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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第5章 魔女の師

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5-45.死の中に埋もれる

 ヨナはこれまで、人を何人も殺してきた。たとえその中にアカナが加わったとしても、それは大勢の中の一部でしかない。

 彼は実の兄をふたり殺している。他の家族も殺そうとしている。


 彼らを印象という意味で上回ることはない。アカナにとっては人生最高の瞬間でも、ヨナにとっては大勢見てきた悪人のひとりでしかない。

 もちろん、そんな真実を言うわけにはいかない。けれど師匠をこのままにはできなくて。


「し、師匠。やめてください。こんなの、ま、間違ってる」


 朦朧とする意識の中、杖を支えに立ち上がりながら呼びかける。けれどアカナはこちらに冷ややかな目を向けて。


「黙りなさい!」

「あっ!?」


 立ち上がって杖を蹴飛ばしたから、ゾーラは再度床に伏すことになった。杖は手の届かない距離に転がる。


「ゾーラ! ゾーラ・アトキンス! あんたが不老の研究をしっかりしていたら! 彼は成長しない! あんたのせいよ!」


 血走った、憎悪のこもった目で見下ろす。


 違う。師匠はそんなことを言わない。不老なんて簡単に実現するものじゃないと理解しているはずだ。


 ヨナに狂って、自分の理想を叶えない全てが憎くなっている。薬の影響もあるのかも。


「歴史を学んで不老を妙薬の秘密を暴く? 少年が永遠に老いない薬を作る? ふざけないで! さっさとやってよ! なんで最高の男の子が出てきた時に! 出来てないのよ! この無能! 間抜け! 愚か者!」

「がはっ!? し、師匠、やめ……」


 癇癪を起こした子供みたいに暴れるアカナは、ゾーラの腹を力いっぱい蹴りつけた。それも繰り返し、何度も。背中を丸めて体を守っても、アカナは蹴り続けるのをやめなかった。


「所詮は無能な小役人の娘ね! 知恵を授けても何もできない! 大した成果は挙げられない! なのに! 一人前みたいに学者なんて名乗って! 異能なんて持って格好つけて! 前からあんたが嫌いだった! 異能も! 名字も! 無能な癖にあたしに無いものを持ってるあんたが憎かった! あんたなんて弟子じゃない! あたしは歴史学者であんたは魔法使いなんだから! 弟子なんかじゃない!」


 やめて。なんでそんなこと言うの。こんなの師匠じゃない。師匠はもっと穏やかで優しい人だった。


 この街に来て師匠は変わってしまった。狂ってしまった。理想の少年の銅像を作って、それに取り憑かれてしまった。


「彼を! あの子を! あのままにしてよ! 耐えられない! 早く不老の薬を出して! あたしには作れない薬を! 早くして! この五年間、あんた何してたのよ!? 何も成果を残してないくせに! 何をしてたのか! ほら! 言いなさい!」

「僕を! 助けてくれた!」


 罵声を遮るように、ヨナの声が聞こえた。


 けど様子がおかしい。ヨナは、何かに抗うみたいに、叫ぶような声を上げている。


 原因は明らかだ。大人を気絶させかねないほどの強さを持つ、この臭い。


 体の小さなヨナが吸ったら、どうなる?



――――



 アカナの家まで全力で駆けた。息が上がりそうになって、大きく呼吸をしながら店舗に踏み込んだ。

 同時に、なにか強い香りが鼻をくすぐる。意識が遠のきかけて、なんとか踏みとどまった。


「ゾーラ! どこ!? 無事!?」


 呼びかけながら店の奥に行く。建物内に充満している香りのせいで、今にも眠ってしまいそうだ。目がかすむ。前がよく見えない。

 早く終わらせないと。


 見つけた。アカナがゾーラを蹴っている。なにかひどい言葉を浴びせながら。僕は言い返したと思うけど、無意識に出た言葉。自分でもなんと言ったのかわからないし、考える暇もなかった。


 駆け出してテーブルの上に飛び乗って、そのままアカナの横っ面に蹴りを食らわせる。テーブルに乗っていた何かが音を立てて落ちたけど、そちらを見る暇はない。

 彼女は壁際の棚に倒れかかり、棚の上の物がゴトゴトと音を立てて落ちた。


 アカナは僕を見ながら、テーブルの方を指差してなにか叫んでいる。よく聞こえない。とにかくこいつを黙らせないと。殺さないと!


 こいつがソフィを殺したんだ。絶対に許さない!


 さっき棚から落ちた、重くて持ちやすいものを掴んで、アカナの頭に振り下ろす。



――――



「ヨナくん! そこ! そこに聖剣が! それを持って! それで! 殺して!」


 ヨナに蹴られて倒れたアカナが、床に散らばった木の棒を指さす。けれどヨナには見えていないようだった。

 というか、意識が朦朧としていて、ろくに前が見えていない。今にも眠りそうなのを、必死で耐えている。


 だから彼は座り込んでいるアカナに合わせてしゃがみ、手元にあった金属製の像を拾って武器にした。


 棚に飾っていた、ジェイザックゆかりの人物の像だ。いずれ町のあちこちに彼らの銅像が建てられるという。その試作品のうち、ヨナは太った男の像を手にした。


 スクリュード。ジェイザックが倒したという、意地悪な小役人。彼の伝説の始まりのあたりに出てくる敵。美しい美少年に憎まれる悪人。他の像と比べて極端に醜男に造形されいる男。

 アカナも嫌いなキャラクター。


 ヨナはそれでアカナの頭部を殴った。

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xから来ました 連載頑張ってください
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