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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第7章 雪山の村人

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7-20.雪に埋もれて

 みんな即座に動いた。僕は剣を抜いて飛び出して走る。狼はカトレアを押し倒したものの、噛みつこうとした所を口に黒い帯が巻き付いて開けられなくなった。闇で出来たそれを外そうと躍起になっている間に、到達した僕に切り捨てられる。


「立てますか!? 状況は!?」

「十体以上の狼が来て! どうやら雪に紛れて近づいたみたいで! みんな襲われてます!」


 目を凝らせば、確かに村人たちが狼と戦っていた。悲鳴がいくつか聞こえる。

 村の端にいた僕たちは風の音もあって襲撃に気づかなかったのか。


「ヨナ様これを!」


 ティナが、薪をさらに割って細長い棒にしたものを投げて渡した。一度雪の上に落ちたそれを拾えば、体が熱くなった感覚と共に聖剣になる。


「こっちだ! 僕の後ろに隠れて!」


 長い農工具を振り回して狼を遠ざけようとしていた村人に声をかける。狼が彼に飛びかかる寸前に、僕は奴の横腹を蹴飛ばした。横転した敵の首を聖剣で切り裂いてから、次の敵を探す。


 二体の狼がこちらを睨んでいた。聖剣を向けて睨みつけてみたけど、狼は怯んだりしない。魔物じゃないからな。

 光線やら大地ごと切り裂く技やらも、今は出そうになかった。感情の問題だろうか。周りに人が大勢いる村の中でぶっ放そうだなんて気は起きないけど。


 威圧も虚しく、狼は飛びかかってきた。ただし片方だけ。もう片方は足を闇の蔓に絡め取られて跳躍に失敗。

 僕は飛び込んでくる狼の姿をしっかり見極めて、回避しながら胴体を剣で両断した。


 もう一方の狼をティナが殺しているのを見ながら、別の狼を探す。数頭で、村の若い女を囲んで壁際に追い詰めていた。


 昨日の狼よりも統制がされているように思えた。昨日のは、何かから逃げている途中で僕たちと遭遇したわけで、戦う意思があったかも怪しい。けれど今日のは、明確に人を襲う意思と連携を感じさせた。


「こっちだ!」


 狼を引きつけようとしたけど、奴らは反応せずに娘の方に襲いかかった。悲鳴があがり、うずくまる娘に狼が噛み付く。

 そのうちの一頭の背中に聖剣を刺し、尻の方へ動かし胴体を引き裂いた。次の一頭の首も跳ねる。更に一頭へ狙いをつけようとして、別の狼がこっちに気づいて襲いかかった。


 そいつは聖剣を振って殺せた。しかしその間に更に数頭、僕へ噛み付く。足や腕に痛みが走る。厚着していて本当に良かった。が、このまま噛まれ続けるつもりはない。


 狼の重さで体が自由に動かない。が、ここは壁際だ。なんとか動いて、右手首に噛み付いていた狼を壁に激突させて、さらに僕の体で挟み込むことで口を離させた。すかさず腕を動かし狼を真っ二つにする。壁も多少切れたかもしれないけど、知ったことか。


 同時に、頭上から大量の雪が落ちてきて、僕は足に噛み付いている狼ごと中に埋まってしまった。


 屋根の上の雪が衝撃で落ちたのは理解できた。しかし急に視界が真っ白になったことに混乱してしまう。なおも悪いことに、足を噛みつかれていたこともあって、雪の重さで僕は転んでしまった。

 枝を手放してしまったが、それどころではない。自分が仰向けうつ伏せどっちに倒れたのかも覚えておらず、上下がわからない。


 口を開けば冷たい雪が入ってきた。息ができない。必死に手足をバタつかせて雪から逃れようとした。足も想定していたよりも自由に動いた。噛みついていた狼も埋まって混乱したのは同じらしい。

 不意に手が空を掴んだ。雪じゃない。上はこっちか。急いで身を起こして雪から脱出した。


 目の前に狼がいた。一足先に雪から逃れていたらしいそれが、僕の喉笛に噛みつこうとして。


 同時に、上から放たれた矢が狼の首を射抜き、一瞬にして命を奪った。


 助かったと安堵する気持ちと、上から矢が来ることへの疑問が同時に浮かんだ。

 雪上に倒れるように上を向けば、白い雲を背景にジェスターの顔が見えた。


 戻ってきたんだ。


でも、なんで飛んでるの?



――――



 何事もなく夜を明かしたキアたちは、前日の約束通り白い獣の痕跡を探すことにした。

 正直、キアは気が乗らなかったけれど。痕跡があったとして、それはジェスターの仇ではない。さっさと帰りたかった。


 それに、空には厚い雲が浮かんでいた。


「雪が近いぞ」

「そのようだな。……わかるのか?」

「空がどうなれば雪が降るのかなんか、何回か見てればわかるだろ」

「俺は何年もかかったぞ。まったく。これだから天才ってやつは」

「アタシ別に天才じゃないからな。空自体は何年も見てるんだよ。森に住んでたから。だからなんとなく雰囲気でわかるっていうか」


 そんな会話をしている間も、ジェスターは周囲の木々を確認していた。獣による真新しい傷があれば、そこから足取りを掴めるかもしれない。

 それっぽいものは見つからなかった。ジェスターも諦めて帰ろうとした、その時。


「もふもふ? どうしたの?」


 アンリの心配そうな声に、そちらを見る。


「どうした?」

「もふもふがね、落ち着かないの。さっきからずっと、何か探してるみたいで」


 確かに、キョロキョロと視線を彷徨わせている。なんだろう。こうなったことは見たことない。

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