↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第6章 第五王子

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

256/394

6-9.魔物を指揮する者

 町の人の力にはなりたいよ。でも期待を背負いすぎるのも辛いというか。


「すまない。みんなのためと思って良かれと言ったのだが、ヨナには迷惑だっただろうか」


 食事中でも仮面を外さず、口元だけずらして食べる僕を見て、ミレーネは申し訳なさそうだった。


「いいえ。構いません。ちょっと戸惑っただけで。……こういう経験は前にもありましたし」


 さすがに今度は、貴族から求婚されるみたいな事態にはならないだろう。だからサラシオの件よりずっとマシだと思えば気は楽だ。


「そうだよそうだよ。ヨナは真面目に受け取りすぎなんだってば。もっと気楽にいこうぜ!」

「キアさんは気楽すぎるんですよ。ヨナ様は繊細なんです」

「こいつが繊細なわけないだろー。おりゃー! ヨナも飲めー!」

「うわっ!?」

「ちょっと!?」


 既に酔っ払ってるキアが僕に寄りかかって、酒の入ったコップを押し付けてくる。ティナが慌てて止めていた。

 周りも止めてくれるかと思ったけれど。


「ようミレーネ! こいつらが噂の英雄ヨナさんか!?」


 大柄な冒険者の男がやってきてミレーネに話しかけていた。ミレーネは有名人だから、周りに他の冒険者もやってくる。

 その対応に忙しい様子だ。


「ああそうだ。しかし聖剣使いのヨナは、こういう場が苦手なようでな。今は席を外している。仲間たちを、こうしてもてなしているわけだ」


 さっき僕に注目を集めてしまったのを後悔していたミレーネは、僕はいないと皆に伝える。


「けど! わたしも英雄だから! アンリーシャみたいな弓の名手になるから!」

「おおー!」

「いいぞ嬢ちゃん」

「頼りにしてるぜー!」


 アンリが代わりに場を盛り上げてくれた。可愛いだけの賑やかしでも、ここの客だって酔ってるんだから盛り上げ役にはなる。


「おらー。アタシたちは英雄の仲間だからな! もてなせ! 酒を持ってこい!」


 キアも僕から離れて町の冒険者たちの方へ向かった。気のいい冒険者は次々に酒を注文してはキアに飲ませていく。

 良かったね。飲み過ぎにだけは注意してね。


 狂騒に飲まれていく酒場だけど、なんとか僕個人に注目が集まることは避けられた。


「よかったじゃない。みんな元気になった。ヨナくんという希望を見つけてね」


 騒がしい店内で、僕の隣に来たゾーラがそっと話しかけた。


 たしかに町が沈んだ雰囲気じゃないなら、その方がいいけれど。


「僕は英雄じゃないよ。ジェイザックの子孫でも、まがい物」

「そんなこと言わないで。あなたは強い。魔物を相手に十分戦える。それで町の人が勇気づけられる。こうやって仲良くなれば、ジェイザックの調査も進むし聖剣もいつか見つかる。それでいいじゃない」

「うん。そうだね」


 後半は飛躍が過ぎるとは思うけど、ゾーラの言うことは正しい。聖剣探しは途方もなく遠い目標かもしれないけど、協力的な人を増やすことは必ず達成に繋がる。目標が遠いからこそ、足元をしっかりさせておく必要がある。

 そのためには、頑張って魔物を倒さないとね。


 それからふと、ずっと考えていたことを尋ねることにした。


「二百年前には、魔物が人間の世界に大挙して侵攻してきたんだよね?」

「ええ。その記録はあたしも知っている」

「今回の魔物の大量発生も、原因があるかもしれない?」

「断定はできないけどね。その可能性は高い」

「原因って、魔物の意思ってことはない? つまり、魔物の中に高い知性を持って、他の魔物を指揮して人間を襲わせている、みたいな」


 侵攻とはそういうことだ。魔物の中に指揮官がいて、人間の領地に攻め込ませていた。今回も、誰かが意図的に人間を襲わせているのかも。


 魔物に、そんな意思が備わっているのかは知らない。でも王都で戦ったドラゴンは、明らかに僕やグラドウスを仇敵の子孫と認識していた。

 たとえ、魔物を引き寄せるガラス玉にも引き寄せられるような薄弱な意思であっても、奴には奴なりの考えがあった。


ゾーラは少し考えてから。


「そうね。ありえると思うわ。少なくとも二百年前の侵攻には、指揮官に相当する魔物がいたはず、おそらくは言葉も話せるのでしょう。それだけの知能を持つ魔物はいるとされているわ。誰も見たことはないけどね」

「見たことはなくても、いる?」

「漆黒の森の奥は、人間が立ち入ったことがないのよ。まだ見ぬ魔物がいてもおかしくはないわ」

「そうだね」


 頭のいい魔物が、人間に悪意を持って攻撃を仕掛けている。目的は領土の拡大だろう。自分たちが自由に活動できる場所を広げるのには大きな意味がある。


 何を仕掛けるつもりか不明なのが不気味だ。連続して魔物をけしかけて人間を疲弊させる。それだけではないだろう。疲れ果てた時を狙って、大規模な侵攻をするに違いない。


 それに備えるか、事前に計画を挫くかしなければ。

 けれどこちらは、相手の計画がわからない。計画の有無も、敵が何者なのかも不明。


「しんどい状況よね。でも、やれることをやるしかない」

「うん」


 馬鹿騒ぎしている町の冒険者たち。悪い人ではないのは確かだ。

 守ってあげたい。


 さて、危惧していたことはすぐに起こってしまった。


「ヨナー。なんか、頭がぐわんぐわんするー。まだまだ飲めるけどー。ヨナむぐっ!?」

「ほら、僕の名前呼ばないで。飲み過ぎだよ」

「飲んでない飲んでない。酔ってもないからなー」


 明らかに酔っ払ってるキアがフラフラと危ない足取りでこっちに来た。倒れそうな体を支えてやる。


「ティナ、ゾーラ、支払いとかお願い。あとアンリも連れてきて。僕はキアを夜風に当ててくる」

「はい! あ、お金は町の冒険者さんが払ってくれました。英雄が来てくれたことのお礼だと」

「そっかー」


 奢ってくれるのは嬉しいけれど、それだけ戦うことを期待されてるわけで。もちろん戦うつもりだけれど、重い期待を寄せられるのは嫌だな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。