↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第6章 第五王子

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

249/395

6-2.カレン

 一体、学園の外で何が起こっている?


「レダウス。お前は何か聞いていないか?」


 こちらに向けられた質問に、レダウスは首を横に振るしか出来なかった。


「そうか。わかったことがあれば、すぐに伝えろ。告げ口は得意だろ」

「昔のことです」


 そんな不名誉なこと、今はしない。


 確かに小さい頃はそうだった。城で働く家臣や下働きたち、そしてヨナウスのことを見張っていた。そして何かあると父や兄に告げ口したものだ。

 ヨナウスが叱責される原因となるのが愉快だった。


 今考えると、実に幼稚で馬鹿げたことをしていた。政治の世界でこういう人間は信頼されないと学んだのは、学園に入ってから。


 早い段階で知れたのは幸いだった。なのにリードウスは過去を蒸し返してくる。


「ふたりとも。そこまでです」


 一瞬、険悪な雰囲気になったふたりを、フィオーラは宥めようとした。


 両者とも、ここで争うつもりはない。表情を和らげるのを見て、フィオーラは続けた。


「何かが起こっていて、不安なのはわたしも同じです。けれど、確かにここから出るべきではありません。それは父上がこちらを慮ってのこと。兄上、どうか堪えてください」

「わかっている。……ああくそっ。こんな時こそ、家族が団結せねばならないのに」


 悪態をつくリードウス。


 団結か。こういう言葉を彼は好んでいる。

 しかし納得はしたようだ。


「いいだろう。確かにここは安全だ。おい、ふたりとも。父上の言いつけは必ず聞くんだぞ。しばらくは学園から出るな。ふたりは俺が守ってやる」


 それが兄としての役目。


 自分の立場に酔っている、ロマンチストだな。


 それでもリードウスは、格好つけることで自分の中の不満と折り合いをつけた。プライドを保てたのだろう。話は終わったとばかりに立ち上がってガゼボを出る。

 庭園の外でリードウスの取り巻きたちが待っていた。フィオーラに付く侍女と同じ、気が合って将来の打算がある同学年たちを周りに侍らせているわけだ。


 こちらも人のことは言えないけれどね。


「じゃあね、レダウス。お父様の言いつけは必ず守ること。いいわね?」

「わかっています、姉上」

「よろしい。これ以上家族を失いたくないのです」


 優しいフィオーラも立ち上がり、侍女に片付けを言いつけてから立ち去った。


 レダウスもガゼボから出る。すると庭園の入り口付近で待っている女子生徒の姿を見つけた。長い銀髪が特徴的な清楚な雰囲気を持つ彼女は、こちらの姿を見て表情を輝かせた。


「レダウス様!」

「カレン。迎えなんて必要なかったのに」

「ごめんなさい。でも、リードウス様をもフィオーラ様も、お付きの生徒がいるではありませんか。レダウス様だけおひとりは、寂しいでしょう」

「俺はカレンのこと、取り巻きや使用人扱いしたくないんだ。友人として接してくれ」

「ありがたいお言葉です。では友人として、レダウス様をお待ちしておりました。早く会いたかったので」


 レダウスよりも背の低いカレンは、少し頬を赤くしながら上目遣いで見つめる。


 可愛い。


「そうか。カレンみたいな友がいて、俺は幸せだな。……ところで、例の件はどうなっている?」

「順調です。ラルフもクリスも準備万端とのことです。ですが、本気なのですか? 先程リードウス様の声がこちらまで届いていました。陛下は、レダウス様たちをここから出したくないと」

「だからだよ。出ることを許されないから、脱出する」


 心配そうなカレンに、レダウスはきっぱり言い切った。


 グラドウスの訃報が届いた時点で、国王カードウスから子供たちに、学園から出るなと命令が来ていた。その後テナンドウスの死に改めて命令があって、年末もそうしろと三度目の手紙が来ただけのこと。

 レダウスは最初の手紙の時点で、命令に背いて学校から抜け出す策を整えていた。そのために親しい友人たちに協力を要請している。カレンもそのひとり。


「せっかくの年明けだ。家族と共に過ごせないなら、ラルフたち親しい友といたい。城から遠く離れた地で友達と一緒に過ごすのは、初めての経験で楽しいだろうから。それに、これは将来のためなんだ」


 カレンに、学園を抜け出す目的を熱く語りだした。


「王族として国を良くしていくのに、学校の中だけで知れることは少ない。直接見なければ何もわからない。それも王都まわりの平和な場所じゃ駄目だ。……魔物との戦いの最前線に行く」


 レダウスは王子として将来を見据えていた。だから学園に引きこもるなど、彼にはあり得なかった。

 もっと広い世界を見なければ。国の現実を見て学ばなければ。


「国土を守るために戦う兵士や冒険者の姿を間近で見たい。将来、彼らのために何ができるかを学ぶために。それが俺にできる、国を守る使命だ」

「はい。レダウス様の仰ること、立派だと思います」

「ありがとう。今思えば、ガリエル公爵から剣術の指南を真面目に受けていれば良かった。兵士たちと関わるのに必須の技量。冒険者ならなおさらだ。彼らは弱い者の相手をしないだろう。本当に悔やまれる」

「冒険者の皆様とも、積極的に関わられるのですか?」

「ああ。そうしたい。彼らも王国の民だ。それに漆黒の森は実力者たちが集まる場所だから。有名な冒険者が大勢いる。ミレーネという女の冒険者が、特に強くて美しく、皆の尊敬を集めているらしい。男に負けないほどの腕力で、槍を振り回して魔物を狩ると評判だ」


 冒険者について語るレダウスは、自分に優しげな目を向けているカレンに気づいて言葉を途切れさせた。


「すまない。学園を抜け出すのは、自分のためでもある。失望したか?」

「いいえ。好きなことに夢中になれるレダウス様は素敵です」


 そう答えられて、レダウスの心の中は喜びで満たされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。