↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第7章 雪山の村人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

326/394

7-26.旅の話し

 僕はまだ熱があるから、家から出るなと厳命されてきた。窓から外の様子を見るしかできない。


「安心しろ。足の怪我も大したことはない。この程度の腫れならすぐに引く」


 ジェスターが僕の足を見ながら診断する。たしかに足首に噛み傷があり、赤く腫れている。立ち上がると少し痛い。けれど歩けない程ではないし、最初に比べれば腫れも痛みもマシになっていた。


「それは良かった。噛まれてゾンビになるとかより、ずっといい」

「ゾンビ?」

「前に行った町で、そんな事件に巻き込まれたんだ。死体が魔法の力で起き上がって人々を襲う。さらに強力になれば、噛み付いた人間をゾンビにしてしまう」

「魔法……そんな恐ろしい存在が、なんで」

「作ったのはゾーラの師匠だよ」

「なん、だと……」


 ジェスターとはだいぶ打ち解けて、砕けた感じで話せた。


 ゾンビ事件では苦い思い出もあったけど、それ含めてあったことを話した。

 すると、他の出来事にも興味を持ったらしい。昨日のカトレアと同じように、町の外に興味があるのかな。あるいは外国の町に。


 ジェスターはこの山一体から出たことがない。行動範囲は広いけど、大都市なんかは見たことがない。


 だから僕の話に興味を示した。もちろん僕の正体は隠して話したけど、楽しそうに聞いていた。


「そうか。いい経験を積んできたんだな。旅か。少しだけ憧れる気持ちはある」

「もちろん、仇を討つまでは森から出られないだろうけど、果たせたら旅に出るのもありだと思うよ」

「ああ。元から、狩人としての生活は捨てるつもりだったから」

「僕の話の中で、どこか行きたい場所はあった?」

「そうだな海が見たい」

「いいね。綺麗だったよ。見渡す限りの水と、そこに浮かぶいくつもの船。港の賑やかさも良かった。サハギンに襲われたりもしたけれど」

「海には海の敵がいるのだな。それでも興味深い。俺は山と雪しか見てこなかったから。それから、この国の首都も見たいな。祖国への愛着は当然ある、どんな場所なのか良く知らない」

「パタパタに乗れば、すぐに飛んでいけるだろうね」

「空を飛べるのは便利だな」


 ジェスターも窓の外を見ている。作りかけの馬小屋をパタパタが見つめていた。

 なぜか、その目つきが険しい気がした。


 ちなみに馬小屋は、もふもふとパタパタそれぞれの居場所が区切られている造りだ。隣り合っていて顔を擦り合わせることはできるけれど、相手の方には行けない。子作りができないように出来ている。

 ゾーラがその仕様は譲らなかったし、若い衆も賛成した。家畜は財産だけど、飼育するのに費用はかかる。無計画に増やすのはまずいというのは、村に生きる人たちの共通認識らしい。


「ああ。行きたいな、海に。ヨナは冬を越したらどうするんだ?」

「僕の異能の正体を掴むために、ジェイザックゆかりの地を巡る。この国にも伝説はあるそうだから」

「ああ。俺もいくつか知っている。案内してやろう」

「うん」


 窓の外で、馬小屋はあっという間にできてしまった。二頭それぞれの部屋に名札をつけて、それはカトレアたちに書いてもらった。読み書きの練習の一環だ。書き慣れていない下手な字だけれど、しっかり読める。カトレアたちは己の成果を満足げに見つめている。

 村の方を見れば、キアは今日も屋根の雪を落とす仕事をしていた。


 村長たちから怪しまれていても、軽々と屋根に登れる能力は重宝されている。少なからず感謝されているし、村人から頼まれてはお礼を貰っている。


「昨日の狼の襲撃。あれの根本の原因を調査してくれという声が上がったのも、ああやって村人と仲良くなったからだろう。警戒を解くには、友になればいい」

「……うん。わかる」

「ヨナにも経験が?」

「大嫌いだった兄と久々に再開して和解した時、今までの憎しみが嘘みたいに消えた。たぶん、村長たちとも同じことは起こる。警戒して敵意を向け合うだけが、人との関わり方じゃない」

「ああ。そうだな。ヨナ。どうも君は、随分と複雑な人生を歩んでるみたいだな」

「……かもしれない」

「いつか教えてくれ。旅の話と同じくらいに興味がある」

「ええ」


 もしこの先もジェスターと共に行動するなら、僕の正体も教えないとね。

 ジェスターはなおも、外をじっと見つめていた。キアを見ているのではなく。


「今日は狼の襲撃は無いな」


 呑気に会話をしている間も、彼は敵への警戒を怠らなかった。


「まだわからないよ。いつ襲ってくるかわからない」

「その通りだ。けれど確率は低い」

「どうして?」

「狼は意思を持って攻撃してきた。そして襲撃は失敗した。ならば、次はもっと準備をするはずだ。大軍勢を率いるとかな」


 それを、昨日の今日で用意はできないと。


「だから、もう少し時間をかけて行うはずだ」

「でも、そもそもなぜ、この村を襲うの?」

「わからない。敵の正体がわかれば推測もできるだろうが。何者なんだろうな。……ヨナ。旅の中で、狼の仲間になった男の話をしていたな」

「ホイのことだね。彼は確かに狼の中で生きていたし、今後もそれを願った」

「人間と動物が意思疎通できるのは、難しくないのかもな」

「アンリともふもふを見てたらね」

「俺も、パタパタとわかり合えた自負はある。だから、野生の狼を手懐けて軍勢にする人間もいるだろう」

「異能でだけど、魔物を手懐ける人間も見たことがある」

「そうか。ならば狼を手懐ける異能の人間かもしれないな。あるいは魔物かも」


 それはありえそうだ。


「とはいえ、まだ何もわからない。村を襲う理由も」

「詳しく調べるしかないか……村の現象との関係は?」

「わからない。来た方向が違うなら、今の所は無関係と考えるべきだ」

「狼が来た方向、僕は知らないんだけど」

「村人が話しているのを聞いた。あっちの方からだと。ちなみに獣が来るのは向こうだ」

「なるほど」


 僕たちが見ている窓の向こうで、今まさに村の大人たちが狩った獣を運んでいた。大きな猪だ。


「あれだけの獲物を手間なく仕留められる。近隣の村にとって羨ましくて仕方ないだろうさ」


 けれど、狩人たちの顔には不安の色も見て取れた。

 村に異変が起こっているのは間違いない。楽なはずの狩りに行った途中で、また狼に襲われないかと心配していたのか。


「この村の周囲に、正体不明な物が三つある。現象の正体と狼を操る何者か、そして白い熊だ」

「複雑だよね。それについて探るのも難しいと来た」

「なんとかなるだろう。こっちは空を飛ぶ手段を得たのだから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。