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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第6章 第五王子

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6-30.女の魔物

 なんで彼は転んだ? 見れば地面に穴が開いている。


「落とし穴だなー。と言っても、足を取って突撃を邪魔するくらいの浅いやつだけど」


 木の上から様子を見ていたキアが教えてくれた。確かに地面に、膝くらいまでの深さの穴がいくつか開いている。不運にもそれに足を取られた兵士が反撃を受けていた。


「向こうも攻められることを予想していて、迎え撃つために罠は仕掛けてたんだ。すぐに出来るやつだけどな」


 なるほど。本気で人を殺すなら、もっと深く掘って底に刃を上向きにした剣を置くとかの仕掛けをする。そこまで手の込んだ罠を、昨日の今日では作れなかった。

 それでも、落とし穴はちゃんと効果を発揮している。こちらが森に立て籠もっている間は使えなくても、攻勢に転じた途端に人を殺した。


 合戦は守ってる方が有利なものだ。


 向こうに、それを理解している指揮官がいる。


「オークの足跡がある所には落とし穴がない。草が生えてる箇所も安全だ。あれは見てわかる通り、あからさまに罠がある場所だなー。草で覆い隠されてるけど、どう見ても根が張ってなくて、単に置いてるだけだ」

「わかりにくいから、案内してくれない?」

「いいぜ。守ってくれよ!」


 木から飛び降りたキアが、落とし穴のあるらしい場所を避けながら建物へ向かっていく。キアが踏んだ箇所だけを歩いて、僕とティナとゾーラがついていく。

 落とし穴がない箇所には当然魔物がいるわけで、それは僕たちがしっかり殺していった。


 混戦の中、守るべき拠点である建物に迷いなく接近する僕たちを脅威に思ったのか、数体の魔物が迫ってきた。


 しかし焦りからか自分たちが作った落とし穴に嵌る者が数体。さらに残りも、こちらに意識を取られてしまった結果兵士や冒険者たちに背を向けてしまい、その隙にやられていく。


「みんな! 安全な道筋がわかったぞ! こっちだ!」


 キアの動きを見ていたミレーネが、その跡を辿るように歩きながら槍を引きずる。その跡がしっかり残り、他の兵士たちの道標となっていく。


 こうして、建物にかなり近づけた。ふと視線を感じて上を向く。

 屋根に魔物が座っていた。青い肌で、頭から角を生やしていて、背中には羽がある。顔つきは人間っぽくて、女らしかった。屋根の縁を掴んでいる彼女の左手の薬指に、指輪が光っていた。


 彼女は僕を真っ直ぐ見つめている。


 あの魔物の特徴は。


「お前がハレハを、村の娘を連れ去ったのか?」


 足を止めて声をかければ、魔物の女はニヤリと笑った。


「さーてね。ハレハって誰? 知らない。攫った女の名前なんか興味ないし」

「あ! 待って!」

「やだ!」


 自分がやったとほのめかして、魔物は建物の向こう側に消えた。

 いまそれよりも。


「ゾーラ、聞いた?」

「ええ。確かに魔物が話したわ。人間に近い順姿をしていて、ちゃんと知性を持っている。確認した。王都に報告を送れば大騒ぎになるわよ。学者がこぞってこの街に来る」


 存在は予想されていた。けど、本当に人前に姿を現すのは初めて。


「ふたりとも! お喋りしてる暇はないぜ! さっさと踏み込もう!」


 建物の扉の前まで来たキアの声。そうだ、周囲では戦闘は継続中。兵士や冒険者たちが押しているとはいえ、油断はできない。


「中に魔物の気配がある。扉を破ったら、一旦引け」

「わかった。僕がやる」


 木製の扉の向こうの様子は見えないけれど、キアは耳を当てて気配を察したらしい。聖剣で扉を切り裂き、鍵が掛かっていたそれをあっさり破壊。扉の板ごと蹴倒して、すぐに横に退く。中から矢が飛んできた。

 一瞬だけ中を覗けば、数体のオークが弓を持っていた。


「オークに弓を教えるだけの知性ある指揮官がいるのね」

「さっきの女?」

「村長の息子かも。確かめに行きましょう」

「でも、弓が」


 もう一度中を覗けば、オークがこちらに狙いを定めたから慌てて引いた。扉の両サイドの壁に張り付いて、突入のタイミングを測っていると。


「慎重すぎて日が暮れるぞ!」


 ミレーネが単身、扉の前に姿を表した。オークが矢を射るが、槍を振ってこれを叩き落とす。


「オーク共が正確に狙えるとは思えない! 狙えても防げる! 恐れるな! 敵は寡兵に過ぎない!」


 躊躇い無しに建物内に入り込んだミレーネは、巧みな槍さばきでオークたちを次々に倒していく。僕たちもそれに続いて入ろうとする。


「わたしは敵を殲滅する! お前たちは地下へ行って捕らわれた娘たちを助けてくれ!」

「わかった! アンリ!」


 建物から少し離れた場所で、オークをもふもふに蹴らせて倒しているアンリに声をかける。


「レダウスたちを建物の中に連れて行って! 娘たちが怪我してるかもしれないから!」

「ええ! わかったわ! レダウス! どこかしら!? あ! いた!」


 膝に矢を受けて動けなくなったオークに、クリストンがとどめを刺している。レダウスもその手伝いをしていた。カレンは負傷した冒険者を治していた。

 なんだ。みんなそれなりに動けているじゃないか。全くの役立たずというわけではなさそうだ。


 アンリから声を掛けられると、レダウスはすぐに来た。ミレーネの残した槍の跡を辿り、落とし穴に阻まれることなく建物に到達して。


「突撃ー!」


 楽しそうなアンリがもふもふごと建物に入る。横から飛び出してきたオークが蹴られて壁に叩きつけられていた。とどめを刺すのは僕の仕事か。


「ヨナ見て! ここから地下に降りれそう!」

「わかった! すぐ行く!」

「下の女の子たちは今も助けを求めてるのよ! 今行くわ!」

「待ってせめて気をつけて降りて!」


 英雄になりきっているアンリは、地下に続く階段を降りていく。もちろん、実際に降りてるのはもふもふだ。

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