↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第7章 雪山の村人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

316/394

7-16.怪しい村

 村で帰りを待っていた人々への報告は、僕たちがする前に見張り役の男がやってしまった。

 しかも村長や村の主だった大人たちに、こちらに聞こえないように話していた。僕たちはといえば、女衆が寒かっただろうと家の中に招いたり、温かい飲み物を出してくれたりして、村長から引き離されてしまった。


 火に当たっている間も、こちらを監視する視線を感じた。


「なんか、この村怪しいのよね。全員が悪い人ってわけじゃないけど」

「ですね。ヨナ様とくっついていちゃいちゃしてる間も、そんなこと話してたんですよね?」

「いちゃいちゃはしてないけど」


 村人が向けるのは、敵意ではなく恐れ。秘密がバレることへの危機感だ。

 こちらへ申し訳ないって顔をしている者もいた。考えの統一はされていないのか。


「秘密がなんなのか、強引に探るべきじゃないかもね」

「でも、もう手遅れだよ」


 既に警戒されているし、仮に雪山の亡霊が村の秘密に関わるなら、ジェスターたちがそれを追った時点で何か掴むかもしれない。

 村長たちが、秘密が暴かれるのを恐れて僕たちを殺しにかかる可能性はあって、僕たちは出された飲み物に口をつけなかった。


「そこまで思い切るとも考えにくいけどね」

「念には念を入れましょう」

「じゃあ、どうする? このまま村に滞在するのは危険よ」

「そうだね。でもやりようはある。まずは味方を作ろう。すいません。カトレアさんはいますか?」


 監視の女たちに、こっちから話しかける。表面上はこちらを労る立場なわけで。無碍な対応もできず困惑した顔になった。少し迷ってから、わからないと答えられたから、僕たちはお礼を言って家を出た。女たちが、もう少しゆっくりしなさいと声をかけたけれど、丁寧に辞退した。どうせ村長の家だろう。

 吹雪の中を、村長の家まで歩く。あるいは帰ると言うべきか。


 しかしカトレアの姿はなかった。村長は村の主だった者と話し合いをしていて、僕たちの到来に驚いた顔をしていた。


「カトレアは、村の若者と一緒にいるでしょう。村の端の空き家かと」

「空き家?」

「住民がいなくなった家がありまして、そこを勝手に使っているのです。毎日のように、集まって夢を語っているらしいですが」

「そうですか」


 村長が今やってるように、カトレアだって今後のことを話し合いたいことはあるのだろう。村のこれからを背負う若者として、仲間内の溜まり場みたいなものか。


「大した内容ではありません。ただの妄言です。大きくなった村で何をしたいだとか、町になったらどんな施設を建てるだとか。変わりばえのない話を飽きもせず、毎日やっています。仕事や家事も放り出して」


 村長の言い方には嘲笑の感情すら込められていた。

 自分たちは必死に村の今後を話しているのに、若者たちは実現性が低く中身のない夢物語に熱中している。滑稽で仕方ないのだろう。


「カトレアたちは、すぐに戻ってきます。吹雪が強くなっていますしな。よし、我々も今日は解散しよう」


 村長の言葉に、集まっていた村人は立ち上がり、それぞれの家に戻っていく。吹雪だけど、この程度は慣れている様子で迷いなく外に出ていった。それぞれの家までは近いものな。

 奥さんが夕飯の用意をしようとしていた。村長は頷きながらも不満げな顔をしていて。


「まったくカトレアの奴は。女なのだから飯の準備を手伝うべきなのに。なにが村の将来だ。子供が、それも女が口を出すものではないのに」


 ブツブツ文句を言いながら、疲れたとばかりに寝転がる。

 そんなのだから父として好かれないんだよとは、言えなかった。


 一方、奥さんの様子を見たティナは迷いなく声をかけた。


「夕飯、今日もわたしがやりますよ! 昨日のうちから仕込んでおいたパンもありますから! 召し上がってください!」


 恐縮する奥さんから包丁を取り上げ、夕飯作りに取り掛かる。

 食事も自分たちで作る方が安全だ。


 やがてカトレアが帰ってきた。自身をよく思ってなくて睨みつけている村長に、カトレアからも睨みつける。


「良さそうね。村長たち村の主導部はこちらを良く思ってないけど、カトレアたち若者はそれと対立している。味方に引き込めるわ」

「うん。拠点にできそうな空き家も見つかったしね」


 後で声をかけよう。


 外を見れば、さすがに近い家々に行くのも躊躇うほどに雪は激しくなっていた。カトレアたちのいた空き家のことも知りたいけど、行くのは無理か。

 キアたちのことも心配だな。



――――



 風も強くなり、横殴りの雪に当てられながら、キアはジェスターを追いかける。

 亡霊と思しき白い獣のいた位置に来た。足跡も残っている。しかし姿はどこにも見つからない。


 足跡も雪ですぐに消えるだろう。諦めずに追いかけようとしたジェスターだけど、進行方向にアンリともふもふが来た。


「ジェスター落ち着いて! ヨナたちもう村に帰ったわよ!」 

「帰った!? どういうことだよ!? アタシたちもすぐに戻れってか!?」

「いいえ! 野宿することになるって言われたわ! なんか英雄の旅みたいで格好いいわ!」

「呑気だなおい! 見えてるのか! この雪! あと風!」

「困難に立ち向かってこそ英雄よ!」

「意味わかんねぇ! おいジェスター! なんか言ってやれ! お前も野宿することになるんだぞ! いや何も言うな! そもそもお前のせいでこうなった!」

「……すまない」


 意外にも、ジェスターは素直に謝った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。