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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第7章 雪山の村人

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7-35.生贄を選ぶ村

 村は豊かになった一方で、最初は誰を生贄に捧げるかで大いに揉めた。


 村のためになるならばと、若い男が志願することもあった。泣く娘を無理やり連れて行くこともあった。

 毎年、どこの家から生贄が出るのか戦々恐々とするようになった。公平にくじ引きで決めるべきだと意見が出て、ある年から取り入れられた。


 運良くその時期に旅人が訪れた時には、彼らを騙して生贄にした。もっとも、旅人の多くは用心深く、うまくいく年は少なかった。


 この生贄決めを、村の子供たちは知らなかった。ブブルカが来た時に家に隠して会話を聞かせなかった時からずっと、村の秘密を知らないまま大きくなった。それで良かった。


 さすがに大人になれば、真実を話す必要も出てくる。前の村長が死に、次の代に引き継がれたように、村の秘密も引き継がれなければいけない。


 成長したカトレアくらいの年齢の若者たちには真実を話すべきだとも考えたが、できなかった。恵まれた特性で、村が町に変わることを夢見て話し合う姿がまぶしくて、大人たちは何も言えなかった。本当に必要になる時が来るか、偶然知る時まで黙る方針になってしまった。

 その方が都合のいいこともある。真実を知らない若者は騙されやすい。生贄にするには好都合だ。


 十年前と比べて村人には余裕も出来て、産まれる子供の数も増えた。そこから生贄を選べばいい。むしろ、生贄にするつもりで産むんで育てる子を作れば心が傷まない。そんな考えも出始めた。

 毎年の生贄選びで疲弊して、恩恵を喜ぶ。この振れ幅で、彼らの心はおかしくなっていったのかもしれない。


 今年の生贄はベティだった。たまたま、彼女の父親がくじを引いたため、そうなった。


 これで一年、村は安泰。食料に困ることはなく、毛皮が売れて、骨から作った肥料で春が来れば農業が出来る。子供はさらに産まれて、村は大きくなる。

 はずだった。



――――



「そんな……」


 村長たちの話しにカトレアと若者たちは、愕然とした顔を見せた。

 この村は町になる。そんな願望が何の上に立っていたのかを知って、言葉が出なかった。


 そしてブブルカなる魔物は、もうすぐ殺されるだろう。あの旅人たちは強い。獣が暴れまわる中でも確実に殺す。


 それで良いと思う心と、嫌だと願う心がふたつあった。ベティのような犠牲者は、もう出てほしくない。けれど村は……。

 周りを見たが、誰も何も言えないようだった。



――――



「とまあ、これが俺にあったことだ。俺は定期的に、雪で薄めた血を村まで転々と垂らしている。動物がそれに引き寄せられて、村の連中に捕まってるわけだ」

「腕から滴り続ける血はそれか。村人は今も生贄を?」

「ああ。どうやって選んでるかは知らないが、若い女が多いのは嬉しいな。この前のも女だった。かわいそうに、村の大人が何してるかも知らないまま連れてこられてたよ」


 ブブルカは愉快そうにケラケラ笑えば、ロロイスもつられて笑う。なるほど傑作だ。反映のために生贄を差し出す村か。犠牲になるのは何も知らない娘。笑わずにいられようか。


「あの娘を連れてきた男がな、今年もよろしくと言ってきた。媚びるみたいにな!」

「人間が魔物に媚びるか!」

「面白いよなあ。奴ら、この関係が永遠に続くと思ってる。必要なだけ貰えれば、後は用済みだってのになぁ!」


 笑いが止まらない。ブブルカめ、見ない間に面白いことをしていたようだ。

 何より愉快なのが。


「ブブルカ。飲んだ人間の血で、お前は強くなったのか?」

「ああ。より多くの獣を集めて、より激しく暴れさせられる」

「面白い! 前より本気の喧嘩、できるってことだよな?」

「期待してくれ。……ちょうど、観客どももいるようだしな」

「だな」


 ロロイスも気づいていた。冬の澄んだ空気の中、人間の臭いがした。


 物陰からこちらを伺っている。あの憎い人間どもだ。



――――



 調査がどうなるにせよ、この洞窟地帯で夜を明かすことは明らか。だから僕たちは洞窟内に薪を運んで、先に焚き火の準備をした。

 もちろん、ゆっくり休む暇もない。もう少ししたら雪が降り出すらしい。そうなれば熊の足跡も消える。足跡の先に現象の原因があるならば、場所は特定しないと。


 六人と二頭で足跡を追いかける。異変にはすぐに気づいた。足跡が熊のだけじゃない。いくつもの小さな足跡が、それを辿るようについている。


「狼の足跡だ。十体以上はいる」

「白い狼?」

「だろうな。奴らも現象に興味があるのか?」


 いずれにはよ放置はできない。狼に気づかれないよう慎重に前方を確認しつつ足跡を追う。


 やがてひとつの洞窟が見えた。そこに大量の狼を引き連れた狼人間と、対峙する魔物の男が見えた。


 狼人間の方がロロイスで、魔物がブブルカ。ふたりは旧知の間柄のようで、久々の再会を喜び合うように話している。会話が聞こえるまで近づいて、物陰に隠れながら聴く。

 あの村で起こっていたことを知れた。


 村長は神の恵みと言ってたけど、とんでもない。


「まさか生贄で成り立ってたなんてな」

「ホイの村と同じね」

「生贄を差し出していたのは同じだ。けど、ホラン様を名乗る男は見返りは与えなかった」


 神を名乗り、女と食料を捧げなければ災いが降りかかると脅したホラン様とは、根本的に違う。

 ブブルカは村に恩恵を与えて、村も喜んで受け入れていた。共生関係にあった。ブブルカ自身にも人を食う利点があった。


 ベティという娘もブブルカに食われたのか。

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