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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第7章 雪山の村人

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7-36.魔物の喧嘩

 村長が隠したがるわけだ。魔物と関係を持っていたことが公になるのはまずい。町に知られればブブルカの討伐隊が組まれて、村も咎を受けることになる。罰はどれほどのものか。事情を知っていた大人たちがみんな死罪になり、村自体が無くなることもあるだろうか。

 ブブルカは動物を集めて暴れさせる力を持っている。それを強化するために潜伏して村を利用していた。犠牲者も多い。それくらいの罰は下るだろう。


 これが、カトレアが村を大きくするために知りたかった真実。


「カトレアさんたちの夢は」

「うん。絶対に叶わない」

「どうするの? これ、知ってて無視はできないわ」

「町に知らせるべきだとは思う……」


 近くの町まで距離はある。雪はもうすぐ降り出す。撤退して洞窟に隠れて吹雪をやり過ごして、ジェスターに飛んでいってもらって町に知らせれば、兵士が洞窟に押し寄せてブブルカは討たれる。

 が、それは無理なようだった。


 向こうがこちらに気づいたから。


「人間よ。盗み聞きとは趣味が悪いな」


 ロロイスがこちらに近づきながら話しかけてきた。近づきすぎたな。

 仕方ない。こちらも姿を見せる。


「魔物同士であんまり不用心にペラペラ喋り続けてたから、つい聞いちゃったよ。魔物って思ってたより馬鹿なんだね。こんな話し、どこに耳があるかわからない外でやっちゃうなんて」

「貴様……」


 挑発し返せば、ロロイスは眉間に皺を寄せた。毛並みの向こうからわかるくらいに深い皺だ。


「人間と魔物が協力関係を作るのは、この前も見たことあるよ。向こうは少なくとも表面上は仲良さそうで、前向きな関係だったけどね。十年も洞窟に引きこもるなんて陰気なこと、彼女はしなかった」

「黙れ!」


 ブブルカも挑発すれば、そちらも怒り激高した。

 十年潜伏できた割に、堪え性はないらしい。血の強化が完了して、もう隠れる必要がないってことかもしれない。


「ロロイス! いい機会だ! もう一度派手な喧嘩をするぞ!」

「ああっ! 面白そうだ! 人間共に邪魔はさせない!」


 双方向き合い、己の願望を叶えるために動いた。


 ロロイスが天を仰ぎ遠吠えすれば、周囲の森のあちこちから遠吠えが帰ってきた。獰猛そうな狼の鳴き声が周囲から聞こえてくる。

 ブブルカも目を見開いた。こちらは声を上げる必要は無いらしい。直後に地響きが聞こえてくる。彼の背後にある洞窟からだ。


 大量の獣が洞窟から出てきた。熊や猪や鹿といった大型の獣だけでも数十頭いる。

 獣の総数は百を超えるかも。もちろん、兎や狸のような小さな動物も含めてだけど。


 一様に興奮状態で、けれど互いを攻撃し合わない。ロロイスと狼には襲いかかっていた。


 もちろん、こっちにも殺到した。


「ブブルカ本人と、同じ血で狂った仲間は攻撃しないってことか。それ以外の生き物には容赦なく襲いかかる」

「周りに敵しかいない状況なら最強ね。でもあの獣、どこから来たのかしら。洞窟の中にあの数を隠すのは無理ね」

「洞窟の向こう側も外に繋がっていて、貫通してるんだろうさ。森のより深く、人が来ない所に、そうやって時間をかけて獣を集めていた」

「なあ! 呑気に話してる場合じゃねえって! どうするんだ!?」

「ヨナ乗って! あなただけでも助けるわ!」

「わたしたちが死ぬみたいな言い方しないでくれますか!?」


 まあ、大量の熊に殺到されれば死ぬだろうけど。

 そのつもりはない。


「もふもふの上にはティナが乗って。ジェスター、上からこっちに来る獣を攻撃してほしい。アンリもできるだけ撹乱して。それから矢を一本」

「ええ!」


 羽と鏃を折った矢を地面に放り投げたアンリは、ティナを引っ張り上げてもふもふを進ませる。こっちに突っ込んでくる熊に正面からぶつかっていく。向こうが怯めばと思ったが興奮状態では意味がなかったか。

 ぶつかる直前、もふもふは跳躍。熊の頭を踏んづけてさらに跳び、その後ろにいた猪の背中に着地。また跳んでを繰り返して、獣たちを撹乱。踏まれた獣はさすがに足が止まり、しかし後続は止まらないから接触して倒れる。周りの獣も巻き添えを食らう。


 アンリは馬上で、周りの獣に矢を放っている。ティナも剣を振るって、近くに迫る鹿の角に絡めて引き倒していた。剣術でこんなことも出来るんだ。


「僕たちは壁際に」

「ねえ! アンリちゃんたち頑張ってるけど、これまずくないかしら!?」

「ははっ。大変そうだなー」

「壁に登れるからって他人事みたいに言わないでよ!」


 洞窟の入り口が多いということは、岩陰も多い。殺到する獣に囲まれるよりは、壁を背後にして迎え討つ方がいい。


 ちょうど凹んでいる箇所があった。ふたりなら入れる大きさ。単なる平坦な壁を背にするより、こっちの方が警戒すべき方向が減る。

 キアは壁面の凹凸を掴んでスルスル登っていく。僕もゾーラもそんな芸当はできないから、それぞれ武器を構えて対峙するしかない。


 ジェスターが上空から矢を放ち、こっちに殺到する獣を先頭から倒していく。後続を巻き込んで倒れれば、到達まで時間がかかるけど、いずれこっちにくるわけで。


「防御お願い」

「いいけど! なんであたしがこんな役回りなのよ!?」

「頑張って」

「ええ! やるけどね!」


 杖を構えたゾーラが、目の前に闇のカーテンを作り出す。角をこちらに刺すべく突っ込んできた鹿に闇が絡みついて動きが鈍った。そいつの首を木の棒で切断、殺した。倒れた鹿の向こうに大きな熊の姿が見えた。


 すぐさまカーテンを消したゾーラは、鹿を跳び越えようとした熊の足に蔓を巻きつけた。勢いを削がれた熊は鹿の上にのたれかかるように倒れ、その脳天めがけて聖剣を突く。絶命した熊が、僕の目の前で壁面の凹部を塞ぐ壁の役割を果たして、僕たちはなんとか一息つくことができた。

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