた。ずいぶんと不安そうな面持ちなのは、こちらを味方と信じていいのか自信がないからか。


「みたいだなー。こっちに足音が来てるぜ。鎧を着た重い足音。そいつのお仲間で間違いないなー」

「よし! 殺しましょう!」

「待って」

「なによ!? 今更止めないで!」

「ずっと止めたいとは思ってるけど、今はその場合じゃない。ひとり殺したんだ。追いかけてくるなら残りも殺すしかない。でも、こっちから行くのは得策じゃない」


 どこかは知らないけど、敵の拠点があるはず。そこには兵士が大勢いる。

 そちらに近づきたくない。


「迎え撃つ。いいね」

「待ち伏せね! わかったわ!」

「というわけで、みんな木の陰に隠れて」

「もふもふは難しそうだけど」

「頑張れ。できるだけ後ろにいて」


 僕はといえば、死んだ兵士の体を引きずって、敵が来る方向から見えやすくする。それから落ちている木の枝を拾って木の陰に隠れた。


 足音の主はすぐに来た。同じ鎧を着て、槍で武装した兵士だ。

 彼らは死んだ仲間を見て微かに声を上げて、しかしすぐに駆け寄るでもなく、一度足を止めて周囲の警戒に入った。


 不用意にこっちに接近してくれれば嬉しかったけれど、都合良くいかない。相手もプロか。


 隠れたままの僕が手を上げて合図すると、アンリが矢を放つ。姿を隠すために距離をとっていたのもあって、狙いが甘い。先頭の兵士の首筋を掠めたけれど、刺さりはせず無力化には失敗。


「敵だ! あそこにいる! 警戒を怠るな!」


 兵士たちの注意がこちらに向いた瞬間、彼らは上を見ていなかった。頭上に伸びる枝からキアが落ちてきて、最後尾のいる兵士の兜を掴んで引き倒す。落下の勢いもあって地面に叩きつけられた兵士は抵抗する暇もなくナイフで喉を切り裂かれる。


 反射的に後ろを向いた兵士たち。キアの近くの男は槍を構えようとしたが、そこに近くの木の幹から伸びた闇の蔓が巻き付いた。他の兵士たちの足にも地面から生えて巻き付いて、こちらに背を向けたまま動けなくなる。

 強引に引きちぎったり、槍を振ってキアを傷つける前に、僕たちは駆け出した。


 先頭にいた兵士は僕の接近にも気づいて槍を振ったが、それを木の枝で切り裂く。穂先が宙を舞い、兵士はそれを目で追いかけた。

 木の枝で槍が両断されるなんて奇妙すぎる現象だ。目が向かないわけがない。


 それが、彼が目にした最後の光景だった。


 接近した僕が兵士の首を切り裂く。頭を失った体が音を立てて倒れて、それを踏み越えながら兵士の中に潜り込んだ。


 周り全部が敵。だから剣を振るだけで確実に傷つけられる。

 目についた敵から次々に斬り裂き殺していく。胴体が貫かれ、腕が吹っ飛び、上半身と下半身が生き別れになった。


 敵は足を拘束されて逃げられない。反撃するにしても向きを変えられないから満足にできない。


 それでも気合で槍を振ろうとした者がいた。しかし彼はティナやキアに攻撃を止められ、そして僕に殺されることになる。

 もちろん、一番気合が入っているのはアンリで。


「突撃ー!」


 もふもふを駆けさせる。兵士のひとりが馬に蹴られて倒れた。足は固定されているままだったから、おかしな方向に曲がってしまう。折れたな。

 その痛みと足が自由に動かない状況でのたうち回る兵士を、もふもふが踏みつけた。そして馬上のアンリが弓を引く。


「あなたがなんのつもりかは知らないけど! 女の子を襲うなんて酷い! ぶっ殺してやるわ!」


 英雄に似合わない物騒な言葉と共に、上から矢を放つ。数本の矢が彼の命を奪った。


 敵は全滅。数体の死体が残った。


「この近くに他の足音は聞こえない。今のうちに逃げるぞ」

「ヨナ様。血まみれですが、お怪我はありませんか?」

「ない。全部返り血だよ」

「でも、その格好は目立つわね」

「だね……」


 敵の真ん中で剣を振り続けたわけだから、周囲の返り血を浴びた僕の様子は酷いものなのだろう。


「こいつらがあの子を追っていたなら、諦めるとは思えない。この死体も見つかって、そこから追跡される。アタシたちもな。ヨナ、上着は捨てろ。血が滴って、手がかりになる」

「わかった。ちょっと寒いけど」

「代わりにコートを着ましょう。顔はこれで拭いてください」

「ありがとう」


 血まみれの上着を脱いで捨てる。追っ手には見つかるだろうけど、どこにでもある子供サイズの服。追跡の手がかりにはならない。

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