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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第7章 雪山の村人

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7-46.何かの罪

 僕は子供で、ギードとも今まで仲良くやってこられた。でも彼は構わず鎌を振り下ろす。その動きはブレブレで素人丸出し。大工仕事は得意でも戦いは苦手か。空振りした鎌を握る手を蹴り上げれば、あっさりと手放した。鎌が宙を舞い、誰もいない所に落ちる。


 ギードはなおも戦意を喪失せず、崩れた体勢のまま僕にぶつかろうとした。単純な体当たりを正面から受ける気にもなれず、横に避けながら軽く足を引っ掛けて転ばせる。雪の積る地面に顔面から倒れた。

 これで、敵わないと理解してくれるのを期待した。


 なのに様子が変だった。倒れたギードはもがくだけで起き上がろうとしない。動きも変だ。痙攣するようにピクピクと無意味な動きを少ししてから、止まった。顔が見えない彼の頭の周りの雪に、血が染み込んで赤い色が広がっていく。


「え」

「ギード!?」


 カトレアや他の若い衆が駆け寄ってギードを起こす。彼は額から血を流していた。倒れた先に、運悪く大きな石が尖った面を上に置かれていて、頭を強く打った。


「家に運べ!」

「血を止めろ! 布を巻け!」

「なんでこんな所に石が……」

「ギード! ギード! いやぁ!」


 村人たちも駆け寄って大混乱の中、彼は近くの家に運ばれていった。

 僕も手伝おうとしたさ。けど、涙を流しているカトレアが睨みつけた。拒絶の意志はよくわかる。


 彼が殺意込みで仕掛けたんじゃないか。実力の差も理解せずに諦めず突っ込んだ結果だ。

 そう言いかけたけど、耐えた。そうすべきだと理解はしていた。


 でも、こんな所に石なんか無かったはずだ。誰が置いたんだろう。


 子供のいたずらかな。



 ギードはその夜、亡くなった。



 拠点にしている家に撤退した僕たちは、居心地の悪さを感じていてみんな黙っていた。

 ふと、ティナが近くに来て静かに尋ねた。


「ヨナ様。ギードさんのことですけれど」

「うん」

「死んで良かったと思いますか?」


 彼女の顔を見た。その意図は理解できる。僕は素直に、思ったことをそのまま答えた。


「正直、殺したいって思った。ティナに止められなかったら反撃してたかもしれない。あの人の言い分は身勝手だ。……でも、殺すべきじゃないとも思ったんだ。殺さずに解決できるなら、その方がいい。そうするつもりだった」


 ギードが死んだのは、不運な事故だ。


「はい。わたしも同じ考えです」


 そう言って僕の頭を撫でるティナの目は、とても優しかった。



その夜、カトレアが尋ねてきた。散々泣いたらしく、目は真っ赤に腫れていた。


「この村はこれから、どうなりますか? 父たちは何も考えられないと言っています。十年間、向こうから獲物が来る環境に慣れきってしまい、村の狩人の技量は衰えるばかりです」

「それでも、狩人たちは猟に出るべきよ。それで生計を立てないと。じゃないと、食料が手に入らない。今まで得ていた他のお金もね」

「……狩りができれば、村は今の暮らしを維持できますか?」

「狩れればね。でも無理よ」


 勝手に獣が歩いてきたこれまでと同じ成果を、今後出せるわけがない。狩人の技量不足もあるけど、そもそもこの周囲の森に獲物が少なくなっているのが大きい。

 ブブルカは多くの獣を配下に入れて、昨日の戦いで殺してしまった。だから獲物の数自体が減っている。だからこの周囲の森では狩りの成果は出ない。少なくとも、獣の数が回復するまで。


 原因は昨日の戦いだけじゃない。ブブルカが獣を多く村に供給したために、森の獣の数は十年もの間、本来よりも減り続けていた。

 これから、その反動が来る。


「狩りは多く殺せばいいってものじゃない。獲物は森からの恵みで、森の生き物はバランスを取って成り立っているんだ。無意味な殺しはするなと、狩人の間では教えがある」

「そんなこと言われても」

「ああ。今更だし、理不尽だよな。特に若い者は、何も知らなかったんだから」


 何も知らずに、村の現象を好意的に受け入れて、無邪気に夢を持った。それって何の罪なんだろう。

 でも、カトレアたちはその罰を受ける。


 食料も富も得がたくなった村には、まず飢えが来る。その犠牲になるのは体力のない子供たちだ。豊富だった食料をあてに、周りの村よりも多く生まれた子供たちは、飢えて数を減らすだろう。

 これまで富の力で、近隣の村や町から物資を買い集めてきた。これも途絶えるばかりか、一転して優位な点を失ったこの村への風当たりは強くなるだろう。救いの手が差し伸べられることはない。

 元の寒村に戻るだけではない。より貧しい村になる。


「わかりました。元はといえば、わたしが現象の調査をお願いしたのが悪かったのでしょうか。だからこうなった」

「いいえ。ブブルカは、最初から村のことなんか考えてなかった。いつかは来ることだったの」

「……はい。父たちも、それは理解していると思います。その上で、あなたがたのことを許せなく思っています。余計なことをしてくれたと。……わたしも同じ思いです。皆さんに恨みを向けるのは間違っていると理解していますし、申し訳ないと思っています。しかし、他に恨みを向ける相手が見つからない。そして、皆さんの強さを知っているから、勝手に恨む以外に何もできない。それが一層恨めしい」


 絞るように口にしたカトレアは、こちらに深々と頭を下げた。


「報酬を頂ければ、冬の間のお世話はします。必要な物があれば言ってください。だから、他の村人と関わるのはやめてください。わたしとも……あまり話さないで」


 返事も聞かず、カトレアは出ていった。

 その胸に、もう名札はついていなかった。



 外ではまた雪が降り、激しくなっている。明日も、明後日もそうなのだろう。

 その合間を縫って狩りに出かけて、食料になる獲物を探す。なるほど、確かに動物の数は少なくなって見つけにくい。それでもジェスターとキアがいれば、飢えない程度の肉は手に入れられた。それに森で山菜も手に入った。


 こうして自給自足の生活をして、僕たちは冬を越した。


 その間、カトレアたちと和解するような、都合のいいことは起こらなかった。


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