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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第6章 第五王子

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6-15.心が醜いのは

 天井を見つめながら、またしばらく沈黙が流れた。レダウスのことが頭から離れず、眠れそうにもなかった。


「ヨナ様は」


 そんな僕を、ティナはいつも助けてくれる。


「レダウスのことをどう思いましたか? あの人は本気でヨナ様に謝っているように見えましたか?」

「見えた。レダウスは本気で反省していた。もう、僕に敵意を向けることはない」

「はい。わたしも同じ受け取り方をしました。あの人は真人間です。優しくて、そして善良な人に囲まれている。過去はどうあれ、今は真っ直ぐな心を持っています」

「それが問題なんだ。過去は簡単には離れてくれない。僕はきょうだいから散々に虐められた。それを忘れることはできない」

「はい」

「兄も姉も、父も王妃も、醜い心の持ち主だ。僕にとっては、そうじゃなきゃいけないんだ。だから殺せるのに」


 僕を殺そうとした奴らを殺す。過去の報いを受けさせる。そう考えながら旅をしていた。なのに、勝手にまともになるなんて。

 怒りをどこにぶつければいい?


 いや、わかっている。簡単なことだ。僕が気持ちを抑えて、レダウスの謝罪を受け入れればいい。彼は許してあげるべきだ。彼はきっと、王に相応しい器を持っている。民に目を向けられる。

 僕はそんなレダウスの変化を許せない。つまり。


「心が醜いのは、僕の方なんだ……」


 結局僕も、あの父の血を引いた男。卑怯で意地汚くて残酷で。醜い心の持ち主。それが受け入れられない。受け入れられなくても、事実は変わらないのに。


「家族を恨むのは大変ですね」


 ティナが体を転がして、僕の体に腕を回して抱きしめた。顔に、胸元の柔らかい感触が伝わる。


「本当にお辛いでしょう。あなたの気持ちを完全に推し量ることは、誰にもできません。わたしはこんなに近くにいるのに、お心を軽くすることはできない」

「ティナのせいじゃないよ。全部、僕が原因だから」

「ご自身を責めないでください。ヨナ様、あなたの苦しみに答えは見つかりません。きっと、ずっと悩むことでしょう。けれど、いずれ折り合いをつけることが出来るはずです。悩んでください。平気になる時まで、わたしはずっと側でお仕えしますから」

「うん……うん! ありがとう。ティナ」


 彼女の細い腕も薄い体も暖かかった。

 僕は幸せ者だ。



 翌朝。宿屋の食堂でレダウスの一行と鉢合わせした。


 ラルフはこちらに好意的だけど、クリストンとカレンは相変わらず警戒していた。当のレダウスは、僕とどう接するべきか困っている。

 僕の方から一歩、歩み寄った。


「レダウス。あなたがまともな人間になったこと、僕は信じる。昨日は刺してごめん。この町にいる間は、レダウスに刃は向けない」

「ありがとう。昨日のことはいいんだ。こちらこそ、これまでのことを改めて謝る。ごめん」


 そしてレダウスは僕に手を差し出した。正直、抵抗が無いとは言い切れない。けど折り合いはつけないと。

 その手をしっかり握り返した。



「なあゾーラ。あいつら誰だ? いきなり出てきて、なんでヨナと握手してんだ? なんとなく見覚えと声の聞き覚えがあるんだけど」

「ヨナのお兄さんよ。第五王子」

「王子!?」

「キア! うるさいわよ! ヨナと同じでお忍びなんだから静かにしなさい! 酔っ払って、何も覚えてないのね。後で教えてあげるから」

「おう。頼む」

「あと、今夜はお酒禁止よ」

「やだ! 飲む!」

「駄目!」


 なんか背後が騒がしいなあ。


 朝食をとっていると、槍を担いだミレーネがやってきた。


「どうやら、昨日よりは打ち解けたようだな。何より何より。とりあえず、今日はお前たちに魔物退治に参加してもらおうかと思っている」


 なんでミレーネが仕切るのかの疑問はあるけど、僕たちは滞在費用をそれで稼ぐつもりだったから異論はない。町で慕われている冒険者が同行するのも好都合だ。

 一方、レダウスの取り巻きたちは戸惑っていた。


「レダウス、本当にやるのか!?」

「危険です! わたしは承知できません!」

「俺たちがやる仕事じゃない。庶民に混ざって魔物と戦うなんて」

「クリス。庶民を見下げる発言はここでは控えろ」


 レダウス本人は乗り気らしい。取り巻きを宥めるように言い切る。


「旅に出る前に話したはずだ。危険があるかもしれない。だからお前たちに同行を頼んだ」

「でも、自分から危険に飛び込むのは話が違う」

「違わない。魔物と最前線で戦う兵士や冒険者の姿を見るために、この地を選んだ。これこそが目的なんだ。本当に戦って彼らの苦労を知るのは、何よりの学びになる。それに、みんなのことを信頼している。何があっても守ってくれると」

「レダウス……」


 信頼。そう言われると弱いのだろう。三人とも困った顔をした。


 もうひと押しと考えたのか、レダウスは続けた。


「それにヨナウスたちもいる。彼らは強い。これまで何度も危険を乗り越えてきたらしい」


 三人は気まずそうな表情になった。クリストンに至っては苦虫を噛み潰したような顔だ。


「レダウス。お前の考えは尊重したいし、彼らと諍いを起こすべきじゃないのは同意だ。けれど奴らは王子をふたり殺している。その強さでな」

「あ……」


 レダウスも気まずい顔になった。けれど覚悟が決まっているのは確かで、すぐに表情を戻す。


「とにかく方針は変わらない。これも国のためだ。手伝ってくれ」


 結局、三人はそう言われると折れるしかなかった。

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― 新着の感想 ―
とうとう自分の異常さを直接口にすることになりましたか……こここらどうなるやら、先が読めないです。
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