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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第6章 第五王子

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6-43.俺は騎士だ

 誰も起こさないよう、こっそり宿を出た。さすがにこの時間は、町は静かだ。自分の立てる物音以外、何も聞こえない。


 戦いに行ける者は、もう町を出ているのだろう。第二陣を編成するにも、きっと明日の朝になる。

 今から英雄村に行って、そこからガガイスのいる戦場まで、どれくらいで着くだろう。一刻も早く行かないと。


 ひとり出立するレダウスを見ているのは、星々だけ。


 そのはずだった。


「よう。レダウス。寂しいな」


 不意に後ろから声をかけられて飛び上がった。


「く、クリス。どうして」

「こっちのセリフだ。ひとりで宿を抜け出すとは、なんのつもりだ? いや、聞くまでもなかったな」


 腕組みして壁にもたれかかるクリストンは、こちらを咎めつつも怒ってはないようだった。


「ガガイスだったか。魔物の親玉の所にいくつもりだろう?」

「ああ」

「死にに行くのか?」

「まさか。生きて、魔物の野望を打ち砕いて、国や民を守る。それに弟も」

「そうか。だったら俺も行かないとな」

「駄目だ。危険すぎる。俺が独断でやることだ。クリストンを巻き込むわけには」

「だから寂しいって言ったんだよ。俺は騎士だ。王族を守る義務がある。それに巻き込むって言うなら、この旅に出た時点でとっくに巻き込まれている。頼むよ。お前が戦場に行くと知りながら、のうのうと眠るなんて無理だ」

「そうだな」


 クリストンにも、家の誇りがある。これを蔑ろにはできない。


「カレンは起きてないよな?」

「ぐっすり寝てる。ありゃ朝まで目覚めない」

「ヨナウスたちは」

「同じだろ。ほら、行くぞ」

「ああ。行こう」


 彼が一緒に来てくれるのは、正直嬉しかった。孤独な戦いよりは、友がいた方がいい。


 星に見守られながら、ふたりで町の門の方に向かっていく。門番は、魔物討伐に参加希望の冒険者だと説明すればあっさりと開けてくれた。



――――



 レリュードの証言は、冒険者たちの間にも一斉に広まった。

 すぐさまガガイスなる魔物を討伐する兵団が組まれたし、冒険者に協力要請が来れば皆こぞって参加を表明した。


 落ち着かないながらも年を越す準備を考えていたミレーネも、当然のように参加した。昨日の戦いの疲れが抜けていないのは事実だが、彼女は冒険者たちに慕われている自覚があった。


 英雄村に戻ってくる。昨日からずっと気が休まらないこの村に、多くの冒険者や兵士が集まっていた。

 深夜であり、魔物も寝静まっている頃だろう。そこに夜襲をかけて殲滅する作戦だ。


 前の英雄村の位置は把握している。森の中を進むのは簡単ではないが、やるしかない。


「みんな! 聞け! これより我らは、この町を苦しめてきた魔物どもへの反抗作戦を開始する!」


 冒険者たちの注目が集まる中、ミレーネは声を張り上げた。皆、ミレーネこそ冒険者のリーダーだと見ているから。


「我らは魔物共に屈したりしない! 敵がどのような攻勢を仕掛けてくるかは知らない。知る必要もない! その準備が整う前に、我らが奴らを叩き潰すからだ!」


 噂は聞いている。ガガイスの大規模魔法は、ジェイザックの子孫の命と引き換えに止められると。

 しかし、この村の人々はこれ以上犠牲を出したくないだろう。ミレーネが知っている事実として、ヨナウスとレダウスは王族だからジェイザックの子孫ではある。が、彼らを犠牲にさせる気もなかった。

 彼らは戦力として頼もしいが、ここにいないのに安堵する気持ちもあった。


 万一にでも、そういう犠牲で勝つのは避けたい。


「みんな、もうひと踏ん張りだ! これに勝って新年を迎えよう! 新しい年は、人が魔物に打ち勝つ年だ!」


 おう! と冒険者たちは気勢を上げる。気合い十分。今度こそ魔物をおとなしくさせられると信じている。


 ミレーネは冒険者たちの先頭を行き、森へ入っていった。夜の森は不気味なほど静かで、敵の襲撃に常に備えなければならず、神経をすり減らしてくる。ここは敵地なのだから。


 かつての英雄村は、昨日戦った娼館よりもさらに森の奥にあるとされている。進むべき方向はわかっているとはいえ、油断すれば迷子になりかねない。

 道中も魔物の襲撃があると見ていいだろう。松明やランプを持った者が大勢行軍しているのだから、魔物が寝静まっていたとしても目を覚ますに違いない。


 実際、数体の魔物に襲われたと報告が上がってきた。いずれも隊列の、ミレーネからは離れた場所のことだし、襲ってきたのも寝起きの小さな魔物ばかりだった。だからミレーネが動くことはなかったのだけれど、敵は確かにいるという事実が周囲の空気を張り詰めさせていた。


 鬱蒼とした森は夜空を完全に覆い隠し、星明かりも全く届かない。ずっと風景が変わらず、どのくらい歩いたのかもわからない。あとどのくらいで着く? どうやら先導する兵士たちも慎重に歩いているらしい。迷ってはいないはずだが、ずいぶんとノロノロした行軍となった。


 昨日はもっと早かったのに。ヨナの仲間のあの女は、格好は痴女だがすごかったのだな。


 周囲を見ても士気は下がっているとわかった。いつまで続くかわからない行軍に、早くも疲れが出ている様子。

 声を上げて元気づけようにも、それで魔物を起こす事態にはできない。どうしたものかとミレーネが考えていると。


 前方が騒がしくなり、彼女は強引に考え事から現実へ意識を引き戻された。金属音と人の声が聞こえる。


 大規模な戦闘が起こっていると見て間違いない。


「みんな! 気合いを入れろ! 始まったぞ! 音のする方へ行け! 向こうが迎撃を始めたに違いない! 戦場はもうすぐだ! みんなで町を救うぞ!」


 ミレーネはすかさず声を張り上げた。周りも、いよいよかと表情を引き締めた。


 もはや隊列など無く、冒険者たちは音の方へ一斉に駆けている。その先頭にミレーネはいた。

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