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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第6章 第五王子

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6-20.バイコーン

 おそらくただごとではない。僕たちもそちらへ走った。木々の間を抜けて森の中に。外が近いとはいえ、魔物が潜む危険な場所だ。


 森の中に馬がいた。しかも、もふもふと同じくらいの体格をしていた。


 艷やかな光沢を放つ体毛は茶色で、鬣は真っ赤。それだけでも異様な姿なのに、馬の頭からは二本のねじ曲がった角が生えている。明らかに普通じゃない。たぶん魔物。

 これを魔物だと判断した理由はもうひとつある。別の魔物が騎乗していたから。さっきのオークと同じくらい立派な体躯のそれには、無毛の頭に短い角が二本生えていた。


 オークに似ているが、より強い種だ。たしかオーガと呼ばれているはず。


 角付きの馬とオーガ。それが、急に現れたアンリともふもふと睨み合っている。


 いや。角付き馬はもふもふを見ているが、オーガの方は横をチラチラと気にしているようだ。どうなっている?


 アンリはオーガへ弓を引き、いつでも放てるようにしていた。オーガたちの死角になるよう木に隠れた僕に目配せして、仕掛けるタイミングを測っている。僕も落ちていた枝を拾い上げた。


「なに? 魔物の生き残り? というか魔物が騎乗しているの?」


 駆けつけたゾーラが僕の隣に並び、小声で尋ねた。ティナやレダウス一行は少し後ろにいた。


「みたいだね。あの馬は?」

「バイコーン。荒々しい性格の危険な魔物よ。大昔の魔物との戦争で、他の魔物を乗せていたって記録は残ってるけど。実例は初めて見たわ」

「そうか。どっちも魔物なら殺すしかないね」


 簡単なことだ。


 わからないのは魔物の態度だ。奴はアンリと睨み合いをしている。今までの魔物なら、人間を見れば即座に殺しにかかる。

 横を気にしているのもあって、戦闘とは別の意図を感じさせるのが気になった。


 魔物を統率する知性ある者は確実に存在する。前にゾーラと話したことが思い出された。


 いや、考えるのは後だ。目の前の敵を殺さないと。ゾーラに目配せをして、上をちらりと見る。木の枝にキアの姿。僕は静かに移動して、バイコーンの横につく。

 次の瞬間、皆が一斉に動き出した。


 ゾーラの蔓がバイコーンの足に絡みつく。アンリはオーガの目を狙って射たけど、それは向こうが動いたから当たらなかった。代わりオーガの耳を掠めて血を流した。

 僕がバイコーンの側面に迫り胴を切り裂くのと、キアが落ちてきてオーガの肩に座りながら頭を掴むのは同時だった。


「こいつ! 死にやがれ!」


 さっきオークにしてたのと同様だ。耳から流れるオーガの血が太ももを汚すのも構わず、首にナイフを突き立てようとして。


「うわっ!?」


 馬上でオーガが藻掻いたために、キアは振り落とされてしまった。地面に着地したキアは無事だが、オーガはバランスを崩して落馬してしまう。というか、バイコーン自体が僕に殺されて崩れ落ちるところだった。


「みんな! 今のうちに!」


 わかっているとばかりに、オーガが起き上がらない内に闇の蔓が幾重にも巻き付いて動きを止める。さらに馬上のアンリがオーガの手足に次々に矢を放つ。僕とキアも奴の体を切り裂くべく接近して。


「オオオォォォォォォ!!」


 木の枝を見たオーガが咆哮を上げた。端から見ればただの棒でしかないそれを、オーガは明らかに警戒していた。

 聖剣と認識して、恐れている。


 それだけの知能があるってことだろうか。興味深いが、考え事は後だ。オーガを殺すべく駆け寄ったが、向こうも必死だった。両手を全力で動かせば、蔓がブチブチと音を立ててちぎれていく。手首から血を流すほどの食い込みを代償に自由になった手が僕に振るわれ、咄嗟に後ろに下がった。もう一方の腕はキアを掴もうとして空を切っている。


 両方の腕が動いて攻撃が不発に終わったのと同時に、第三の方向からティナが迫り、オーガの胸に剣を突き立て押し込んだ。

 心臓を正確に刺したその一撃でオーガの動きが止まり、森に静寂が戻った。緊張が解けて、誰かの息を吐く声が聞こえた。


 周りに他の魔物の気配はない。けど、いつ新手が襲ってくるかわからない。


「みんな。早く森から出よう」

「なあヨナ。その前にこっちに来てくれ」


 キアの声。そっちへ向き、歩み寄ろうとして。


「いや待て! やっぱ来るな! 止まれ! ええっと、ティナかゾーラ! 来てくれ! でかい布とか持ってるか!?」


 急に訂正されたから、足を止めた。


 なんなんだ。来いと言ったり来るなと言ったり。怪訝な顔をしてキアの方に向かうティナとゾーラ。


「なんですかキアさん。ヨナ様を遠ざけるなんて」

「いやでも。男が来ちゃまずいって思って。ほら」

「あー……この子は誰?」

「知らねえけど。オークに連れ去られた村人じゃねえか?」

「でしょうね。でもどうして」

「とりあえずゾーラさん。ローブ脱いで羽織らせてください」

「なんであたしの……まあいいけど」

「キアさんの服を剥いで着せてもいいんですけど」

「やめろ! アタシが裸になるだろ!」

「そういう格好してるキアさんが悪いです」


 なんとなく、向こうで起こってることはわかった。

 裸の女がいるんだな。


 たぶんオーガがチラチラ見ていたのは、その女なのだろう。このままでは連れ去られるか殺されるかしていたところを、もふもふが気づいて駆けつけた。


 もふもふが察知したのは女ではなくオーガかバイコーン。結果的に女を助けたことになったのは同じだけど。

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