↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第7章 雪山の村人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

306/390

7-6.ジェスター

「あー。温かい。いや、冷たいけど、まだ温かい……」


 熊の死体に駆け寄ったキアは、毛皮に抱きついて生前の体温を感じていた。死んだからすぐに冷たくなるだろうけど、外気と比べれば温かいらしい。

 それは一旦忘れて、男に向き直る。


「ヨナです。色々あってライディオン王国から旅をしています」

「ジェスターだ。この近辺で狩人をしている」


 自己紹介して、握手を交わす。ティナたちもそれぞれ名を名乗った。


 この熊はやはりジェスターの獲物で、冬眠に入らずこの近くの村を襲った個体だという。


「人の食べ物の味を覚えると、そればかり食べようとするからな。そうなった熊は殺すしかない。この森には、あちこちで村が被害を受けている。依頼を受けて殺すのが俺の仕事だ」

「依頼?」

「やっていることは狩人だが、所属はギルドの冒険者だ」


 ジェスターが懐から取り出したのは冒険者の登録証。


 所属を見れば、このラロシエリ王国の冒険者だとわかる。それはそうとして、僕が見慣れたライディオン王国の登録証とデザインが同じだった。


「この近くの国ならどこも、冒険者の登録証は似たようなものよ。国際的な身分証明書として使えるの」

「そうなの?」

「旅人には国境を越える人も多い。そんな人が、違う国に行くたびに身分証を作り変えるのは面倒でしょう? 各国のギルドが協定を結んで、共通のものとしてるの。その方が管理が簡単だし、国境付近で多くの冒険者を動員する必要が出た時、それぞれの国から人手を集めやすい」

「へえー」


 それは知らなかった。


 こちらも登録証を見せる。国は違えど冒険者仲間であることを知ったジェスターは警戒をやめた。両国は友好関係を結んでいるから、対立する必要はない。

 もちろん、僕が逃亡中の王子なのは内緒だ。


「なるほど、ジェイザックにまつわる地を巡っている、か。で、ここにも来たと。最悪の時期に最悪の格好で」

「いえ。僕たちは寒くなることを想定していましたから」

「そうだな。ひとりだけ、雪山を舐めた奴がいたと」

「言われてますよ、キアさん」

「し、知らなかったんだから仕方ないだろ! てか、この熊の毛皮、剥がして着れないか!?」

「着れるわけないでしょ。あれ、剥がした後に洗ってるんだから。そのまま着たらあなた血だらけになるわよ。てか、あんたがそういうの一番わかってるでしょ?」

「わかってるけど! うあー! 寒いの嫌だ!」

「それに、お前たちみたいな倒し方では毛皮の質も落ちる」

「まあそうだよなー」


 消えゆく熊の体温に見切りをつけたキアが、再び僕に抱きつきながらジェスターに同意する。


「乱暴すぎるって言いたいんだろ? 引っ掛けて派手に転ばせて、地面に叩きつける。背中は擦り傷だらけだろうな。大きな傷を作ってるし、無駄に矢を刺してるのも良くないよな? だから毛皮の質は落ちる。殺す前に暴れさせたから、肉の味も良くない」

「わかってるじゃないか」

「まあ、これでも森の中で狩りをして暮らしてきたからな」

「その割には格好が」

「こんなに寒くない場所だったから。本当に寒い夜は近くの村の知り合いに泊めてもらったりもしたからな!」


 あっはっはと愉快そうに笑うキア。ジェスターは呆れた顔だ。


「わかっていて、これか」

「キアは詳しくても、僕たちは素人だから。突然出てきた敵を殺すのが最優先だったから」

「突然出てきたと言うが、この熊を呼び寄せたのもお前だ。森の中で騒ぎすぎだ。熊はお前たちの声を聞いて、餌だと思って駆け出したんだ」

「そうだったんですね。キアさんが悪いです」

「そうね。キアが温かい格好していれば、なんの問題も無かったわよね」

「キア、反省してよね!」

「なんだよー。アタシのせいかよ」

「まったく……この獲物を村に運ぶのを手伝ってくれ。依頼を受けた以上は、殺した証拠を見せなきゃいけない」

「わかった。アンリ、もふもふに手伝わせられる?」

「ええ! いいわ! 運んであげる!」


 というわけで、熊の体をもふもふに引かせる。腹を割いて胆嚢だけ持って帰る手間が省けたことだけは、ジェスターも感謝していた。

 さっきキアが見た、これから行く予定の村がジェスターの依頼元でもあった。


 熊を倒して会話をしている間にも、気温は下がり雪は激しくなっていく。風も吹いて、本格的に寒くなってきた。


 キアがもふもふのそばに行き、防寒着の下の毛並みに手を差し込もうとしてアンリに睨まれている。


「なんだよ! いいだろ! 手を温めるくらい!」

「もふもふが冷たいでしょ! 熊を引くので大変なんだから邪魔しちゃ駄目よ!」

「なんでだよー! ああそうだ! ゾーラ! 闇で布を作ってアタシを覆ってくれ!」

「お断り。疲れるから」

「うあー!」

「みんな。静かにして。また熊に襲われるかもしれないから」

「ジェスターさんに怒られるかもしれませんしね」

「いや、別に怒りはしないが……。ほら、あれが村だ」


 山あいの中にある、比較的平地な場所。そこに村はあった。


 この手の小さな村が、この付近にはたくさんあるという。村同士は山道で行き来するが、雪が積もるとそれも難しくなりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。