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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第7章 雪山の村人

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7-18.白い獣の目の色

 ところで、気になることがひとつ。


「ジェスターは、恋人さんを殺した獣を見たわけではないのよね?」

「ああ、そうだ。だが目撃証言は多いから、どんな姿をしているかは知っている。巨大な熊だ。普通の熊よりも倍ほどの大きさがある。体毛は雪のように真っ白で、目は真っ赤」

「それは強そうね。でも、見たわけじゃない」

「それがどうした?」

「雪山の亡霊って呼ばれてる生き物も、さっきジェスターたちが見た白い生き物も、ジェスターの探してる敵と一緒とは限らないのよね?」


 ジェスターは雪山の亡霊こそ憎い熊だと思って追っていたけど、同一の獣とは限らないってことか。


 もちろん、こうやって野宿するはめになった理由の、白い影についても同様。


「それは、そうだが。でも、奴がこの村を襲ったのは確かだ。それにさっき見たのも」

「アタシも見たけど、さっきのは目が黒かったぞ?」

「……それは確かか?」

「おう。アタシだって森の暮らしは長いんだ。見間違いはしない」

「そうか……」


 どうやら森には、白い獣は複数体いるらしい。


 見当違いの敵を追いかけてしまったことに、ジェスターは落胆した顔になった。


「ま、まあ! いいじゃない! 村の家畜を襲ったのは、確かに白い熊でしょうから! 敵が近くにいるのは間違いないわ! 明日こそ、奴を追い詰めて殺しましょう!」

「いや待て。明日は村に帰る」


 元気づけたいアンリの気持ちはわかるが、聞き捨てならない言葉は訂正する。


「なによ! ジェスターの願いは叶えたいじゃない!」

「それは同意だけど、やるならもっと準備してからだ。敵を探す手がかりもない。なにより、戻らなかったらヨナが心配するぞ」

「それは……駄目ね。ジェスター、明日は一旦戻りましょう」

「まったく。戻るのは同意だ。けれど雪が止んだら、少しだけ周りを探索させてくれ。奴の痕跡があるかもしれない。……寝床を知るヒントが得られれば、狩りに一歩近づく。

「あー。まあ。それくらいならいいぜ。けど長くは探すなよ」

「恩に着る」

「じゃ、早いところ寝ようぜ。交代で見張りを立てるんだよな?」

「最初は俺が起きよう」

「そうか。じゃあ遠慮なく」

「もふもふも寝るわよ。小屋と違って寒いかもしれないけど、我慢してね。……もふもふ?」


 漆黒の馬は洞窟の外を見つめていた。みんなそちらに目を向けて息を潜めた。敵が襲撃してくるとか、遭難者が入り込んでくるとかを警戒するけれど、何も起こらなかった。

 念の為洞窟の入口付近まで行って外を見たが、めぼしいものは見つからなかった。もふもふも、すぐにそっぽを向いてしまう。


「なんだったんだ」

「気のせいとかじゃない?」

「人騒がせな馬だな。おっと。睨むなって」


 馬だって何かに気を取られる。それが大したものじゃないこともあるだろう。

 何もなくて良かったと言うべきか。


 その後は特に緊急事態が起こることもなく、キアたちは夜を過ごすことができた。



――――



 雪山の中に、白い獣が佇んでいた。視線の先には、倒された大量の狼。

 ああ。なんてひどいことを。逃げていった先で、野蛮な人間に鉢合わせして殺されるなんて。


 たしかにあの狼は力で無理やり従わせたものだ。けれど、信頼関係は得られ始めていた。なのに。なのに。


 殺したのは、この近くの村の人間か。


「許さないぞ、人間ども。友を奪ったばかりか、彼らまで……」


 白い獣は唸るように呟いた。



――――



 夕飯の時間には、雪に吹かれながらカトレアが戻ってきた。話に夢中で吹雪に気づかなかったと言う彼女を、村長は鼻で笑った。夢物語なんか忘れて、真面目に働けばいいのにと。

 カトレアも当然反発して、夕飯の席は嫌な雰囲気になってしまった。せっかくティナが作ってくれたのに。


 まあ、親子の対立が深まったのは僕たちの来訪のせいだから、他人事みたいに言うのは間違ってるのだけどね。


 とにかくこの状況は使える。


「カトレアさん。王都の話を聞きませんか?」


 夕飯の後、部屋の隅でいじけたように父に背を向けているカトレアに話しかけた。


「王都?」

「はい。僕もティナもゾーラも王都出身です。この国一番の大都市です。この村がいずれ町になるとしたら、王都ほどの規模になるのは無理にしても、王都の街づくりは参考になるかなって」

「是非! 是非聞きたいです!」

「そう言うと思ってました。このこと、カトレアさんの仲間にも話すべきでしょうか」

「そうですね! みんな聞きたがるとと思います!」

「聞いたんですけど、みんなで集まる場所があるとか。明日、案内してもらえますか?」

「はい! お父さんたち、わたしたちが話し合いをするのを良く思ってないから、隠れ場所を用意したんです! 酷いですよね、自分たちは獣が来ることを利用しながら、村のこれからを考えるわたしたちは許さないなんて!」

「そうだね。何か変だよね。……僕たち、現象の解明を諦めてないんだ。だから、この村で村長の目をかいくぐるために、その隠れ場所で住むことも考えているんだけど」

「! いいと思います! そうですよね。お父さんたちの言うことなんか聞かないでいいです!」


 狙い通りに食いついてきた。村の中で協力者が得られるのは大きい。村長たち主要派とは完全に対立することになるけれど。

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