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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第7章 雪山の村人

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7-11.面従腹背

 やがて日が暮れて、ギードたち若者はそれぞれ家に戻っていく。その道中も、村の未来は明るいとか、俺たちで町を作るとか、そんな会話をしきりにしていた。

 村長も戻ってきた。そしてカトレアや彼女の母お手製の夕飯が振る舞われた。飼っている牛を潰しての肉料理は、なかなか美味しかった。スープも温かい。


「冬場でも冷たい食事をしなきゃいけない集落は多いわ」


 ゾーラは僕を挟んで反対側にいるティナを警戒しながら、出された食事の違和感を伝えた。

 温かい食事が出たのは、こちらの歓迎を意味するのではない。


「普通は薪を節約しなきゃいけないから。けど、ここはそうしていない」


 そう。村の豊かさを示すためだ。


 暖炉を見れば、炎が煌々と輝いている。


「特性のおかげで儲かってるのね。だから金の力で、周りの村や町から薪を買い集められる。家畜やその餌もね」

「快適に冬を越せるね。滞在するだけならいい場所だ」


 そんな村の村長は、調査を行うと聞いて険しい顔をした。


「カトレア。お前から頼んだのか?」

「はい。わたしたちの故郷を立派にするためには、謎の現象の理由を解き明かすのが一番だと思うの」

「余計なことをするなっ!」


 突如声を荒げて一喝した村長に、僕たちは目を丸くした。


 周囲から見られていると悟った彼はすぐに落ち着きを取り戻す。


「これは失礼。学者先生。娘がわがままを言ったようで、申し訳ございません。あまり余計なことはしないで頂きたい。この村のことは、この村のなかで終わらせたいのです」

「でもお父さん」


 カトレアが口を開くが、村長にギロリと睨まれて黙ってしまった。村長は、再びこちらに語りかける。


「獣が捕まえてくれとばかりに、フラフラと村にやってくる。これは昔からあったことで、長老たちは神からの恵みと言っている。学者先生。他所から来た人に関わって欲しくないのです。もし不用意に手を出して神の怒りを買えば、その責任を負えますか?」

「神、ね。大きく出たわね。神のやることに人が介入できるとは思わないわ」


 村長の脅すような口調に、ゾーラは平然と答えた。とはいえ喧嘩するつもりも無い様子で。


「ま、そこまで言うなら、あたしたちも大人しくしておきますわ」


 こちらに目配せしながら村長に伝える。


 面従腹背。なんか横柄な態度の村長は、これでも村の責任者で越冬の間お世話になる関係だ。だから表立っては逆らわないが、こっそり調査はする。


 ゾーラのことだ。村長の鼻を明かすことを調査の動機と考えていてもおかしくはない。


 実利は無くても気持ちがいいものな。というか、隠し事をされるのは気に食わない。向こうに明かす気がないなら、こっちから調べるだけだ。


 それに隠していることが、なにか非合法だったり非人道的なことだった場合は、ちゃんと解き明かさないといけない。


 ジェスター含めて、みんなが同意して少しだけ頷いた。

 ただひとり。


「むぐー!」


 目配せが通じなかったアンリが抗議しようとするのを、ゾーラは先手を取って口を塞いで防いだ。


 その様子を村長は訝しげに見ている。道楽で旅をしている愉快な若者たちの変な行動で見過ごすわけではないか。


 しかし関わらないと言うなら、深く追求して関係を悪化させるのも悪い。僕たちだけならともかく、ジェスターは今後も村に関わる人間だ。優秀な狩人で、嫌われたくはないのだろう。

 疑っている様子だけれど、村長はそれ以上何も言わなかった。


 カトレアも同様だった。打ちひしがれた顔を見せつつも、父が怖いのか何も言い返さなかった。



 夜は、さすがに人数分のベッドがあるはずもなく、床に雑魚寝しろと言われた。仕方がないか。

 外ではびゅうびゅうと吹雪の音がする。これを聞きながら、僕は眠りについた。



 翌朝。降り続いていた雪は一旦止んだ。いつまた降ってくるかわからないけど、束の間の晴れ間が見える。


「すごい! こんなに雪が積もってる! すごいすごい! あはは!」


 うず高く積もった雪に大はしゃぎのアンリが、そこに飛び込んだ。


 村の現象の調査は隠れてやるとは、昨夜寝る時にゾーラから改めて告げられたらしい。だからすっかり機嫌を直して、初めての光景を楽しんでいる。

 手足を大きく広げたまま雪の上に寝転がり体を沈み込ませている彼女は、そのまま手足をバタバタさせて雪を舞い上がらせる。


 僕も雪の上に踏み出した。体重で足が沈み込むけど、地面には到達しなかった。それだけ分厚く積もっているのだろうな。


 足元が不安定で歩きにくい。なるほど、これでは隣の村へ行くのも時間がかかるし、移動中に吹雪になれば森で遭難するだろう。だから移動の危険が高すぎる。

 雪で道が閉ざされるとは、こういうことか。


「すごいですね、ヨナ様。こんなの初めてです」 


 王都でこんなに雪が分厚く積もることはなくて、ティナもどこか興奮気味だった。実のところ僕も同じ気分だろう。


「うん。初めての景色が見られるなら、それだけで旅に出た意味があるよね」

「はい。ヨナ様と一緒に見られて、嬉しいです」

「僕も……うわっ!?」


 不意に雪の塊が飛んできて、僕に当たって砕けた。

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